第17話夜の襲撃者



 朝起きたら、エルが馬車に何かを詰めていた。


「エル、おはよう。何やってんの?」

「ああ、フェルトか。馬車にある食料を見てみたんだが、これじゃ足りないと思って、新しく食料を積んでるんだ」

「そう、ありがとう」


 それから、数分したら、アクアが起きてきた。


「そういえば、目的地ってどこだっけ」


 アクアが問いかける。


「言ってなかったっけ。次の目的地は、キラーズの本拠地の一つ研究所がある街、科学の街 サイエンだ」

「え、研究所の場所なんて資料に書いてなかったわよ」


 アクアが、殺気を出してエルに問う。


「資料が一枚、床に落ちてたんだよ」


 僕が、伝えると。

 アクアは、安心したように。


「そうなんだ」


 よかった、殺気がなくなっている。


「おはようございます。アクアお姉ちゃん、エルさん、フェルトさん」

「「「おはよう」」」

「それじゃあ、早く乗って。朝食は馬車の中で取るから」


 僕が言うと、みんなが馬車に乗り始める。

 荷物もあってか、馬車の中は結構狭くなった。


「じゃあ、出発するよ」


 僕は馬を走らせる。


 馬を走らせてから4時間ぐらいがたった。


「そろそろ、お昼にしよう!」


 僕が言うと、アクアが料理を持ってきてくれていた。


「さっき、馬車に乗っている最中で作ったから、まだ、あったかいから食べて」


 さっきから、いい匂いがしていたのは、アクアが料理していたのか。・・・馬車の揺れで、よくこぼれなかったな。

 よく見ると、奥ではムイとエルが、もう食事をとっていた。


「先にいただいてます」

「お先〜」


 ムイとエルが言った。・・・少しぐらい、待ってていいじゃん!


