第47話 力の自覚⑥
その後、レフティアはメイ・ファンス少将自らによって司令室へと導かれると、用意されていたソファにそのまま腰を掛けた。
その部屋にいるのはアイザックとレオを合わせた四人だけで、クライネは表で待機する事となった。
「で、あなた達はレオ君をどうしよっての?」
メイ・ファンス少将が人数分の茶を入れている最中、レフティアは大柄な態度でおもてなしに応じた。
「そうね、ハッキリ言ってしまえば彼を私たちの戦力として採用したい。という事かしらね、枢騎士団の思惑が定かではない以上は私たちも彼を簡単には手放せない。けど彼には枢騎士団と対峙する意思があるようだし、彼をここに閉じ込めておくのではなく枢騎士団に対する戦略的カードとして起用しようと、そう思ったのよ」
メイ・ファンス少将は席に着くと、各々の手前に淹れた茶を腕を伸ばしながら差し出していく。
そしてそのまま茶を受け取ったアイザックは口を開く。
「まぁあくまでもこのことに関してはレオの自由意志だ、現時点ではレオに戦略的価値はない。その気がないのなら事が済むまで保護させてもらうし終われば元々すぐ解放するつもりだった。だがこちらの認識ではレオの意思は我々と共闘する事を選んだとそう捉えているが、彼女と出会ってそのことに変化はあるのか?レオ」
アイザックは静かにレオへと視線を送る。
「あぁ、そうだな......。レフティアさん、正直俺はレフティアさん達が俺を助けに来てるなんて思っちゃいなかったんだ。でもこうして来てくれていたことに凄く感謝している、だけどレフティアさん。今俺はこっから離れる事なんて出来ない。俺のこの力の事と枢騎士団が俺を攫った狙い、それが分かるまでは戻るつもりはない」
レオはレフティアに顔を合わせながら視線を合わす、それを聞いたレフティアは気だるげそうに背伸びをすると足を組む。
「なるほどねぇー、肝心の当人がそういうスタンスなら私たちもここで強引に連れ帰っても意味はないものねぇー。はぁーそうねー、分かった!じゃあ私たちも貴方のやりたいことに協力させてもらうわ!」
レフティアのその言葉にこの部屋にいるレフティア以外の者たちは驚愕した。
「なっ、それは本気なのですかレフティアさん」
メイ・ファンス少将は思わず言葉を詰まらせる。
「えぇそうよ?そっちにとって願ってもない話なんじゃない?って言っても本音はせっかく遥々ここに来たってのに何もしないで帰るのは退屈だからなんだけど、てか帰ってもまた面倒事がありそうだしね。それにレオ君の力の事、すごく気になるし別にいいでしょう?」
「まぁ......。俺としては有難い話だが......」
レオは向かい側の席の方を伺う、するとアイザックとメイ・ファンス少将はお互いに顔を合わせると、何かに納得したかのように頷く。
「えぇ、それが穏便に済む方法だという事なのならこちらとしても幸栄の限りですよレフティアさん。ただしこちら側に就く以上は概ねの行動守秘義務を課す事になるけれど、よろしいかしらね?」
「えぇ、どうぞ。あと計画リークの話だけど、その事なら一応は可能よ。具体的な事は私の仲間がそれを実行できる、貴方たちの計画次第では共和国軍を介入させる隙を作ってあげる事も可能かもしれないわね。まぁ全ては貴方たちの計画とやらが上手く言った後の話だけど」
レフティアは満足気に意気揚々と話す。
「とりあえず詳しい話はまた後の機会にしましょうレフティアさん、貴方の協力のおかげで我々の計画がより確実なものとなりますでしょう。感謝致しますわ」
メイ・ファンス少将は深々と行儀の通った礼をする。
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メイ・ファンス少将等との話を終えたレオとレフティアは陽気に話し合いながら司令室から出ると、表で待っていたクライネと会う。
「その様子だと、話は穏便に済んだようですね......。良かったです」
クライネは安堵の表情でレオとレフティアを迎える。
