第69話世界の侵食



「フェルト、起きて、お風呂はいらないの?」


 僕はアクアの声で起こされる。


「ん、」


 僕は目を開いた後、すぐに驚く。なぜなら、アクアの顔が僕のすぐ目の前にあって、風呂上がりなのか、いつものアクアより色気が見えた。

 そして、すぐに目線をそらせようと下を見るが、下には下で、この宿にあった服のサイズがあまりあっていなかったのか、アクアの胸の谷間が少しだけ見えていた。・・・・まぁ、元のサイズが小さいだけあって、谷間も小さく見えるのかもしれないが。


 僕がそんなことを思いながら、アクアを見ていると。


「フェルトのえっち」


 アクアが顔を少し赤くして言う。僕は慌てて謝って風呂に駆け出す。


「フェルトのバカ」


 アクアはそう言うが、僕には聞こえなかった。



 僕は風呂に入って少しゆっくりしてから、服を着て寝室に戻る。


「ふぅ、さっぱりした」


 僕はベットの上に座っているアクアを見る。幸い、ベットは二つあったため一つのベットで寝ることはなかった。


「フェルト、少しお話しない?」


 アクアが風呂から上がって着た僕を確認すると、僕を誘ってくる。


「いいけど、何を話す?」

「なんでもいい」


 アクアはどうやら話せれば満足のようだ。


「じゃあ、僕の死んだ友達の話でもしようかな」

「それって、ネイとか言う人のこと?」

「なんで知ってるの?」

「フェルト、たまに寝言で言ってるから」


 僕は寝ているのでそんなことは知らなかったため、顔が赤くなる。


「その人のことについて詳しく聞かせて」


 アクアの顔が知りたいことに熱心になる小さな子供みたいな顔になる。


 僕はアクアにネイやハルトとの思い出、どう言う関係だったのかを話す。そして途中からアクアが眠たそうにした為、話を切り上げて寝ることにした。





『ドォーン!』


 僕となぜか僕の布団に入ってきていたアクアは大きな爆発音とともに目を覚ます。


「なんだ?!」


 僕は窓を開けて外を見る。外ではこの街の警備員らしき人たちと実力があるそうに見える人たちが黒い何かと戦っていた。


「あれは」


 僕には見覚えがあった。そう、スズがキラーズの実験の失敗作と言っていた異能力を吸収する生き物だった。


「フェルト、アクア、起きてるか?」


 エルが部屋の扉をノックしてから聞いてくる。


「起きてたら、早く着替えて、街の警備員に加勢してくれ。俺たちは先に行ってるから」


 エルがそう言ったあと、ドアが破壊された音が聞こえた。


「アクア、僕は風呂場で着替えるから」


 僕は着替えを持って風呂場に移動して着替える。


「アクア、開けていい?」

「もう少しだけ待って」


 数秒してから。


「もういいよ」


 僕は風呂場のドアを開けて、壁に立てかけていた刀をとる。

 アクアは髪にかんざしを通して、二人とも準備を整える。


「じゃあ、行こうか」


 僕はアクアの手を離さないようにギュッと握り、外に出る。

 この宿屋周辺の黒い何かはエルたちの手によってだいぶ数が減らされていた。


「フェルト、気をつけろ。こいつら異能力だったらなんでも吸収するようになってる」


 エルが僕に気づいてこちらに走ってきて僕に伝える。


「なんとかスズの異能力で武器を生成して、街警備員にも配ったけど、警備員は三人ぐらいで1った位を抑えるのが限界だ」


 エルは現状を報告してくる。


「フェルトには、こいつらを放った奴が近くにいるはずだから、そいつを見つけ出してきてくれ」

「そんな奴がいるのか?」

「この襲撃は連携が取れているから、誰かが仕組んだとしか思えなくてね」

「わかった、探して見る」


 僕は炎を使って空高く跳躍する。僕は一瞬で周りを見る。


「なんだあれ」


 僕は街を守るように作られた壁が破壊されていたところを見つける。僕はイフリートの力を使って動体視力を高めて壊れている壁の方を見る。


「あそこに空間の歪みがあるな。多分ヤミの異能力だろうな」


 僕は地面に降り立つ。


「アクア、一緒についてきてくれる?」


 僕はアクアに聞く。


「うん」


 アクアは嬉しそうに返事をする。僕はアクアの手を掴んで、空間の歪みが見えたところに向かって走る。



 空間の歪みの前。


 僕とアクアは空間の歪みから出てくる黒い何かから見つからないように、近くの物陰に隠れている。


「まずはあれをなんとかしないといけないね」


 僕は空間の歪みを睨む。


「覗き見とは、いささか無礼ですよ」


 僕とアクアはいきなりできた空間の歪みに吸い込まれる。





「ここは」


 僕とアクアは空間の歪みに吸い込まれ、気づいたら全然知らない場所にいた。

 周りは薄暗く、地面には赤いカーペットが引かれ、カーペットの先には王様が座るような金色の椅子があり、反対には扉がある。とにかくこの部屋は広かった。


「フェルト、久しぶりだな」


 声がした金色の椅子の方を向く、よく見ると、男が座っていた。いや、光から男が現れ、金色の椅子に座った。


「お前は、ルトバー。なんでお前がここにいる」


 僕とアクアは戦闘態勢に入る。


「なんでここにいるかって、ここが俺の城だからだよ。つまり、ここがキラーズの本拠地なんだよ」


 ルトバーは自慢するかのように言う。


「なんで僕とアクアだけここに連れてきたの?」


 僕はルトバーに質問する。


「いや、俺の家族だけは殺さずに見逃してやろうと思っただけだ。そっちの娘はお前と一緒についてきたおまけだ」


 また僕には意味のわからないことが話される。


「お前と僕は家族なのか?」

「あれ、知らなかったのか。まぁ、俺と暮らしてた時はお前はまだ小さかったしな」


 ルトバーは楽しそうに笑う。


「お前と僕が家族だと」


 僕はルトバーを睨む。


「睨むなよ、俺はお前の親じゃねえか」

「冗談でも笑えないぞ。お前は僕の親でもなんでもない、ただの悪魔だ」


 僕はルトバーに強く言い放つ。


「少し指導してやろう」


 ルトバーがそう言うと、明らかに周りの空気が変わった。


殺生異記憶キルメモリー火炎龍型かえんりゅうのかた


 ルトバーの足元から炎が吹き出る。


「行くぞフェルト、まぁ、最初に言っとくが。これぐらいで死ぬなよ」


 ルトバーが僕の視界から一瞬で消える。僕は無意識のうちに体を横にそらす。


『バシュッ』


 直後、僕の腕は吹き飛ばされる。


「今の一瞬で腕を斬り落としたのか?!」


 僕はすぐに吹き飛んだ腕を拾い、ちぎれたところにくっつけて、キュアを使う。


「斬ったんじゃなくて蹴り飛ばしたんだよ。それにしても、当たる直前で体をずらされるとは思わなかったな」


 ルトバーは嬉しそうに言う。


「よし、少し楽しませてくれたお礼に俺の目的を教えてやろう」


 ルトバーはそう言って、地面に座る。

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