夜風

 私の自宅からちょっと歩いたところに温泉があり、今日はそこに足を運んだ次第である。このちょっと歩くというところがミソである。これが家の隣だったなら私は見向きもしなかったに違いない。火照った体を冷たい夜風にあてるのはとても気分がよく、温泉など前座でこっちが本命だと言っても過言ではない。お酒を飲んだ時も外を歩きたくなるのだが、風呂に入り直すのも面倒なので窓を開けるぐらいに留めている。

 何というか、普段曖昧になっている自分の境目が温度によってくっきりと分かれるのが面白いのだ。部屋に帰ってしまうと部屋の温度と私の温度は混ざり合ってしまい、いつもの輪郭のぼけた状態に戻ってしまう。

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