10 va lokyiga tuz.va laka fa foy tuz.(私はお前が気に入った。私はお前を愛するかもしれない)

 どうしてこうなった。

 調子はずれのノーヴァルデアの鼻歌を聞きながら、モルグズは改めて思った。

 すでに、アルグの襲撃をうけてから一週間ほど経過している。

 幸いにしてノーヴァルデアの体にも精神にも、特に異常らしいものは見られなかった。

 今にしてみると「不幸にして」と言ったほうが、正解ではないか、という気がしないでもない。

 アースラは、苦笑していた。


 unpe giga reysuzo gxapsale.(男をきょどもに盗られたのは初めてだよ)


 もはや呆れるのを通り越し、彼女は愉しんでいるとしか思えない。

 さすがにこれは予想外の展開だった。

 ノーヴァルデアにここまで懐かれるとは、誰が想像しただろう。

 ラクレィスもガスティスも、明らかにここ数日でのノーヴァルデアの変化に驚いていた。

 モルグスも驚いている、というかいままで以上に困惑している。

 さらにはっきり言えば、迷惑きわまりない。

 ヴァルサのときは、まだ良かった。

 彼女は一応、思春期は迎えていたし、ときおり自分でも欲望のやり場にこまることもあったくらいだ。

 だがノーヴァルデアは、いろいろな意味で事情が異なる。

 彼女は一見すると子供ではあるがあのアルデアと同い年であり、父親の凄惨な虐待をうけて成長が止まってしまったのだ。

 一頃は感情の起伏もほとんどなく、不気味としか言えなかった。

 それが、いまはどうだ。

 確かに無表情なようにも見えるが、ときおり、ごく淡く微笑んだりもするのである。


 loqiya jenma do:baldeazo.pul ega: qedq ubodoresa.(今のドーバルデアのほうがあだしはしゅきだよ。みゃえはウボド信者みゅたいだったし)


 さすがにアースラのきついグルディア訛りには慣れてきたが、今のノーヴァルデアは、どう扱えばいいのか困る。

 

 va lokigav tuz.va laka fa foy tuz.(私はお前が気に入った。私はお前を愛するかもしれない)


 これほど未来相のfaと推量のfoyが有難く聞こえたことはなかった。

 少なくともそれは、可能性にとどまっているからだ。

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