9 sufa:na,sxalto artiszo marna era molgimagz cu?(スファーナ、お前はmolgimagzという名の剣を知っているか?)
目が覚めると、ノーヴァルデアがこちらを見下ろしていた。
スファーナの顔も見える。
頭の痛みのようなものはなかった。
va irigav tuz zertigatse.(私が法力でお前を癒やした)
横では、顔がまだ赤いままのスファーナが、安堵のためか涙を目の端に浮かべていた。
erig van! bac...(良かった! もし……)
そこで、あわてたようにスファーナが後ろに飛び退ろうとしたが、彼女も派手に樽に頭をぶつけた。
vomova duvika:r! hekiva ned tuz!(誤解しないでよっ! お前を心配なんかしてないしっ!)
地球にいたころ読んだマンガで、こういう登場人物が女性キャラでよくいたことをふと思い出した。
確か「ツンデレ」だったか。
eto tsundere cu?(お前はtsundereか?)
tsundere?
スファーナが目を瞬かせた。
意味がわからないといった顔をしているが、それも当然である。
tsundere ers ti+juce judnikma yurfa.(ツンデレは別の世界の言葉だ)
そういえば、ツンデレと呼ばれている少女たちはなにかの記号のように妙な髪型をしていた。
頭の横のあたりで髪を束ね、そこから長く垂らした髪型だ。
ツインテール、といったような気もする。
wob ers tsundere cu?(ツンデレってなによ?)
sufa:na.era rxafsa jenin eto cedc.(スファーナ、いまのお前みたいな女の子のことだよ)
それからツインテールという髪型について話すと、スファーナもノーヴァルデアも不思議そうな顔をした。
ers mxuln.(変なの)
だが、次のモルグズの言葉にスファーナが目の色を変えた。
lokyiv tsuinte:ruzo.(俺はツインテールが好きだがな)
va wonva fog vam casma:zo tsuinte:rule.(私も髪をツインテールにしたい)
ノーヴァルデアは真顔だった。
tom casma: era kan to:g.(お前の髪は短すぎる)
すると、ひどくノーヴァルデアは哀しげな顔をした。
jenma eto u:tav mo:yefe,(今のお前が一番、可愛い)
今度ははにかむようにノーヴァルデアが微笑を浮かべた。
ふと、自分がホストにでもなったような、ひどく滑稽で惨めな感覚にとらわれる。
すべてはただの性フェロモンの仕業かもしれないというのに。
しかも、これから待ち受けている運命は、ろくでもないものだ。
いずれ迫りくる敵と対抗するために、魔剣を取ってこいとは。
おまけにその魔剣はユリディン寺院により厳重に保管されているのだという。
sufa:na,sxalto artiszo marna era molgimagz cu?(スファーナ、お前はmolgimagzという名の剣を知っているか?)
スファーナの顔がひきつった。
ers...magzuartis.ers mig jabce artis.(それは……magzuartisよ。とても危険な剣)
magzは災厄、artisは剣だ。
なるほど、ただの魔術のかけられた剣というよりはまさに「魔剣」と呼ぶほどに禍々しい代物らしい。
magzuartis molgis magzuzo judnik ta te:naresle.molgimagz erum gozuna no:vayuridusma tigazo tes.(魔剣は世界と使い手に災いをもたらすの。モルギマグズは闇魔術の力をとてつもなく強めるそうよ)
ゼムナリアは嘘は言っていなかったようだ。
さすがにユリディン寺院も三百年前の人間の知識までは消すことはできなかったらしい。
しかしいろいろと、話が出来すぎている。
スファーナの知識は、絶対にこれからいろいろと役立つはずだが、彼女とネスの街で出会ったのもさすがに「偶然」とは思えない。
そしてスファーナは、エグゾーンの尼僧なのである。
ゼムナリアはクーファーと協力していた。
であれば、病の女神エグゾーンと手を組んでもおかしくはない。
ひょっとすると、神々の世界では、今は「邪神大同盟」とでもいうべきろくでもないものが生まれている可能性がある。
死の女神、火炎と破壊の神、そして病の女神の三柱が手を携えれば、凄まじい災厄を地上に広めることができるだろう。
だが、ソラリスやアシャルティス、イシュリナスといった神々がこれを看過するとは思えない。
当然、ユリディンもだ。
この世界の歴史は神々ぬきでは語れない。
どうやら自分も神々の駒の一つとして、否応なく邪神側につかされたようだ。
ならばユリディン寺院潜入も楽かといえば、たぶんそれはない。
ゼムナリアにとってはこれは戯れであり、ゲームのようなものなのだろう。
人々が人格を持つ強大な神々によりその運命を弄ばれる世界というのも、なかなかに恐ろしい。
そして彼らは自分でも気づかぬうちに神々の争いの駒としての役割を果たしている。
ただ、あまりにも多くの神々の思惑がからみあっているので一筋縄ではいかない。
さらにそこに国家の権力者や大魔術師たちの意向までかかわってくると、あまりにも不確定要素が多すぎる。
たとえこの運命から逃げようとしても、ゼムナリアはそれを許さないだろう。
モルグズには、選択肢はないのかもしれない。
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