第25話アクアの願い1
《黒い炎からの説明》
「フェルト!」
私は叫ぶ。
だけど、フェルトは答えてくれないし、目も開けてくれない。
「フェルト、フェルト! しっかりして」
フェルトは静かに眠ったまま、目を開けない。
『おい、嬢ちゃん』
いきなり、黒い炎がフェルのの上に現れる。
「フェルトの、黒い炎」
『自己紹介はあとだ、先に、こいつを助けるための手段を説明する』
「ど、どうやったら、フェルトは目を覚ますの?!」
『こいつは、徐々に死に向かっている。持って10日だ』
「う、嘘でしょ」
『いいか、一回しか言う時間がないからな。まず、ここから馬車で4日ほどでつく場所に、精霊殿がある。そこで薬の精霊を呼び出すんだ。呼び出すためには、エルがいれば大丈夫だ。薬の精霊を呼び出したら、薬の精霊に頼んで薬を作ってもらう。まぁ、薬の素材は、自分で用意するんだがな、素材は薬の精霊が教えてくれるはずだから指定された量を集めるんだ』
黒い炎は、フェルトを助ける方法以外にも、なんでこうなったのか話してくれた。
「わかった、エル、馬車引けたよね?すぐ出発できる?」
私は、エルに確認する。
「なんとかなるぞ」
「じゃあ、今すぐ出発する」
『道は、お前の脳に送っておいた、あとは、任せた』
黒い炎は消える。
私たちは、馬車に戻ると、すぐに出発した。
《道中》
「あのぉ〜、僕たちも乗って行ったよかったのですか?」
ジルが聞いてくる。
「行くあてがあるなら、ここで降ろしてあげるけど、研究所にいたから行くあてなんてないでしょ?」
「まぁ、そうなんですが」
「行くあてができるまで、私たちの仲間になってよ」
「・・・えっ、いいんですか?」
「いいも何も、君のおかげで、ブレスを弾けたんだし、ムイを助けてくれたし」
「あ、ありがとうございます!」
「じゃあ、そっちの子もそろそろ自己紹介してくれる?」
私は、ジルの後ろにずっと隠れている、少女に花仕掛ける。
「私は、ハイドです。石を自由に操ったり、生成したりできる潮位能力者です。14歳です」
私たちは、ハイドの自己紹介が終わった後に、自分たちの自己紹介をする。
自己紹介が終わった頃。
「アクア、前に獣の群れが突っ込んできてる、どうにかしてくれ」
前方を見ると、そこには100は超えるであろう、獣の大群が、押し寄せてきていた。
「い、いきなりそんなこと言われても」
私が氷を出そうとすると。
「
剣が獣たちに向かって飛んで行く。
「どうだ、みたか、獣ども!」
キルが出てきたらしい。
「キル、ありがとう」
私は、キルにお礼を言う。
「また何かあったら、呼んでくれ」
キルは、ジルに戻った。
「キルに任してみましたけど、どうでしたか?」
ジルが聞いてくる。
「ありがとう、おかげで通れるようになったよ」
エルが、感謝する。
「それならよかったです」
ジルが返す。
ムイたちは、何か話している。
私は、簡易ベッドで寝ている、フェルトの看病をしていた。
そんなことをしているうちに、もう夜になった。
「夜飯食べないの?」
エルが聞いてくるが、今はそんな気分じゃない。
「大丈夫、フェルトの具合を見たいから」
「そう、じゃあ、持ってきてあげたから、ここで食べて」
エルが私に、さっき襲われた獣の焼肉を渡してくる。
「ありがとう」
私は、静かに返す。
「温泉すぐそこで沸いてたから、早めに入っておいで」
私は、フェルトから目を離したくなかったが、虹色の龍との戦闘ですっかり、泥だらけになった自分の姿を見て温泉に行くことを決めた。
・・・・・・・
「早く、出て、フェルトの看病しないとな」
私は、温泉に入り、そう呟く。
「なんで、こんな気持ちになるんだろう」
フェルトが、私を助けてくれた時に、ものすごい喜びを感じ、心臓がすごいスピードで動いていた。
でも、フェルトが倒れた時は、ファイが殺された時と同じぐらい悲しかった。
今は、悲しいと言う気持ちと、恐怖を感じる。
「私は、フェルトが死ぬことを怖がってるのかな」
私は、一人そう呟く。
私は、少しして温泉を出ると、フェルトが買ってくれた服を見て、泣いた。
とにかくひたすら泣いた。
「フェルト・・・なんで、黙ってたのよ」
私は、泣きながらそう呟く。
目からは、涙の大粒が流れ落ちてくる。
しばらく泣いたからか、目が腫れている感覚があった。
「早く着替えて、フェルトの様子見なきゃね」
私は、作り笑顔をした。そうしなければ、この気持ちをおさえられる気がしないから、作り笑顔をしていないと、また涙が出てきてしまうから。
「私、こんなにもフェルトのことを想ってたんだ」
私は、馬車の方へ戻って行く。
馬車に戻ったらムイが。
「アクアお姉ちゃん大丈夫だった?」
最初に飛んできた質問に驚く。
「え、なんで?」
「さっき、温泉の近くでお姉ちゃんの鳴き声が聞こえたから」
どうやら聞かれてたみたいだ。
「ムイちゃん、ありがとね、でも、もう大丈夫だから」
嘘だ、少し気をぬいただけで、また涙が出てきてもおかしくなかった。
私は、馬車に戻ると、フェルトの看病を続けた。
「フェルト・・・絶対に助けるから、だから、もう少しだけ、ここで泣かせて」
私は、フェルトの横で、声をできる限り抑えて泣いた。
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