自殺した若者の遺書

PURIN

内容

 俺の親友の○○が自殺したことは皆さん知っていると思います。

 俺が死ぬ理由は、○○に関係があります。

 ですが、絶対に誤解しないでください。

 ○○に原因があるわけではありません。

 すべて俺が悪いんです。

 ○○を絶対に責めないでください。

 そして、俺を絶対に許さないでください。


 ○○はひと月ほど前に自殺しました。突然のことでした。

 何の前触れもなく、俺は一番大切な人を失いました。

 親友の俺にもあいつが自殺する心当たりは全くありませんでした。

 

 どうして俺に何も相談してくれなかったんだろう。

 どうして何も気付けなかったんだろう。

 考える日々が続きました。

 

 「もしも誰かのせいなら、そいつを絶対に許さない。殺してやる」とまで思いました。


 ある日、○○の家族が尋ねてきました。

 ○○の机から俺に当てた手紙が見つかったそうです。

 震える手で封筒を開けて、手紙を読みました。


「今まで、本当にごめん」

 そんな一文から始まっていました。


 次に「俺たち、小さい頃からずっと一緒だったよね」と、今までの楽しかった色々な思い出が書き連ねてありました。脳内にそれぞれの光景がよみがえって、泣きそうになりながら読みました。


 思い出話の後、こう続きました。

「俺、いつの間にか、お前のことが好きになってたんだよ。

 親友としてだけじゃない。

 恋をしていたんだよ。お前に。


 大好きで、でもずっと一歩が踏み出せなくて、ずっと『親友』でしかいられなかった。

 本当はお前と… ごめん。気持ち悪いよな。


 この前一緒に買い物に行ったよな?

 色々買って帰る途中で、2人の男の人が、手をつないで歩いてるの見て、お前が言ったんだ。


『見ろよアレ! ホモじゃね? キッモー!』


 鈍器で思いっきり殴られた気がした。

 お前は、本当に気色悪い物を見た表情をしていた。


 あの時は直接それに答えずにはぐらかした。

 お前は俺のことをバカにしたわけじゃないんだから、ただちょっとよく分かってないだけなんだから、気にすることはない。

 そう思って、忘れようとした。


 なのに、忘れられなかった。

 時間がたてばたつほどかえって何度もあの時の言葉を想起してしまった。最近では、四六時中脳内をぐるぐる駆け巡っている。

 俺は、大好きなお前に気持ち悪がられる存在なんだと思うだけで、もう息をするのも苦しい。


 お前は同性愛者が嫌いだったんだな。

 ずっと一緒にいたのに、気付かなくてごめん。

 お前を好きになる資格なんてなかったのにごめん。

 こんな俺が今まで一緒にいてごめん。

 この手紙で俺が同性愛者だったって知ったら気持ち悪がるかもな。ごめん。

 でも許してくれ。いなくなるから。


 ただ、厚かましいけど一つだけお願いだ。

 もう誰にも、ああいうことは言わないでくれ」


 手紙はそこで終わっていました。




 ○○の死は俺のせいでした。

 「絶対に許さない。殺してやる」俺がそう思った人物は、俺自身でした。


 気持ち悪い人をバカにするくらい、しかもたった一度くらい、別にいいと思っていました。

 親友も同意してくれるとさえ思っていました。

 どうしてそんなにバカだったのでしょうか。

 知らない人を蔑んだ言葉は、一番大切な人を殺しました。

 俺が親友を殺しました。


 俺は生きていてはいけません。

 地獄に堕ちなければなりません。

 親友よりもずっと苦しい方法で死にます。

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