先輩、あれは何だったんですか?
先輩の意図がわからなくても、突っ込んできたときの状況なら話せるので、それを説明することにする。
「ただ僕が帰ろうかと教室を出て廊下を歩いていたら……」
「いたら?」
「急に先輩が横から突っ込んできて、『ちょっと話があるから来て!お願い!』というので、逃げようとしたら突っ込んできたダメージのせいで素早く動けず、結局先輩についていくことになり……」
「どうなったの?」
「屋上に連れていかれ、『友達になってください』と言われました。」
「それで?」
「めんどくさそうだったので断ったら、先輩と友達になるメリットを小一時間語られました。」
「で?」
「今までも『友達になって』とかは結構言われていましたけど、こういうアプローチは初めてだったので、友達とは何を以て友達なのかと先輩に尋ねました。そしたらなかなか面白そうな持論を出してきたので、そのことについて討論してたら『あ、この先輩面白い』と思いまして、そこから仲良くなりましたね。」
「なんかすごく奇妙な出会いだね。」
「でしょう?結局突っ込んできた理由は謎なんです。」
今思い出しても本当に不思議だ……
「なるほど……その話にはなんてコメントしたらいいんだい?甘くもないし、かといってシリアスでもない……」
「事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものです。」
「確かに。普通美少女が飛び込んでは来ないもんね。」
「下手なホラーよりも怖いですよ。意味わかんないですし。」
うん。今思い出しても謎だ。
「うーん。でも、突っ込んできたってことは前にも会ってるんじゃない?」
「通学中に見たことはありましたけど、接触はないです。僕の記憶力が言うので間違いはありません。」
「夜空君のその記憶力に対する自信は何なの?」
「自分を信じられずに何を信じられますか?」
「ごもっともです。」
また会話が途切れる。
「じゃあ、夜空君は今、どう思ってる?」
「千雪先輩ですか?」
「うん。」
「それ先輩と咲にも聞かれました。嫌いではないし、好きなんだと思いますよ。かわいいですし。」
「ああ、でもそれは恋愛的な意味じゃないんだね?」
「まぁ……よくわからないといったところが正解ですけど、少なくとも僕が仲良くしたいなと思うのは咲と大翔さんと先輩しかいないので。」
「あ、すみれは違うんだ。」
「あの人は正直あまり僕とは合いませんので。嫌いではないですけど。」
「天輝さんは?」
「あの人はむしろうざいくらいに近づいてきますね。まあ、悪い人ではないので嫌いではないですが、仲良くしたいかと言われるとちょっと………」
「ああ、分かる気がするよ。」
そう言うと大翔さんは少し同情するように笑った。
「そっか。僕も夜空君の中ではそんな近い存在になれてたんだね。」
「まあ、付き合いも長いですしね。」
「昔は敬語じゃなかったけどね。」
「嫌ですか?」
「全然。夜空君がその方が話しやすそうだから問題ないよ。それより、僕はもうのぼせてきたから上がるね。夜空君は?」
「もう少し入ってますよ。」
「そっか。のぼせないようにね。」
「わかってますよ。」
僕がそう返すと、大翔さんは少し笑って湯船から上がっていった。
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