先輩、嫌だった?
――チュンチュン
僕は名前の分からない鳥の鳴き声と、近くに感じた気配で目が覚めた。
……前にもこんなことがあったな。割と最近。
僕はこれからの展開をうっすらと予想しながら目をあける。
しかし、目の前にあるかと思っていた先輩の顔はなく、代わりに寝息が聞こえる。
と、そこで僕は今自分がソファーの上で寝ていることに気が付いた。
ゆっくりと上体を起こして、寝息の聞こえる方向を見ると、先輩がすうすうと向かいのソファーに横になりながら寝ていた。
僕はゆっくりとソファーから立ち上がり、先輩のところまで歩く。
先輩はすうすうと気持ちのよさそうな寝息をたてている。
その肩が呼吸のたびに上下する。
うん。やっぱりかわいいな。
でも、何故かあの時の天輝さんの言葉を思い出す。
『その好きは、likeか?loveか?』
『お前は、なんでいつまでも閉じこもってんだよ。』
わからない。
わからないことすらわからない。
ただ、先輩ともっと一緒にいたいと思う。
それだけじゃあ、ダメなのかな?
「んん……夜空、くん?」
うっすらと目をあけた先輩は、眠そうにそう言う。
「……おはよ……」
「うん。おはよう。」
僕はそう言うと、何となく咲にしていたように頭を撫でる。
「んん………はっ!!よ、夜空君!?」
始めは気持ちよさそうにしていたが、急に変な声を出したかと思うと、急に慌てだす。
「? どうかした?」
「にゃ、にゃんで頭撫でてるの!?!?」
「あ、ごめん。嫌だった?」
「そ、そういうわけじゃないんだけどね!き、気になっただけというか……」
何故か顔を真っ赤にして慌てた様子の先輩。かわいい。
「何となくだよ。何となく。昔は咲をよく撫でてたから。撫でたくなっただけ。」
「そ、それならいいんだけどね。起きたら撫でられてたから、ちょっとびっくりしただけというか………あ、べ、別に嫌だったってわけじゃないからね。むしろ気持ちいいというか………」
……いや、何でそんなに慌ててるの?
こっちが何かしちゃったみたいになるじゃん。
え?何か僕先輩を狂わせるようなことしちゃった?
「と、とにかく!!嫌だったわけじゃないからねっ!」
「は、はぁ……」
「うん。というわけでもっと撫でていいんだよ?」
……それは遠回しに撫でろと言っているのかな?
僕は先輩の頭に手を乗せて、優しく撫でる。
「んん……♡」
なんか先輩が変な声出してる!?
これ以上は健全な高校生活を送れなくなりそうだからやめておこうかな。
そう考え、僕は撫でるのをやめるけど……
「もっと、ダメ?」
「…………」
上目遣いでそう言われると、撫でないわけにはいかないという気がする。
なんか小動物を撫でてる気がしてくる。もしくは猫。
そのまましばらく撫でていると、僕の第六感が何者かの気配を察知した。
僕が慌てて手を離すと、その瞬間に会長がリビングに入ってきた。
あ、危ない。
「秋川さん、深星くんおはよう。」
「おはようございます。」
僕は何事もなかったかのようにそう会長に挨拶を返すが、先輩の声が聞こえない。
何で挨拶を返さないのかと思い先輩を見ると、何故か顔を赤くし、ぼんやりとしていた。
「……千雪?」
「ふゃい!?」
先輩、色々な意味で大丈夫?
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