「あぁ、何とかな。レフティアさんの理解あってのおかげだ、ここで改めて礼を言いますレフティアさん」
「もーやめてよそういうの、結局私の気まぐれ事なんだから感謝されるような覚えはないわよ。それよりさぁ......!」
突然レフティアはクライネとレオの手を取ると、それを自らの方へと優しく引きずりこんだ。
「二人はどこまでやったのよ?」
その質問にレオとクライネは一瞬思考が追い付かずに間が空くも、直ぐに戸惑いを隠せぬ様子でクライネはあたふたする。
「なっ!ななななっ!意味深な事を聞くのやめてください!!!」
クライネは思わずレフティアの手を振りほどくと、少し距離を置いた。
「わーお!冗談だって!そんなに警戒しなくてもいいのに、貴方って結構ピュアな子だったのね~、可愛くて無垢そうな子ってすごくちょっかい出したくなっちゃう......!」
レフティアは何やら不思議な手つきでクライネに近づこうとする。
「もう!本当にからかうのはやめてください!!!」
そういうとクライネはレオとレフティアのいるその場から勢いよく去って行った。
「あらら~、からかいがいのありそうな子ね~」
「はぁ、レフティアさん。そういうのは程々に頼みますよ、彼女も暇じゃないんですから」
レオは呆れ交じりにため息をつく、その様子にレフティアは軽くじゃれながら笑い過ごす。
「ふふ、それじゃあレオ君。そろそろ君の力とやらを拝ませに行かせてもらおうかなー?普段はどこでやってるのよ?」
「えーと、ここの一番深い所に幽閉施設がって、そこで」
「幽閉施設......、そんなものまでここにあるのね」
レオとレフティアは中央エレベーターへと続く廊下へと出た、そしてその廊下の要塞施設内部が垣間見える窓からはレオとクライネがいつしか見た光景がレフティアの目に映る。
(ディスパーダを閉じ込めておく幽閉施設なんて並みのそこらの組織じゃ到底用意のできない代物......、それに、あれは......巡航ミサイル、AE高射砲?一体何門あるのかしら、本軍に見つからずにこれだけの兵装を格納しているなんて只者の組織じゃないわねここ。首都一個丸々滅ぼせるほどの火力、本気で枢騎士団を相手取るその気迫が良くわかるわね)
レオとレフティアは中央エレベーターに乗ると、幽閉施設へ向かう中央エレベーターは真っすぐ深層へと動き出した。
エレベーターは幽閉施設へと着き、レオとレフティアは降りると巨大な門へと差し掛かる。
「この先が幽閉施設、そして俺が越えなくてはならない二人のレイシスが俺を待ち受けている」
レオはレフティアにそう言うと、徐々に開かれていく巨大な門の前で整然と立ち尽くす、それを後ろから眺めるレフティアはどこか期待に胸を弾ませながらレオの背中を見ていた。
門が完全に開かれレオとレフティアは冷たい空気の中へと入っていく。
二人の人影がレフティアの瞳に映り込む。そして同時にレオとは別の存在の気配に、二人のレイシスは凄まじい警戒心でレフティアを捉えていた。
「そちらの可憐な女性はどなたかなレオ殿?」
ベルゴリオは瞬時に顕現させたソレイスを片手にレフティアを注視し続けるが、レイシスの少女ダグネスの方は特に警戒する様子もなく席に着いている、だがしっかりと右手で腰のソレイスに軽く手を掛けている事は分かる。
「まぁ待て、警戒するのは分かるがこの人は協力者だ。敵じゃない」
レオはベルゴリオに説得を試みるも一向に警戒を解く気配はない。
「先ほどから妙に空間のヘラクロリアムがざわつくと思えば、貴様がその原因か。それにこのトゥルヘラクロリアムの気配、間違いようがない。我らと対を為す存在イニシエーター、それも只のイニシエーターではあるまいな。相当の手練れと見る、何用でここに参ったのかイニシエーターよ」
ベルゴリオが武器を構えるも、その様子をレフティアはソレイスを顕現させる事もなく無防備ともいえる状態で只々不気味な笑顔で見ているだけだった。
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