7 sxalto ned dewdalgma tigazo?(お前、半アルグの力を知らなかったの?)
確かにノーヴァルデアは変わった。
それでも、まだ彼女はゼムナリアの尼僧の思考から離れられない。
さんざん悩んだ挙句、スファーナは今後の計画に必要などだと説明すると、渋々と彼女はしたがった。
油断は禁物だ。
そもそも、どうすれば死の女神の尼僧に、殺人はいけないと説けばよいのか。
それはいままでの彼女の人生のすべてを否定する言葉だ。
さらにいえば、これからの己の覚悟まで鈍る。
自分がやろうとしていることは、いうなればノーヴァルデア一人のために他の多くの人々を苦痛や死に巻き込むようなものなのである。
ふいに、叫び出したくなるような衝動に駆られる。
底なし沼だ。
あがくほど、もがくほどに、きつくなっていく。
身動きがとれなくなっていく。
大事な用事があるで出かけてくる、とノーヴァルデアに言って宿を出たが、彼女はひどく寂しそうに、寝台に腰かけていた。
特にあてがあるわけではない。
もうかなりあたりの風は冷たくなっている。
ときおり口に布を巻いたモルグズを眺める者もいたが、メディルナの人々はみな自分の生活に忙しいようだった。
今更ながら、人が多い。
職業不詳の、それなりに身なりの良い若者が多いのは、おそらく近くに王国の文官を育成する学校のようなものがあるからだろう。
貴族の子息や、裕福な一般人のなかからも、最近は役人になるものが出始めている。
さらにしっかりと官僚たちが王国の手足として働くようになれば、イシュリナシアも中央集権国家としてさらに繁栄するに違いない。
猥雑な通りの賑わいを見ていると、自分がひどく長い夢でも見ているような気がする。
この世界で起きたことは、現実にあったことなのだろうか。
中世ヨーロッパと近世ヨーロッパの町並みに似ているようで、どこか違う雰囲気の石造りの建物の間を歩きながらそんなことを考える。
はるか遠くには、ユリディン寺院の二つの塔が、こちらを嘲笑うようにそびえていた。
あのなかに保管されている古の魔剣モルギマグズを手にして、地上に災いをもたらす。
正気の沙汰ではない。
そんな大それたことが果たして可能なのか。
空が少し曇り始めている。
セルナーダの天候は雨乞いなどにより急転しやすい。
このままどしゃぶりになったら面倒だな、と思った時、いきなり奇妙な髪型をした少女が、ひょいと目の前に現れた。
この世界では相当に珍妙な髪型らしく、若者や少女たちが興味津々、といった様子でスファーナを見ている。
これでメディルナからこの髪型が流行ったら笑うしかない。
異世界からきた新しい髪型。
いまメディルナの若者たちの間で大人気。
だが、ここは文化と学問の都らしいので、ひょっとしたら本当にそうなりかねないのが少し怖いところだ。
我ながら疲れていると、思った。
no:valdea era cu?(ノーヴァルデアは?)
ya: sxupsefnxe.(宿にいる)
wob wento cu?(お前はなにしているの?)
sxulv fog.(俺が知りたい)
ふいに、狭い路地に連れ込まれた。
hxufav viz cu?(俺を襲う気か?)
duvikato cu?(お前、誤解してない?)
だからそのツンデレ的表現はやめてくれ、と言おうとすると長々とスファーナはため息をついた。
sxalto ned dewdalgma tigazo?(お前、半アルグの力を知らなかったの?)
一瞬、言葉を失った。
yoy,solva del tur sxas te+sxuzo.sxelte dewdalg ya: tigazo tasbomiya resazo.(あのね、私は三百年、生きているの。半アルグに女を虜にする力があることは知っていたわよ)
モルグズは呆然とした。
ha,eto be+gis.tiregav,losxugiv so:rol...dusonvato ned tuz...(あら、お前って真面目なのね。私も驚いたわよ、あんたを……その、嫌いじゃないって気づいたときは)
それからスファーナはじっとこちらを見つめた。
vekava li lakato no:valdeazo.lamsum wento sel.now jod ye:ni era....(ノーヴァルデアをお前が愛してることはわかってるの。彼女を幸せにしたいんでしょ。でも、それが意味するのは……)
ers a:mofe reysima du:lams.(多くの人々の不幸だ)
wob ganuto cu?(なに悩んでるの?)
一瞬、スファーナの言っている言葉の意味がわからなかった。
dubemote? wob wente nesnxe cu? payu ormoto re,dermo re reysile.eto zadreys.ned,eto nanzadreys!(忘れたの? お前がネスでなにをした? とっくにお前は人々から恨まれ、呪われているの。お前は悪人よ、いえ、大悪人よっ!)
なに一つ、スファーナの言っていることは間違っていない。
vomov nantu:r vanreyszo.eto zadreys.eto mags.ta erav zadresa kap.erav egzo:nma zeresa.vanreys erav tic ned.zemgegav a:mofe reysizo e+ze yelselegav tsem dog.vo erv mi:fe.(善人のふりをしないで。お前は悪人よ。あなたは災厄よ.そして私も悪人。私はエグゾーンの尼僧なのよ。善人のはずがない。私はたくさんの人たちを私自身が生き残るために殺してきたんだから。私たちは同じなのよ)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます