第18話二重人格の少年



「はぁ、はぁ。こいつら結構強い。エル、大丈夫か?」

「な、なんとか。僕の能力じゃあこいつらを倒せないから、暗殺部隊で覚えた技が役に立ってしまってる」

「無事ならいいから、それと、あと何体ぐらいだ?」

「見える範囲で、30体だ」

「まだ、10体ぐらいしか倒せてないのか?」

「そうみたいだな」

「これじゃあ、きりがない。エル、少し暴れるから、炎に気おつけてくれ」

「わかった」

「炎の竜騎士ファイヤードラゴンナイト


 僕は炎を纏う。


双剣撃焔そうけんげきほむら


 僕は、馬車に当たらない程度に、炎の斬撃を繰り出していく。


「グァー」


 コウモリのキメラが次々にやられていく。


「よし、これなら」


 そう思った時。

 コウモリのキメラが集まり音波をこちらにはなってきた。

 コウモリの音波が束になって、僕に一直線に放たれる。

 僕は避ける。だが、左腕に当たってしまった。


「えっ」


 僕の左腕が、というより、左肩から手、までが、吹き飛ばされていた。


「あぁぁあ」


 僕は、音波が通って行った森を見るが、僕の左腕と同じように、木や岩、土などが宙を舞っていた。


時空逆再生タイムトラベラー


 僕は、時間を戻し、左腕を修復する。


「フェルト、大丈夫か?」

「左腕はなんとか回復した。だけど、また、コウモリのキメラは音波を放つ木でいるから、馬車にいて」

「わかった」


 コウモリのキメラたちがいきなり、方向を変えた。


「な、その方向は!」


 コウモリたちが、向いた方向は、馬車のある方だった。


「や、やめろ!」


 僕は馬車の前に走る。


「炎のファイヤーウォール


 僕の前に炎の壁を生成した。

 だが、コウモリのキメラは生き残っている、仲間全てと連携して、音波を出そうとした。


「そんなに、ためて出されたら、ここら辺一帯は吹き飛ぶぞ」


 コウモリは、一斉に音波を出す。


 炎の壁に一瞬であたり、炎の壁は一瞬で、かき消される。


「せめて、馬車だけでも!黒い炎よ僕の前に現れろ」


 黒い炎が僕の前に現れる。

 だが、まだ、完全に操れていなかったからか、黒い炎は本当に小さいのが出ただけだった。


「くそっ」


 僕は、吐き捨てる。

 その時!


全面反射パワーミラー


 どこからか、声が聞こえた。

 気づいたら、音波は全て、コウモリたちに当たっていた。


「な、何が起こった?」


 僕が、唖然としていると。


「君たち、大丈夫?」


 そこには、僕たちと同い年ぐらいの少年が立っていた。





「き、君は?」

「あぁ、自己紹介するね。僕は、ジル。そして、僕のもう一つの意識の名前は。

 俺が、キルだ」


 喋り方が、突然変化した。


「それで、お前たちは、何者だ?」

「僕は、フェルト。あの馬車に乗っている」

「フェルトって、あの、裏組織を潰して回ってるっていわれてる人!?」


 また、喋り方が変わった。


「そんな、風に言われてるんだね」

「あ、すいません、なんか気に障りましたか?」

「あ、いいよ、別に」


「フェルト、誰その子?」


 エルが馬車から出てきた。


「フェルトさん、あれ誰ですか?」

「あの人は、エル、僕たちの仲間だよ」

「そうなんですか」

「だから、フェルト、誰なんだよそのこ」


 エルがしびれを切らしていた。


「この子は・・・・なんて言えばいいんだろう」


 なんて、つぶやいていると。


「僕の名前は、ジルです。そして、もう一つの人格の名前はキルです」

「もう一つの人格?」

「僕は、研究所の実験隊でした」

「「えっ?」」

「僕は、獣の魂を人間の中に入れると、どうなるのかという、実験の実験隊でした。まぁ、そんな僕は今は、研究所に追われる身になりましたけどね」

「ひとつ聞いていい?」


 僕が、尋ねる。


「いいですよ」

「さっきの、技って、君の能力?」

「はい、そうです。もう一つの人格の方の能力は、範囲攻撃ですから、さっきのような場面では使い物にならないんですよ。

 誰が、使い物にならないだ!」


 また、人格が変わった。


「まぁ、それはいいとして、さっきから、こちらをのぞいている、あの人たちは誰ですか?」


 ジルが指をさした方を見ると。

 そこには、アクアとムイが馬車の中からこっちを見ていた。


「あの人たちは、アクアとムイだよ、僕の仲間」

「そうですか」


 ジルは、アクアとムイに自己紹介をする。


「そう言えば、あなたたちはなんでこんなところにいるんですか?」

「僕たちは、科学の街に向かってるんだ」

「なんのためにですか?良ければ教えてください」

「研究所を潰すために行くんだ」

「そうですか」


 いきなり、ジルの空気が変わった。


「あの、ちょっといいですか?」

「何?」

「僕も一緒に連れて行ってもらってもいいでしょうか?」

「君、今研究所に萎えらわれてるんでしょ、わざわざ、研究所に行くの?」

「研究所に大事な人を置いてきてしまったので、それに、僕一人じゃ助け出せないから」


 僕は、少し考える。


「わかった、いいよ」

「本当に、いいんですか?」

「さっきの、能力を見るに、足手まといっていうことにはならなさそうだし。

 それに、ここにいる人たちは、大事なものを失う悲しさを、知っている人たちだからね」

「あ、ありがとうございます」


 一様アクアたちに確認を取る。


「いいよな」

「フェルトさんがいいというなら」

「フェルトがいいなら」

「フェルトが決めたことなら、僕は従うさ」


 みんなの確認が取れた。


「はは、これで、しばらく仲間だ、よろしくな、ジルとキル」

「よ、よろしくお願いします」


 その、あと、僕たちはまたねた。・・・だってまだ、暗かったもん!





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