第64話イフリート✖️フェルト



 僕は紫色の爪を一瞬で壊し、アクアを抱きしめる。


回復キュア


 アクアの体が緑色の光に包まれる。


「フェルトお兄ちゃん、ごめんなさい、アクアお姉ちゃんが暴走した私をかばって」


 ムイが今にも泣きそうな顔で僕に言う。


「アクアも今はこうして無事なんだから気にしなくていいと思うよ。それに、ムイのおかげでちゃんと力を継承できたから」


 僕がムイちゃんにそう言うと、ムイちゃんはとうとう泣き出した。


「ムイ、アクアを連れてライたちと一緒にこの城を出て、初めてだから力をうまく制御できないかもしれないから」


 僕とムイがこう話している最中にも紫色の爪は僕たちに向かって地面から飛び出す。だが、紫色の爪は僕たちに当たる前に砕けて地面に落ちる。


「エルたちはもう回復させて馬車の中に放り込んでおいたから、あとはお願いね」

「はい、任せてください」


 ムイは涙を手で拭い、僕に真剣な表情でそう言ってくる。僕はそれを聞いただけで安心した。


「じゃあ、始めようか」


 僕は男に向き直る。


「始める前に一つ聞いていい?」

「何?」

「なんで毒龍の猛毒を解除できたんだ?」


 男は不思議なものを見る目で僕に聞いてくる。


「それは僕の能力のおかげかな」


 僕がそう答えると男は『そんな能力あったんだ』とだけ返してきた。


「余計な横槍を入れてすまないね。さぁ、殺し合い続行といこうじゃないか」


 男はそう言って、左手に炎を纏わせ盾の形を作る。右手には雷と風で作られた一本の剣が作られた。


「僕は盾と剣を組み合わせて戦闘する剣術を使えてね、この剣術で倒せなかったのはルトバーさまぐらいなんだ」


 男は昔を思い出すような仕草を取り、言う。


「つまり何が言いたいの?」

「君はここで僕に殺されるってことだよ」


 男はなんの疑いもない顔で言う。


「まぁ、やってみればわかるよ」


 僕は男を挑発する。


「挑発も大概にしておきなよ」


 男はそう言って斬りかかってくる。


幻影炎げんえん


 男の剣は僕の体を真っ二つに切り裂いた。だが、僕はその場から炎になって消え、男の後ろに立つ。


「いつのまに」


 男は僕の方を振り返り、すぐに剣を振る。


「だから当たらないって」


 僕はまた男の後ろに立つ。


「当たるまで当てればいいだけだ」


 男はそう言って諦めることなく剣を振り続ける。



 10分ぐらいが経過した頃。


「そろそろアクアたちも城を抜けた頃かな」


 僕は剣を振り続けている男の前で呟く。


「こちらからも攻撃させてもらうね」


 僕は体に炎を纏わせる。


「イフリート」


 僕の白い髪の一部が赤くなっていく。


「刀よ炎を纏え」


 刀が炎を纏い、氷も一緒に纏う。


双剣炎撃フレアダガーキル


 僕の左手に黒色と赤色の炎の剣ができる。そして僕は男に向かって斬りかかる。


「それしきたてで守ればいいだろう」


 男は盾を構えて僕の攻撃を防御しようとする。だが、僕が振った刀は盾を斬り裂き男の首を捉える。


『ガキンッ』


 刀が男の首に当たった瞬間、刀が弾き返される。


「まさか、僕が作った盾を壊すなんてね、一様体の強度を上げておいてよかった」


 男はそう言って笑う。


「こんな感覚いつぶりだろう。ルトバー様と戦った時以来だなぁ」


 男はそう言って剣を僕に向かって振る。だが、さっきと同じように剣は当たらない。


「剣が当たらないんだったら、これはどうだ!」


 僕の周りに水が生成される。


「そりゃっ」


 男の剣は僕に向かって振り下ろされた。僕はその剣を炎で受け止めた。


「やっぱりな、近くに障害物か何かがあったらその技は使えないんだろ」


 男は自分の推測が当たって嬉しいのか、少し自慢げだ。


「それがどうしたの? あんたが僕に勝てる確率はもうゼロだよ」


 僕はそう言って、炎と氷を纏う刀と炎でできた剣で男に斬りかかる。


