第67話告白



「これ美味しい」


 アクアは湯麺を食べて笑顔で言う。

 アクアの腕はキュアで回復させて、掴まれた後も完全に消してある。


「そうだね、これ食べ終わったらどこ行きたい?」


 僕はアクアに聞く。


「フェルトの行きたいところならどこでもいい」


 アクアはまたしてもそう言う。


「おーい、フェルト君たち。そこで何してるの?」


 ジルの声が聞こえた方を振り返ると、ジルとハイドが大量の袋を持って並んで立っていた。


「ジルたちこそ、そんなに何買ったの?」


 僕がジルたちに聞くと、ジルが言いにくそうにする。


「ライの服とスイの服、エトの服、スズの服。それと、ジルの服。あと、料理器具に椅子とか、馬車が広くなるならこれぐらい置けるかなって」


 ハイドが色々と説明してくれる。だが、これを聞く限りではジルが言いにくそうにする理由がわからない。


「それぐらい、いいんじゃないか?」

「実は・・・・フェルト君とアクアちゃんの下着まで選んで来てるんだよね」


 僕とアクアは呆気にとられる。


「え、なんで、僕の下着のサイズ知ってるの?!」


 僕はハイドにたまらずに聞く。


「体型と戦い方を見ただけで大体の大きさはわかる」


 ジルは申し訳なさそうにする。


「じゃあ、そう言うことだから。履いてあげて。宿は馬車の近くのをとっておいたから馬車の方に戻ればエルが作業しているはずだから」


 ジルはそう言って、ハイドと一緒にどこかへ歩いて行ってしまう。


「怖かった」


 僕がそう呟くと、アクアも同意した。


「フェルト、見て回ろ」


 アクアが僕の服の裾を引っ張る。


「そうだね」


 僕とアクアは街を見て回った。

 街の中には射撃屋なんて言うのもあったりして、いろいろなところで遊んだ。


 そしてあたりが真っ暗になって、完全に夜になる。


「やっぱり高いところだと景色がいいね。それに夜風も冷たくて気持ちいいし」


 今僕とアクアは街にあった時計塔の一番高いところにいる。


「そうだね」


 僕はドキドキなる心臓を静めようと冷静になる。

 なぜなら、アクアの青髪が月の光を反射し、青髪が静かな光を放っているように見え、それに加え赤い目が光っているように見えて、小さい頃に読んだ神話に出てくる夜の女神みたいだったからだ。


「フェルト、よかったらこれあげる」


 アクアから袋を渡される。


「これは、服?」

「そう、フェルトに似合うと思って」


 アクアが顔を赤くして言う。


「その、受け取ってくれる?」

「もちろん。ありがとう」


 僕はアクアから渡された袋を受け取る。そのあとにポケットから箱を取り出し、箱を開けて、箱の中身を隠すようにして箱の中に入っていたものを取る。


「もし良かったら、僕と付き合ってください」


 僕はアクアに告白する。


「え、嘘? 本当に? 夢じゃない?」


 アクアは顔を真っ赤にしてあたふたとしている。


「もう一回言うね」


 僕は落ち着きを取り戻すために、一回深呼吸してから。


「好きです、僕の婚約者になってください」


 アクアの目から涙が溢れる。


「え、いやだった? やっぱり僕みたいな人間から告白されるのはいやだった?」


 僕がアクアにそう言うことを言っていると、アクアわ。


「違うの、嬉しくて涙が出てきちゃったの」


 アクアは涙をぬぐいながら言う。


「じゃあ、返事わ」


 数秒してから。


「こちらこそ、手のかかる女ですけれど、宜しくお願いします」


 アクアの涙は完全には止まっていなかったが、アクアは笑顔で返事をくれる。

 これまで見たアクアのどんな笑顔より可愛くて綺麗だった。


「じゃあ、アクア、左手を出してくれる?」


 僕がアクアに言うとアクアは不思議そうな顔をして僕に左手を差し出す。


「これは僕との誓いの指輪ね」


 僕はさっき異鉱石で作った指輪をアクアの左手の薬指にはめる。


「この指輪は異鉱石でできてるから、二人で願いを込めようよ」


 僕は自分の右手の中指に指輪をはめてアクアの左手にかぶせる。


「じゃあ、生まれ変わっても、また一緒に入られますように。がいいな」


 アクアは僕の右手を握る。


「もう、死んだ後の話かぁ」

「あ、ごめん。その・・・・・」


 アクアは黙ってしまう。


「別にいいよ、じゃあアクアの願いにしよっか」


 僕はアクアの手を握る力を少し強める。


「「フェルトとアクアは死んでも、また生まれ変わって会えますように」」


 僕とアクアは二人でいう。指輪はそれに応えるように一瞬だけ光る。


「じゃあ、そろそろ戻ろうか」


 僕はアクアの手を握ったままアクアに言う。

 いざこうして自分の気持ちに素直になってからアクアと手を繋ぐと、急に恥ずかしさがこみ上げてくる。


「うん」


 やっぱりアクアの笑顔は可愛いと再度思う僕だった。


 馬車に向かって歩いている最中。


「ムイちゃんたちにも、フェルトとのこと言っていい?」


 アクアがいきなり聞いてきた。

 僕はアクアはそんなことを言わないと思っていたから驚いてしまう。


「アクアがいいならいいよ」


 僕が笑顔でアクアに返すと、アクアは嬉しそうに。


「ありがとう」


 と言ってくれた。


 僕とアクアは暗いが綺麗な夜道を馬車に向かって歩いていく。



 僕とアクアが馬車について、馬車の前で待っていたエルに連れられてジルがとった宿に入る。そして、僕とアクアはみんなに二人でいう。


「「フェルトとアクアは今日、付き合うことになりました」」


 少しの間、沈黙が流れる。


「オーメーデートー!」


 スズがアクアに飛びつく。・・・・こんなことする娘だったっけ?


「「「おめでとう」」」


 みんなからも拍手やらを送られる。


「じゃあ、これで部屋の配分は決まりだね」


 ジルが言った瞬間、僕は『部屋の配分?』と聞く。


「実は部屋を3つしか借りれなくてね、誰がどの部屋に入るか困ってたんだ。でも、フェルト君たちは付き合うんだったら同じ部屋でも構わないよね。だから、フェルト君とアクアちゃん。エルと僕とハイドとムイちゃん。スズとライとスイとエトと言う部屋の振り分けになったから」


 僕の思考が停止する。


「フェルト君たちは一番狭い部屋になっちゃうけどごめんね」


 ジルは申し訳なさそうに言う。


「じゃあこれが部屋の鍵ね」


 ジルに部屋の鍵を渡される。


「フェルト、なんか初日からすごいことになっちゃったね」


 アクアの言う通りだ。


「そうだね」


 僕は笑うしかなかった。

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