夜空君、どういうこと?
「逃げてなんかないよ。傷つかないように、好きに入る人を守れるようにしてるだけだよ。」
「それが『逃げ』なんだよ。そんなんだから咲があんな使えねえ足になっちまったんだよ。」
夜空君が天輝さんの胸ぐらをつかんだ。
ちょ!何してるの!?
「咲が使えない?取り消せ。」
「はん。相変わらずだな。だが事実だろ?んで、
………え?
どういうこと?
足を動かなくしたのが夜空君?
「だってそうだろ?お前がもっと速くしてれば、こんなことにはならなかったんだからな。」
「お前は、僕じゃないだろ?じゃあ、僕のことを分かったようにしゃべるなよ。速く?はっ。出来るだけ急いだよ。動かなくしたのは僕?違うよ。『あの日』のこと、お前は何も知らないだろ?」
「ああ、でもお前があの日から逃げ惑う負け犬に成り下がってんのは知ってるぜ。」
負け犬?
それは違う!!
夜空君は負け犬なんかじゃないよ!!
「だからどうした。それで好きに入るものが守れるのならそれでもいいさ。」
「ちげえよ。お前はお前の手で好きなものを傷つけないようにただ壁を作ってるだけなんだよ!」
「違う。その壁は守るためのものだ。」
「はん。勝手に言っとけ。チキン野郎が。」
「もういい。海見てくる。」
「逃げるのか?」
「なんとでも言ったらいいよ。話しても時間の無駄だしね。」
「そうかよ。」
夜空君はテラスから続く階段を降りて、砂浜に降りる。
わたしは、意を決して天輝さんに話しかけた。
「天輝さん。」
「やっぱり聞いてたんだね。」
ああ、隠れてたことがばれてたか。
「それよりも、話したいことがあります。『あの日』って何ですか?」
わたしの言葉に、天輝さんは頭を掻く。
「あのな、人には話せねえ過去があるってもんだ。俺も、夜空(あいつ)の過去はよくわからねえ。言ったのもほとんどあてずっぽうだ。」
「じゃあ、何であんなことを?」
「………あいつを変えてやるためだよ。」
「変える?」
わたしは思わず聞き返してしまう。
「そうだ。あいつは『あの日』に何かあった。詳しくは知らん。で、俺が次に会ったときにはもう、今のあいつだった。昔のあいつは、もう少し……いや、もっと人間らしかった。」
「そう……なんですね。」
そっか。この人はわたしが知らない夜空君を知ってるんだ。
「だから、あいつを戻してやりたいのさ。」
「そうですか。じゃあ、わたしも協力しま………」
「お二人では無理だと思いますよ。」
そうわたしの言葉を遮って話してきたのは、車椅子に乗った夜空君の妹、咲ちゃんだった。
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