とある事故で全身が真っ赤になるほどの出血をしたことがあるが、その時は死なんてものは意識出来ず、ただただ出血量に驚いて泣き喚いていた。その傷は残っていないので、どこから出血したのか今では思い出せない。

 数年後、これは事故ではなく未遂で済んだのだが、自転車に乗っていて車に轢かれかけた。どちら側の信号無視だったのか覚えていないが、ほんの一呼吸、私か自動車の判断が遅れていたならば……骨折ですめばいいのだが。

 今では自転車に乗ることも無く、怪我をするほど無茶な遊びもやらないため、というわけでもないだろうが、死について実感することも少なくなってきた。ただ漠然と数十年後か、或いは明日か分からないが、とにかくいつかは死ぬのだろうなというぐらいである。現実では。

 夢の中では結構な頻度で死を、それも激しく実感させられている。主に夢の中で私は、高く足場の悪いところに居て、何とかしがみついて生きているのである。気力が萎え、いっそ手を放した方が楽かもしれない、と思うとそこでやっと目が覚めるのだが、布団の中で私の心臓は痛いほど高鳴っている。メメント・モリ。いつか自分が死ぬことを忘れるなという無意識下からのメッセージかもしれない。

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