夜空君、一個聞いてもいい?



みんながご飯を食べているときに、いつの間にか夜空君がいなくなっていることに気が付いた。

わたしはこっそり抜け出すと、夜空君を探そうとテラスに出た。


すると、あっさり夜空君は見つかった。


「あれ?夜空君どうしたの?」


テラスでそれを見上げている夜空君にわたしは話しかける。


「先輩こそどうしたんですか?」


あ!!やっぱり!どさくさに紛れて敬語使ってる!!


「だめだよ。敬語も先輩呼びも禁止!昼はわざとスルーしたけど、二人の時はぜったいだよ。」

「……うん。で、どうしたの?」


夜空君は大人しく言い直したので良しとしよう。あれ?こうやって話されるとどっちが先輩かわからないよね!?


「夜空君が見えなかったから、涼むついでに探しに。で、夜空君は?」

「………少し星を見たくなったからでs……かな?」


あ、いま間違えて敬語使いそうになったでしょ!


「そっかぁ……うん。確かに綺麗だもんね。」


わたしは空を見上げやすいように、手すりに体重を預ける。

暫く沈黙が続く。


「夜空君。一個聞いてもいい?」

「うん。」

「夜空君って、わたしのことどう思ってるの?」


なんでだろう。ここで聞いておかなくちゃいけないと思った。

ここで聞けば、夜空君に近づける。そんな気がして。


「どう?とは?」

「色々あるじゃん。すきーとかきらいーとか迷惑だ―とか。」


わたしがそう言うと、夜空君は手を口元にもっていって考えるポーズをとる。


「まあ、嫌いではないですし、好きなんだと思うよ。かわいいと思うし。」

「うーん。そうなんだけど、そうじゃないっていうか……」


そうじゃないんだよ!!もっとこう………恋愛的な意味でというか………


「それ以上は無駄だ。」


慌てて振り返ると、そこには夜空君のいとこ、天輝さんがいた。



「夜空にはそれ以上の回答を望めないぞ。少なくとも今は、な。」

「そ、そうですか?ちなみになんでですか?」


自分がどういう返答を求めて言ったのかを見透かされた気がして、動揺してしまう。


「こいつには色々足りねえんだよ。」

「た、足りない?」


足りない?何が足りないんだろう?


「ああ、根本的に足りてねえんだ。」

「何が、ですか?」

「……もうわかってるんじゃねえのか?」


そう鋭い目で見られる。

思い出すのは、あの夜空君が時々する、虚ろな、全てが抜けてしまったような目。

なにかが抜けている。


「……わかってる。のかもしれないですね。でも、確信はないです。」

「ねえ、二人とも、何の話?」


夜空君がそう言ったことで、わたしは夜空君がここにいたことを思い出した。


「ああ、俺はお前と話そうと思ってきたんだった。悪いけど秋川さん。話はあとでな。先に戻っておいてくれ。」


これはお願いのふりをした命令だってことはいくらわたしでもわかる。


「わかりました。じゃあ、夜空君。先戻ってるね。」


わたしはそう言うと、大人しく帰る……ふりをする。

ばれないような物陰に隠れると、わたしは聞き耳をたてた。





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