私、ギルチョッパーに改名しました。


ガチャリ――


部屋のドアが開いた。

男の子が入ってきた。


さらさらの金髪。

5歳ぐらいの男の子。

この子がジミーなのね。


手には木の器が乗っている。

彼は私の方へ真っ直ぐに向かってきて、


「おまえの名は今日からギルチョッパーだ!」


と宣告した――


……。


――はい!?


「ピーピーピィィィ(私、女なんですけどー)!」


嫌よ。

ギルチョッパーなんて名前、私は嫌!

私はピッピよ。

マーチンに付けてもらった大切な名前なの。


しかし、私の懸命な抗議は伝わらず、ジミーはニヤリと笑った。


ジミーはカゴの扉を開けた。

そして木の器からスプーンを取り出す。


「ギルチョッパー、飯の時間だ! さあ、食え!」


差し出されたスプーンに、何か小さなものが乗っている。

うにょうにょうごめいるけれど……


「ピッピィィィ(幼虫をたべるの)――!?」


それは薄茶色の小さな幼虫。

白い縞々模様。

軟らかそう……


「さあギルチョッパー、食え――!!」


「ピキィィィ(ぴきぃぃぃ)――!!」 


目を瞑ってついばんだ。

こういうのって、勢いが大事だもの。

躊躇ちゅうちょしてはだめよ。

頑張って咀嚼そしゃくするの!


くちばしの中で幼虫はぷちんと弾ける。

初めての食感。


そして私はゴクンと飲み込んだ。


なにこれ美味しいんですけど。

マーチンがくれた木の実や穀物よりも美味しいんですけど。


「いいぞギルチョッパー! もっと食え――!!」


ジミーはとても喜んでいる。

勢いよくスプーンを差し出してきた。

今度は山盛りで。


私も楽しくなってきたわ。


「ピキィィィ――!!」


勢いよく啄み、雄叫びを上げてみた。

私、おすではないけれど。


「うおぉぉぉ、ギルチョッパーが帰ってきた!」


ジミーは目を見開き、私の顔をのぞき込んできた。

ギルチョッパーって、前に飼っていた鳥の名前だったの。


その後、ジミーは慌てた様子で部屋を出て行った。

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