夜空君、意味深発言はやめて!



「え?無駄?」

「うん。千雪たちが何をしたいのかっていうのは最近気が付いたんだけどね。ただ、一つだけ言っておくと、『僕は君たちが思っているよりも単純で強いよ?』って感じかな?まあ、君たちの作戦は成功なんじゃない?結果的には。」


そこまで言うと、夜空君は意味深な笑みを浮かべて、後ろを歩くわたしを見る。

え?どゆこと?


「夜空君、それって……」

「さあ?何だろうね。」


わたしがもっと詳しく聞こうと口を開くと、言い切る前にはぐらかされてしまった。


……どゆこと?


そう思っても、夜空君はこれ以上話す気がないみたいだし……


そういえば、夜空君、なんかちょっと……変わった?

なんかいつもと雰囲気違うし。

でも、嫌な感じではないし、むしろこういう夜空君も……


「そういえば……」


そんなことを考えていたら、急に夜空君が話しかけてきた。


「千雪って、どうしたら恥ずかしいって気持ちが芽生えるの?」

「え?」

「いや、ふと気になって。」


え?ちょっと質問の意図が……


「ど、どうだろうね。」


夜空君からギュッとしてきたらとても恥ずかしいし嬉しいんだけど……

そんなこと言えないしね。だったらなんでわたしから抱き着いてくるのかって話になりそうだし。

だから、とぼけてみたんだけど……いまの夜空君の好奇心に満ちた目を見ると、選択肢をミスした気がする……


「えー、教えてくれない?」

「うん。だめ。」

「ライトノベルの参考にしたいって言っても?」

「だめ!」


なんか、今日の夜空君に教えてしまったらわたしの羞恥心が危ない気がする!


「ほんとのほんとにだめ?」

「ほんとのほんとにだめ!」

「何が何でも?」

「何が何でも!というか、なんでそんなに聞きたいの?」

「いや、どこまでセーフ・・・・・・・なのか・・・見極めようかと・・・・・・・思ってね。」

「?」


セーフ?

何の話?何がセーフなのか見極めるの?

そして、それがどうしてわたしに関係あるのだろう……

わからないよ……


「夜空君、何の話?というか、今日の夜空君ちょっと違う気がするよ?いや、今日っていうか引きこもってからおかしいとおもうんだけど……」

「そう?あ、もう着いたみたいだよ。」


夜空君に言われて前を見ると、確かにもう正門の前に居た。

そのまま下駄箱のほうに向かって歩いていると、いつものように視線を感じる。

けど、夜空君といるとこれくらいはよくあるから、もう気にならない。


「あ、そういえば……」


夜空君はそう呟くと、少しかがんでわたしの耳に口元を近づける。


「な、なに?」

「今日の『僕』が君たちの望んだ『僕』だとしたら、どうする?」

「へ?ちょ、それって……」


わたしがその言葉の真意について尋ねようとしたときにはもう、夜空君は自分のクラスの下駄箱のところにいた。


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