第8話

眠りから覚めると

井上先輩から来ていたメールをみて

俺は目を疑った

『北野が死んだ…お前

葬式…来るよな?』

いつもの先輩の悪ふざけかと思い

そのメールを削除して

俺は眠りについた


だが…数日後見舞いに七瀬と将太がきた

そのとき将太の口から出た言葉は

俺を地獄へ突き落とした

『先輩の葬式…出れなくて残念だったな』

俺『!!!』

七瀬『井上先輩から連絡行ったよね…?

北野先輩が…なくなったって…』

俺『いや、きたけど…先輩の冗談なんじゃないの…?』

そう言って二人を見ていたら

『冗談で章吾を殺してどうすんだよ』

と、声がした。

声の方を見ると井上先輩が立っていた

俺『井上先輩…』

井上『お前が葬式にいないから何があったのかと思って七瀬と将太に聞いたんだ。

まさか、お前まで倒れているとは思わなかったがな。』

俺『すいません…でも…なんで北野先輩が…』

井上『トレーニング』

俺『え…?』

井上『あいつはトレーニングを一人でやってたんだ。ベンチプレスを一人で。

そのとき腕の限界で上がらなくなって

心臓圧迫で呼吸ができずにそのまま…

つまり…言い方は悪いが自業自得の事故だったらしい….。』

俺は言葉を失った

将太と七瀬が急に俺に謝りだした

将太『ごめん…本当にごめん…』

七瀬『ごめん…なさい…』

俺はすぐに状況が飲み込めなかった

だが井上先輩の一言ですぐに理解した

井上『お前が倒れた日

美月がいなかったのはそのせいなんだ』

俺『!!!!』

井上『美月はお前が倒れたことを

章吾に伝えようとして電話を掛けたらしい

だが…電話に出たのは章吾のお母さんで

誰よりも先に死んだことを告げられたんだ』

将太『それで…病室にはいなかったんだよ…』

七瀬『美月は道場からすぐ焦って

出ていったんだよ…

ただ事じゃないって言って瑠夏も追いかけて行った…

だけど瑠夏は美月に追い返されて

病室に来ていたんだよ…』

俺『なんで…そんな大事なことを俺に言わなかったんだよ…』

七瀬『…』

将太『…』

井上『お前に言えば

お前は自分を責めて無理矢理でも

章吾のとこへいこうとしただろ』

将太『そんなことしたら…美月が一人で

北野先輩のとこへ向かった意味がなくなるから…言えなかったんだ』

井上『美月はお前を責めさせないために

一人でなにも言わずに行ったんだ。

それを自分達が台無しにしてはいけないと

こいつらは考えたんだよ』

俺『でも…』

井上『お前にできることは

自分とかこいつらを責めることじゃない

さっさと病気直して練習に戻って

章吾の代わりに全国大会に出ることだ

もちろん、美月と一緒にな』

俺『…』

俺は何も言えず涙だけが溢れていた

将太と七瀬も泣いていた

井上先輩は二人をつれて帰っていった


すべてのことを知ったのに

俺は溢れてくる涙を止める術を知らず

何日も悔しくて悲しくて泣いていた…





…9話につづく


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