ちゃんと言っておかなきゃ(by深星夜空)




「千雪、今日はなんか機嫌よさそうだね。」

「ん~?そうかなぁ?」

「うん。なんか、心ここにあらずって言うか、テンション高い気がするよ?」


あー、確かに恵果ちゃんの言うとおり、今テンション高いかも……


「あ、もしかして、朝深星くんと手を繋いでたのと何か関係が?」

「まあね~。」


朝、夜空君が自分から手を繋いでくれたんだよね~~。

それがもう嬉しくて嬉しくて!!


「えへへ……」

「ち、千雪が壊れた……」

「本当だ……叩いたらなおりますかね?」

「いや、もう末期だから叩いても治らないと思……って深星くん!!?いつの間に!!!?」

「『千雪、今日はなんか機嫌よさそうだね。』のあたりからです。」

「夜空君だぁ!!!」


わたしは、思わず夜空君に飛びついて……はっと気が付く。

ここが教室の中だったことに。

みんながこっちを向いてフリーズしているこの現状。

……やばい、すっごく恥ずかしい。


「あ、そうだ皆さん。文化祭の日の夜に僕が千雪に告白して、付き合うことになりました。」

「ちょ!!夜空君!!?」


何でこのみんなが聞いてる時に言うの!!?

みんなに聞こえてるよ!!?


「で、みなさんに広めてほしいことがあります。千雪との付き合い方は特に変えたりしなくて結構です。男の人と話しただけで嫉妬したりはしませんから。ああでも、千雪を傷つけるようなことはしないでくださいね?まあ、居ないとは思いますが、もしそんな人が居たら……」


――消しますよ?


にこやかな笑顔で言い放ったその言葉は、高校生とは思えないほどの重みを持っていて、その場を凍り付かせた。


「じゃあ、そういうことで。ちゃんと広めておいてくださいね?」


場を和ませるような声でそう言う夜空君のおかげで、緊張感が一気に消え失せて、所々からこそこそと話し声が聞こえるようになる。


「ちょっと、夜空君?なんであんなことを……」

「だってさ、学校で有名人の僕たちが付き合うってなったんだから、ちゃんと言っておかなきゃ。」

「いや、そこじゃなくて、そのあとの脅迫まがいの方……」

「だって、千雪を傷つけられたくないし、なんか変なことを考える輩が出てくるかもでしょ?手は打っておかないと。」


別にそこまで気にすることじゃないと思うけど、夜空君がわたしのことを想ってやってくれてるんだから、いっか。


「そういえば、何で夜空君はここに?」

「ん?千雪と昼食をとるためだよ?」

「あ、じゃあ、私はお邪魔かな?」


恵果ちゃんがそう言って、すっと消えようとする。


「いやいや、千雪の友達を邪険にはできませんし。一緒に食べます?誰かから席を貸してもら奪いとって。」

「お邪魔じゃないならご一緒させてもらおうかな?今日は春香部活のせいでいないし。」


よかったぁ……

みんなに見られながら二人っきりで食べるのはさすがに……ねぇ?





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