第二章 夜半 変化
先輩、痛い!!
何か冷たいものが額に乗せられている感覚で目を覚ました。
ゆっくりと目をあけていくと、飛び込んでくるのは少し心配そうな大翔さんの顔。
「………ここは?別荘?」
「そうだよ。夜空君やっと起きたんだね。」
「……今何時ですか?」
「午前の十時半かな。それより夜空君大丈夫?僕の目の前で倒れたもんだから心配したよ。一人で運ぶの苦労したんだからね。」
「心配かけてすいません。他の人は?」
「まだ夜空君を探してるよ。夜空君が倒れたってことまだ誰にも言ってないからね。どうする?」
僕は寝起きの頭でその言葉の意味を必死に理解しようとする。
「……じゃあ、このことは他の人には秘密にしておいてください。倒れたなんてことがわかったら先輩は変に遠慮して海で遊ぶのやめるとか言い出しそうなので。」
「了解。まあ、かわいい従弟(いとこ)のためだからね。それぐらいはお安い御用だよ。」
「ありがとうございます。」
僕はベットから出ると、体を一通りほぐす。
ああ……バキバキいってる……
「じゃあ、僕を探してる人を呼び戻してくれませんか?『今帰ってきた』とか適当なこと言って。」
「おーけー。………よし。送信完了。ミッションコンプリートだよ。」
「色々ありがとうございます。じゃあ僕はこれから海に行くとか言いそうな先輩の為にタオルとか準備してますんで何かあったら呼んでください。」
「え?もう大丈夫なのかい?」
「はい。この通りですよ。」
僕はそう言うと、その場でバク転を一回して見せる。
「おお。さすが夜空君。そんなこともできるんだ。」
「まあ、これくらいは。じゃあ、そう言うことなので準備してきますね。」
僕はそう言うと扉を開けて一階に降りる。
僕が人数分のタオルを準備していると急に部屋の扉が開いた。
そして、何かが突っ込んでくる。
「夜空くーん!!どこ行ってたの!?」
「ぐふぇ!」
僕は衝撃のあまり変な声を出す。
い、痛い。
「ただ散歩してただけです……だよ……」
やっぱり敬語のほうが楽だな。
「嘘!だって夜空君が何も言わずに出かけるなんてありえないよ!」
「僕だって自由に出歩きたいときがあるから。それより、敬語じゃダメ?」
「だめ。」
ええ……敬語のほうが楽なのに……
「はぁ……ダメか。」
「ため息つくほどタメ口が嫌なの!?」
「嫌じゃなくて言葉を考えながら喋らなきゃいけないのがめんどくさい。」
「それは慣れて。」
慣れるとか無理な気しかしない……
「まあ、その話題はいいとして、海で泳ぎますか?」
「うーん。どうしよっかな。夜空君が心配だから行かない。」
「何が心配なんですか?」
「だって、急にいなくなっちゃうなんて夜空君らしくないもん。何かあったのかもしれないって思うから心配なの!」
「だから散歩してただけだってば……」
嘘はついていない。
ただ、倒れたという事実を言っていないだけで。
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