先輩、待っててね?




「じゃあ、ルールの確認をします。アタックしたりとかわざと遠くに飛ばしたりしたら相手の得点で、落としても相手の得点です。先に十点取ったほうの勝利ということでいいですね?」


咲の言葉に、みんなうなずく。

ちなみに、ビーチバレー(仮)のチームは公正なくじ引きの下、大翔さん&会長、先輩&僕になった。


「じゃあ、サーブは大翔さんのほうからね。」


そう言いながら、咲は大翔さんのほうにボールを投げる。


「頑張ろうね!夜空君!」

「そうだね。負けたくないし。」


頑張ろうね!と言う先輩が可愛かったので、少しやる気が出た。

よし、やるか。


「千雪は、とにかく上にあげて。」

「おーけー。何か作戦があるんだね。」


僕たちの作戦会議が終わった瞬間、大翔さんがふわりとしたサーブを打ってくる。


「はい!夜空君!」

「わかってますよ。ほい。」


僕はそう言いながら、大翔さんと会長のちょうど真ん中あたりに落とす。

すると、お互いに行こうとして譲り合うあの現象が起きて、そのままボールは床に落ちる。


「はい、お兄ちゃんと千雪さんのチームに一点。」

「ごめんね、すみれ。僕が行けば……」

「いや。あれは私も悪いから。それより、イラっと来たから本気で行こうね。」

「うん。」


あ、やばい。二人に火をつけてしまった。


そんなことを思いながら、僕はサーブを打った。






「もう大翔君のところ以外お嫁にいけない……」


今、僕の目の前では二人の人間が顔を真っ赤にして蹲っている。

そして、僕の手に握られているのはスマートフォン


「夜空君。罰ゲームの内容が酷いよ……」


大翔さんが何かを呟いている。

まあ、仕方ないだろう。今このスマートフォンの中には、二人がキスしているときの画像が入っているから。


「いやぁ、僕は良い罰ゲームを思いついたものですよね。砂に顔以外を埋めるのも面白いですけど、手間がかかって大変です。それに対し、キスシーンを撮影するって罰ゲームなら、手軽ですよね。ま、二人は恋人同士なので問題はないでしょう?」

「あるよ!!深星は酷いな!!」

「すみれの言うとおりだよ。こっちの精神力を奪う天才が!」

「そんなに褒めても新曲くらいしか出ませんよ?」

「「新曲は出るんだ!いや、それ以前に褒めてない!!」」


おお、カップルで見事なハモリ。


「いやあ、仲がいいですね。って、千雪?なんで僕の頭撫でてるの?」

「褒めたら新曲出ないかなーって。」

「いずれ出すから待っててね?」

「むー。早く!」

「はいはい。わかったから抱き着くのやめて。」


僕がそう言うと、何故か名残惜しそうに先輩は離れていった。




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