第65話戦いの後の休み



 僕たちは氷流山から抜け出し、氷流山が浮遊して移動した距離が結構あったらしく、一番近い街まで行くのに三日とかからなかった。


「この街は何が盛んなの?」


 僕はこの街を進めてきたエルに聞く。


「この街は基本的になんでもあるかな。俺も一度しか来たことないからわからないや」


 エルはそう行って『すまないな』と返して来た。エルは氷流山の一件以来自分のことを俺と呼ぶようになった。


「「ここで何をするのだ?」」


 ライとスイが二人同時にエルに聞く。


「ここでは一通り旅用品を揃えたりとか、仲間が増えたから馬車を改良しないといけなくなったから、しばらくはこの街の宿で暮らすことになりそうだな」


 エルがライとスイにいうと、ライとスイは二人揃って。


「「じゃあ、この街で好きに過ごしてもいいということだな?」」


 とキラキラした目でエルに聞く。


「いいけど、買い出しぐらいは行って来てね。それと、君達が龍人ということは絶対にバレたらダメだからね」


 エルがそう言った瞬間、ライとスイは一瞬で街の中に走って行った。


「スズ、頼める?」


 僕はライとスイを楽しそうに見ているスズに聞くと。


「任せてください。あ、でもお金だけくれますか? 私たちは研究所にいた身ですからお金なんて持ってませんので」


 スズは申し訳なさそうに僕に聞いてくる。


「はいどうぞ」


 エルが馬車の中から袋詰めのお金をスズに渡す。


「ほらみんなのもね」


 エルはそう言って、手際よくお金入りの袋を配って行く。


「いつのまに準備したの?」


 アクアが驚いた顔でエルに聞く。


「ついさっき」


 エルは普通でしょ? みたいな顔してアクアに言う。


「そんなわけで、作業は俺がやっておくからみんな遊んできな」


 エルはそう言って、馬車になぜか置いてあった気の板などを持って作業し始める。


「みんなはどうする?」


 僕はアクアたちに何をするのか聞く。


「僕とハイドは街を一緒に見て回ろうかと思います。あと、ついでなので宿を取っておきます」


 ジルはそう言って、ハイドの手を取り街の蚊に走って行ってしまう。


「エトはどうするの?」


 僕はエトにも聞く。


「私はエルさんがする作業の方が気になりますから、ここにいます」


 早くエルの作業が見たいのか、話している最中でもちらちらとエルの方へ目線を向けている。


「じゃあムイは?」

「私もここにいます。また異能力が暴走したら嫌なので」


 どうやらムイは氷流山での一件のことを気にしているようだ。だが、あの一件以来、ムイの力が暴走することはなかったから大丈夫だと、僕は思った。


「じゃあ、アクアはどうするの?」


 僕は僕の横で立っているアクアに聞く。


「わ、私はフェルトの行きたいところならどこでもいい」


 アクアは喋ってる最中に下を向いてしまう。


「じゃあ、僕たちも街を見て回ろうか」


 僕はそう言って、賑やかそうな道へアクアの手を繋ぎ入って行く。


「フェ、フェルト。て、手を繋いで」


 アクアが顔を真っ赤にして僕に言ってくる。


「はぐれたら大変かなと思って。嫌だったらやめるけど?」


 僕がアクアにそう聞くと、アクアは顔を赤くしたまま。


「大丈夫」


 と言った。

 僕とアクアは賑やかな道を歩いて行く。





 アクアは最初の方は顔を赤くして下ばかり向いていたが、周りにで店が多くなってくるにつれて元のアクアに戻って行った。


「ねぇ、フェルト、あの店に入りたいんだけど」


 アクアはアクセサリーショップを指差して聞いてくる。


「いいよ」


 僕とアクアはアクセサリーショップに入る。


「いらっしゃいませ。このお店は剣とかも売っているのでゆっくり見て行ってください」


 店に入ると身長高めの女店員さんが出迎え、プラスこの店についての説明をしてくれた。


「アクアは何を買いたかったの?」


 僕はアクアにそう聞くと、アクアは僕の手を離して店の中を見始める。


「まぁ、いいか」


 僕は無視されたことに内心傷つきながらも店の中を見て回る。


「この店結構広いな」


 僕はこの店の案内図を見ながら呟く。


 一階には、かんざしやイヤリング、メガネ、おしゃれな武器などの道具が売っているらしい。


 二階には、服や帽子、靴などを売っていて、どうやら、子供用から大人用まで幅広い品を扱っているらしい。


 三階には異道具、異鉱石を売っていると書いてある。


「じゃあ、三階にでも行こうかな」


 僕はアクアに三階にいると伝えてから3階に上がる。


「へぇ、結構色々な色の異鉱石売ってるんだ」


 僕は棚に並べられている様々な色をした異鉱石をみる。


「あ、この色アクアに似合うかも」


 僕は透明な空色の異鉱石を手に取る。


「どんな道具にしたら、アクアは喜んでくれるかな」


 僕は異鉱石を持ったまま色々と考える。そしてあることに気づく。


『あれ、そういえば、なんでこんなにアクアのことが気になるんだろ? そもそも、なんでアクアといるとこんなに楽しくなったりするのかな?』


 僕は手を顎につけ考える。


『なんでアクアの笑顔が見たいと思うんだろう? そりゃ、笑顔でいることが一番だけど、それとはまた別の感情があるような』


 僕は自分の感情を探るように、さらに自分の世界に入って行く。


『アクアが僕以外の男の人と楽しそうに歩いているとことを想像してみよう』


 僕は想像する。


「なんかこの部屋暑くないか?」

「そうね、まだ夏にはなっていないはずなのだけれど」


 周りからそんな声が聞こえてくる所で僕は想像をやめる。


『アクアが僕以外の男と一緒にいるのを想像するだけで、ここまで嫌になるなんてな。・・・・・・やっぱり、僕はアクアのことが好きなんだな』


 僕は一つの答えが出る。


『決めた、あれを作ろう』


 僕は空色の異鉱石と小さな箱を購入し、早速作業に取り掛かる。


 僕はそのまま、アクアに声をかけられるまで作業に没頭してしまい、いつのまにか昼から夕方になっていた。

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