先輩、今何ておっしゃいましたか?



「「いただきます。」」


僕と先輩は同時にそう言うと、カレーを食べ始める。

うん。カレー。

というか、いつもの素材でいつもの通りに作ったカレー。

ザ、フツーのカレー。


「おいしいですよ。流石先輩です。」

「そ、そうかな。ありがとう!夜空君が教えてくれたおかげで、料理するのが楽しかったよ!!」

「それは良かったです。楽しむのは一番ですからね。」


先輩は褒めて伸ばしたほうがいいタイプだと思う。結構心脆いし。

それに、味はフツーだけど、先輩の努力した結果だと思うと、凄いプレミアム感がある。


「そう言えば夜空君ってさ、あまり自分のこと話さないよね。」

「え?そうですかね?」

「うん。なんというか……聞かないと話さない?みたいな?」

「ああ、確かにそんなところありますね。ま、自分のことは自分ではよくわからないので、憶測ですけど。」

「確かにそうだね。わたしも自分でもわからないことばっかだもん。」


先輩はそう言って笑うと、カレーを一口食べて、「おいしいね!」と言った。

なんか最近、先輩が今までの倍楽しげに見える。

まあ、見えるだけで本当にそうなのかはわからないけど。


「はい!夜空君に質問です!ずばり!家族構成は?」

「ん?フツーですよ?父さん母さんに、妹と僕ですね。」

「え?妹いたんだ!」

「あれ?言ってませんでしたか?」


そう言えば、言ってなかったような気がする。

まあ、そんなに自分から言うような話でもないんだけどね。


「名前なんて言うの?」

「妹のですよね?さきです。深星咲。」

「え?咲?」

「そうですが?どうしたんですか?急に驚いた顔して?」

「いや……この前にうなされてた時、咲って呼んでた気がしたから。」

「ああ、声に出てましたか。ま、よくあるので気にしないでください。」

「う、うん。あ、じゃあ、好きな歌手は?」

「歌手ですか……小海こうみ涼多りょうたっていう人です。知ってますか?あの高校生シンガーの。」

「ああ、聴いたことあるかも!」

「それは良かったです。知らない人の話されてもつまんないでしょうしね。僕は彼の歌の中では特にデビュー曲の〈雪の香り〉と、一番新しいシングルの、〈嗄れそうな心の声〉ですかね。」

「あ!その曲聴いたことあるかも!ちょっと歌ってみて!!」

「いいですよ。確か……『雪の雫が落ちて それが音に変わる 君のかわいい声までも 僕の音になっていく――――………』って感じでしたよね?…先輩?何で固まってるんですか?」

「い、いや、やっぱりいい声だなぁって思って……」

「そ、そうですか?」


先輩、不意打ちで褒められるとドキッとしちゃうじゃないですか?狙ってるんですか?

…狙ってないんだろうなぁ……先輩のことだから。


「うん!すっごい綺麗だったよ!!まるで、『星空深夜』みたいで!!」

「……え?」


先輩、今、何ておっしゃいましたか?


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