先輩、知ってましたよね?




皆が夕飯の買い出しに行ってる中、僕は咲と二人で留守番中だ。


「お兄ちゃん。ちょっと話があるんだけど。」

「何?」


コーヒーを飲みながら曲を考えていた僕は、顔を上げて咲を見る。


「お兄ちゃんは、千雪さんをどう思ってるの?」

「あ、なんかそれ先輩にも聞かれた。嫌いではないし、好きなんだと思うよ。かわいいし。」

「そう言うことじゃなくて、恋愛感情は持てた?」

「ん?何それ。」

「いや。何でもないよ。」


何だったんだろう。

何か大事な話があるみたいだったけど、これだったのかなぁ?

まあ、考えても分かんないしいいか。


と、そこで玄関が開けられる音がする。


「あ、帰ってきた。」

「ほんとだ。」


すると、リビングのドアが開いて元気そうな先輩と、大量の荷物で死にかけている大翔さん、それを気遣う会長という愉快な仲間たちがいた。


「夜空くーん!色々買ってきたよ!」

「だよね。頼んだ量より多いもん。」

「えへへ。色々買っちゃったんだ!あ、夜空君花火する?」

「いや。しないよ。」

「えー。なんで?」

「……火が苦手だからかな。家のコンロも電気のやつだし。」

「そうなんだ。じゃあ仕方ないね。」


すいません。先輩。少しだけ嘘をつきました。

僕は火が苦手どころではなく怖いんです。

また何かを失いそうで。


そんなことを言ってもどうしようもないから言わないけど。


「じゃあ、トランプならできるよね!」


そう言うと先輩はさっとトランプを取り出した。


「まあ、それならいいですけど、夕飯の後にしようね。」

「了解!」


じゃあ、食材もあるから作ろうかな。











「はい。あがりです。」


僕は最後にダイヤの5を出して手札を全部なくす。


「夜空君……トランプ強すぎ……」

「そりゃあお兄ちゃんですからね。あ、私もあがりです。」


そう言って、咲も手札を出し切る。

トランプが大富豪になってからというもの、この順番で大富豪と富豪が固定されている。

そして、意外とトランプが弱かったのは……


「ああ!負けた!」


会長だった。


「まあまあすみれ。夜空君たちが異常なくらい強いだけだから。僕もさっきから貧民だしね。」

「じゃあ、夜空君が強すぎて勝てないから、何か別のやつにしよー。あ、神経衰弱なんかどう?」


神経衰弱か。

正直全部暗記できる僕としては負ける気がしない。


そして結果は想像通り……


「これと……これですね。」

「えっ!?夜空君なんでわかるの!?」


「じゃあ私の番ですね。これと……これです。」

「咲ちゃんも!?」


そんな感じで進んでいき、結果は……


「数えるまでもなく夜空君が一位だね。」

「夜空君強すぎ……神経衰弱がいいって言ったわたしがバカだった……」


枚数的には大体僕が半分、咲が四分の一をとって、残りを三人で分けた感じかな?


「そもそも、僕の記憶力が良いってみんな知ってましたよね?」

「「「忘れてた。」」」

「私はこうなることはわかってたけど、面白そうだったから言いませんでしたが、ダメでしたか?」

「「「駄目だから!!」」」


皆仲いいなぁ。



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