「チッ!」


 男はすぐにバックステップを踏み後ろに下がる。


炎槍フレアランス


 男の真後ろに炎の槍を生成する。


『ぐはっ』


 男に炎の槍が刺さる。


炎弾フレアバレット


 僕はさらに男に向かって炎の弾丸を大量に放つ。


雷加速サンダーアクセル


 男の周りに電気が走り、男が一瞬でそこから離脱する。


「はぁ、はぁ、はぁ、やっぱり先にエトは殺しておくべきだったかな」


 炎で喉が焼けたのか男はかすれる声でそう言う。


「僕がさせると思う?」

「いや、思わねえな」

「わかってるんだったら無理だよ」


 僕はまた男に斬りかかる。


「いい加減にしろ!」


 男は炎でまた盾を作り、僕の攻撃を防ぐ。


爆発ボム


 どこからか声が聞こえた直後、僕と男の前で何かが爆発する。


「お前らさぁ、いつまでそんな変な戦いやってるの? 俺はもっと面白いのが見たいんだよ。それに、ルトバー様だってこんなの報告しても何もおもしいと思われないぞ」


 いつのまにかヤミと一緒に知らない男が僕と男から少し離れたところにいた。


「そうですね、次の一撃で両者どちらかが死ななかったら、この戦いは延期ということで」


 ヤミも謎の男の意見に同意するかのように言う。


「お前ら、何勝手に決めて・・・」


 僕はすぐに反抗しようとするが、謎の男の謎の気迫に押しつぶされそうになる。


「いいからやれ」


 謎の男は笑顔でそう言う。僕にはその男が笑っているのにもかかわらず、絶対的強者に睨まれているとしか感じられなかった。僕と戦っていた男も顔から汗が流れ落ちている。


「わかりました。次で決めさせていただきます」


 男はそう言って謎の男に頭をさげる。


「じゃあ、そう言うことだ。次の一撃でお前を殺させてもらうよ」


 男はそう言って、盾と剣を消し、周りに色様々な球を作る。


「気にくわないが仕方ない」


 僕は炎で生成した剣を消し、刀に炎の力を貯める。


「しね」


 男がそう言った直後、色様々な球体は高速で僕に向かって飛んでくる。


「一刀両断!」


 僕は刀を思いっきり横に振る。


『スパァァァァァン』


 色様々な球体は一瞬で真っ二つになりその場で消滅する。


「ガハッ」


 男から苦しそうな声が聞こえる。


「決着がつきませんでしたね、それではこの勝負は延期ということで」


 ヤミがそう言って男を抱える。


「あ、それといいこと教えてやるよ」


 謎の男が僕に喋りかけてくる。またしても謎の気迫によって体が動かない。


「もうじきこの世界はルトバー様の手によって滅びる。だから、こんなことしてないで好きな人たちと過ごした方がいいぞ。お前がルトバー様に勝てる確率なんてないんだからな」


 謎の男はそう言って闇が作った空間の歪みに消えて行った。


「それでは私もこれにて失礼しますね」


 ヤミも空間の歪みに入ろうとする。


「おい待て、さっきのはどういう意味だ」

「言葉通りの意味ですよ」


 僕の問いに対してヤミは冷静に返してきた。


「そういえば、あいつのの前教えとけって言われてたの忘れてました。さっきの意味のわからない怪物はバウと言って、君と戦っていた男の名前はリウと言います。まぁ、覚えておいても仕方はないと思いますけどね」


 ヤミもそう言って空間の歪みに消えて行った。


「くそ! なんだったんだ」


 僕は地面を殴る。そしたら意外と簡単に地面は割れた。


「一人で考えていてもしかないし、アクアたちのところに戻るか」


 僕は城から出たところでアクアたちが乗っている馬車を見つけ、アクアたちと合流して、旅用品を整えるために今浮遊している場所から一番近い街に行くことにした。


 今浮遊しているこの山は次第に崩れて行ったので僕たちはすぐに出発した。


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