タイトルにあるように、こちらの作品はいわゆるゾンビものですけれど、描かれているのは「福祉」の問題なのです。
ゾンビ化が進行していく母を、主人公である息子はどう支えていくのか。そもそも「息子がどう支えていくのか」という問いが正当なのか。
また介護の問題を念頭に描かれているのは承知しつつも、育児に奮闘する自分にもすごく身にしみる言葉がたくさん出てくる物語でした。
じわっと泣けます。じわっと。
堅苦しくなりがちな「福祉」というテーマを、「ゾンビもの」のキャッチーな衣で読者に届けてくれるステキな作品です。
多くの人にこの作品が届きますように!
この物語は紛れもなくリアルである。
……え? 母親がゾンビになるなんてリアルではありえないって?
ふむ、なるほど。では少し考えてほしいのだが、自分の親が認知症やアルツハイマーを患ったとしたらどうなるか。
思考は後退し、食事や排せつも含めて日常生活はままならなくなる。
実の子供だということもわからずに強くあたられることもある。
介護疲れがために痛ましい事件も起きていることも見ないふりはできない昨今だ。
繰り返す。この物語は紛れもなくリアルである。
ゾンビになりゆく母親を支える主人公が思い悩むさま、彼を取り巻く環境や衆人の目、社会的な支援の仕組みなどが忠実に描かれている。
どうだろう。あなたの親がまだ健在なのであれば、今のうちにこの物語を読んでおいたほうがいいんじゃないだろうか。