第33話不安定
《植物》
僕が目を開けると、もうすでにあたりは静まり返っていた。
「早く助けに行かない、と」
僕は体を無理やり起こそうとする。
『ガサッ』
何かがこすれる音がした。辺りを見回しても誰もいない。僕は安堵して下を見ると。
「なんだよこれ」
僕の体には植物がまとわりついていた。立とうとすると植物が邪魔して立てない。
「この植物は、何してるんだよ」
僕はそう吐き捨て少しの間沈黙する。
僕は気づいた。体の痛みが完全にとは行かないものの引いているのを。
「この植物は、僕を治療している?」
僕がそう考えていると、近くから声が聞こえた。
僕が振り向くと、そこには人が立っていた。
「よぉ、久しぶりだなフェルト」
その人は、僕に向かって笑みを向けてくる。僕にはその顔が昔死んだ友達のものに見えていた。だが、そんなはずはない彼は、ハルトは死んだはずなのだから。
「お前、誰だ?」
僕が聞くと、ハルトに似た人物は。
「おいおい、俺のことを忘れたのかよ。ハルトだよ、あの時殺された」
自分をハルトと名乗る人が微笑し答えてくる。
「殺されたのに、なんでこうして生きてるんだよ」
僕はハルトに問いかける。
「死ぬ直前に植物の形を俺の体の形そっくりに作り変えたんだ。あとは、魂を抜き取る植物を成長させて、俺の体から魂を抜き取り、成長させた植物に移動させたんだ。一か八かの賭けだったが成功したんだ。まぁ、目を覚ます頃には二日は立っていたけどな」
ハルトが苦笑して言う。
「それを簡単に信じろと?」
今の僕は、人を簡単に信じれるほどの余裕が心になかった。
「まぁ、簡単には信じてくれないよな」
ハルトが少ししょんぼりとする。
「まぁいい、この植物を解いてくれないか」
僕は平然を装いつつハルトに言う。
「そろそろ治癒も終わったか」
そう言うと植物が地中に戻っていった。
僕はすぐに立って、アクアが連れ去られたところを見る。そこには、アクアにあげた髪留めが落ちていた。僕はそれを拾い上げる。
「アクア、絶対に助けるから、待っていてくれ」
僕はそう言い街から見える大きな城に向かって走り出す。
《ココハドコ?SIDE》
私は日光がささない地下牢のような一室で目をさます、私の体は椅子にくくりつけられていた。
「え、ここはどこ? そういえば、私気絶して」
私は気を失う前に起こった出来事を思い出していく。
「やっと目を覚ましたか」
牢屋の入り口には、体つきのいい男が立っていた。その後ろにはさっき、私とフェルトを襲ってきた男たちが並んでいた。
「ここはどこなの! フェルトは無事なの?!」
私は体つきのいい男に聞く。
「お前今どう言う状況かわかっているのか? お前に質問する権利はない」
男はそう言うと、椅子を持ってきて私の前に座る。
「まず始めに、お前と一緒にいた男について話してもらう。安心しろすぐには殺さない、まずは情報を吐いてもらう」
男はそう言う。
「嫌だ」
私は即答する。
「そうか、なら死んだほうがいいと思うようなことをしてでも吐いてもらう」
男はそう言うと椅子を部屋のはじにおき、牢屋を出ていく。
「しばらくしたら戻ってくる、能力は使えないように薬を打ってあるから能力での脱出はできないぞ」
男はそういって、牢屋の外で待機していた男たちとともに何処かへ行った。
《体の悲鳴》
僕は屋根を飛び移って、街の外に見える城に一番近い壁に向かっていく。
「なんでお前までついてくるんだ」
僕は後ろについてくるハルトに言う。
「お前が心配でな、前はちゃんと守れなかったから今回はちゃんと守りたいんだ」
ハルトは作り物とは思えない顔で笑う。
「何度も言うがそれを簡単に信じることは無理だ」
僕が言うとハルトは『そうだよな』と苦笑しながら言った。
僕が屋根の上を飛び越えようとした時。
「バギッ!」
僕は家と家の間の道に落ちる。
「ドスッ!」
僕は地面に直撃する。
僕は何が起こったのかわからず思考が停止していたが、腹からくる激痛によって目覚めさせられる。
僕は、お腹を見るとお腹は青く黒ずんでいた。
「おいフェルト、それじゃあ動けないんじゃないのか?」
一緒に降りてきたハルトがそう言う。
「うるせえ、こんなの時間を戻せば」
僕は自分の体の時間を戻そうとする。だが、痛みは引かず、それどころか痛みがさらに込み上げてくる。
「ぐはっ! お前、治療と言いつつ何かしただろ!」
僕は怒鳴りつける。怒鳴りつけた衝撃で腹がさらに痛くなる。
「俺は何もやってないよ、ただ治癒しただけだ。多分戻らない原因は体に負荷がかかりすぎてるんだ、休まないと戦えないどころか、歩くこともできないぞ」
ハルトは真面目な顔で答えた。
「じゃあ早く治癒しろ」
僕はハルトに言う。
「それは無理だな、もう俺のできる限りの治療はした。それ以上損傷がひどいなら俺じゃあ直せない」
ハルトはお手上げの仕草を取りながら言う。
「じゃあ、服屋に連れてけ、そこに僕の仲間がいる」
僕は服屋の名前をハルトに伝えると。
「わかった」
ハルトは返事をしてフェルトを運ぶ。
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