「アクアはもう食べたの?」

「ううん、まだだよ」

「じゃあ、一緒に食べようぜ!」

「う、うん」


 どこか、アクアは嬉しそうだ。


「「ごちそうさま」」


 僕とアクアが食べ終わる。


「そういえば、アクア、どうやって食器洗うんだ?」

「・・・・」

「アクア?」

「どうしよう、考えてなかった」

「えっ」

「きみなら、もう少しで、水になる氷を出せるでしょ?」


 エルが問う。


「できるけど、なんで?」

「その氷を水保存タンクいっぱいに出してくれ」

「わかった」


 アクアが水タンクの中に氷を生成すると、水タンクがいっぱいになった。


「わー、すごいです。さすがは、アクアお姉ちゃんです」


 ムイが目を輝かせながらみている。


「この水って飲めるのか?」

「多分飲めると思う」


 アクアが言った。


「まぁ、一様僕が炎で消毒しとくよ。冷たいのが飲みたければ、アクアに冷やしてもらえばいいしね」


 僕の提案にみんなは。


「これで、飲み水とかの心配は無くなったな」

「水タンクって、何個あるんですか?」

「僕がみたところ、10個だな」

「じゃあ、アクアお姉ちゃん残りのも宜しくお願いします」


 エルとムイがアクアに頼んでいる。


「わかった」


 アクアは残りの9個の水タンクを満タンにした。





 エルの家を出発してから、八日目。

 僕たちは、科学の街の付近の森で、睡眠をとることにした。


「もうすこしで、科学の街だけど、夜の森を進むのは危険だから、ここで一泊していくぞ」


 僕がアクアたちに言った。


「ここじゃ、野宿じゃない」


 アクアが反論する。


「女子は馬車の中で寝てくれ。男は外で寝るから」

「いいの?」

「男まで入ったら、いくら荷物が減ったとはいえ、狭くなるからね」

「ありがとう」


 僕とアクアが会話をしていると。


「フェルト、アクアちゃん。今日の特訓終わったの?」


 エルが問いかけてきた。


「「まだだ、早くやらないと!」」


 僕とアクアは馬車から少し離れる。


 1時間後。


「「疲れたー」」


 僕とアクアは同時にそう言い、馬車の外に置いた椅子に座る。


「お疲れ、今日は僕とムイで夜ご飯を作ったから、アクアちゃんは、楽していいよ」

「あ、ありがとうございます」


 僕たちは、夜ご飯を食べ終わる。


「久々に、エルとムイの料理食べたなー」

「やっぱり、美味しいね」


 僕とアクアが料理の感想を喋り終わった後。


「アクアちゃん、フェルト。この近くに、温泉湧いてたから、後で、入ってくるといいよ」


 もう、温泉に入った感を出している、エルが言った。


「じゃあ、先に、アクアからどうぞ」

「いいの!」


 さすが女の子と言うべきか。温泉でこんなに落ち着きがなくなるとは。


「フェルト、絶対に覗かないでよ」

「そんなことしないよ」

「絶対だからね!」


 アクアは、もう一度言ってから、エルが言っていた温泉の方角に歩いて行った。


 アクアが、温泉から戻ってきて、次は僕が温泉に行った。


「はぁー、癒される」


 僕が、独り言をつぶやくと。


『お前、そんなにくつろいでいて大丈夫なのか? 今のお前の状況は、あまり良くないんだぞ。お前が、俺を残り、12日で使えるようにならないと、お前本当に死ぬからな』

「わかってるよ。それに、炎を出したいところに出すことはできるようになったんだから」


 そうだ、少し前までは、黒い炎を僕の横に出すだけしかできなかったんだ。


『そんなんじゃ、お前死ぬぞ。お前は一人でイフリートを切った時のように、炎を操らないといけないんだからな。それに、黒いあざはもう右腕全てに広がったんだろう。もう、時間がないことは、わかっているはずだ』

「そうだね。僕も、こんなところで死ぬ気は無いし、早く、君の力を操れるようになりたいしな」


 僕は、静かに言い返す。


『そうか。 それと、一つ伝言』

「何? 君外の人と話す機会ないのに伝言なんて頼まれたの?」

『お前の、中にいるやつにだよ』

「そ、それってもしかして!」

『ネイ、とか言う奴からだ。』

「なんで、君みたいに、僕と会話できないの?」

『俺は、力が強いから、会話できているが、普通の人間にはできないんだよ』

「そうなんだ・・・で、その、伝言は?」

『「死んだら絶対に許さないんだから」だってさ』

「・・・えっ、それだけ?!」

『それだけしか、言われてない』

「まさか、ネイが死ぬ前に言ったことをもう一度言われるとは」

『まぁ、お前、死んだら、あいつに地獄に落とされるかもな。その時はよろしく!』

「縁起でもないこと言うなー」


 僕は、黒い炎との会話を終え、温泉から出て、着替えて、馬車に戻った。


「フェルト、おかえり、毛布敷いといたから、今日は、そこで寝て」

「悪いな、エル」

「別に、これぐらい、僕のついでだし」

「そういってもらえると、楽だよ」


「フェルト、エルさん、私たちはもう寝るね」


 アクアが言った。


「じゃあ、おやすみ、アクア、ムイ」

「お、おやすみなさい」

「おやすみ!」


 アクアと、ムイは馬車の中で寝た。


「じゃあ、僕らもそろそろ寝るか」


 僕が、エルにそう言った瞬間。


「お前、僕らに隠してることあるだろ」

「・・・えっ」


 突然だった、冗談を言っているのかと思って、エルの顔を見るが、エルは真面目だった。


「その右腕の包帯、とってくれるか?」

「な、なんで?」

「その、腕の包帯、傷が開いたにしては、包帯に血がついていない。

 格好つけてるんだったら、別に見せても構わないはずだろ?」

「はぁ〜。やっぱり、エルは騙せないか」


 僕は、右腕の包帯をとる。


「な、なんだそれ!」


 エルが、驚きのあまり、声を上げる。


「どうしたんだよ、その腕」


 僕は、この腕のこと、黒い炎のことをエルに話す。


「なんで、僕に相談してくれなかったんだ!」

「余計な、心配をかけたくなくて」

「フェルトが死にかけているのに、心配するな? そっちの方が無理に決まってるだろ」


 エルは、怒っていた、同時に僕に安心を与えてくれた。


「ごめん、でも、アクアたちには絶対に言わないでほしい」

「・・・わかった、でも、早く黒い炎を扱えるようになるんだぞ」

「うん」


 エルとの話が終わって、僕たちは寝た。


 まだ、あたりは暗い。


「ガサッ」


 僕とエルは草が揺れる音で目を覚ました。


「死ね」


 でかいコウモリが言葉を発し、いきなり爪で攻撃をしてきた。


「うわっ」


 僕は、間一髪で避ける。


「エル、これは研究所で作られている、キメラだよな」


 コウモリは、ただのコウモリではなかったのだ。

 人間の体があった。だが、両腕と耳は人間のものではなく、コウモリの腕と耳を大きくしたようなものが、つけられていた。


「そうだろうな、しかも、周りは同じような奴に囲まれているようだぜ」


 エルに言われて、周りを見る。そこには、20、いや、40体はコウモリ型のキメラがいた。


「エル、アクアたちが寝ている馬車を守りながら、戦うぞ」

「わかった」


 コウモリのキメラは一斉に襲ってくる。

 僕たちは、馬車を守りながら、コウモリのキメラと交戦していた。


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