11 erab mig rxo:bin reysuzo dewdalg sar.(人間のほうが半アルグよりもよっぽど怖いよ)

 結局、ノーヴァルデアの鶴の一声で、グルディアに行くことが決まった。

 もっとも、それはすでに決まっていたことなのかもしれない。

 彼女がアースラが来ることを神託で知っていたのは明らかだ。

 そもそもこの森のなかにある小屋をいきなり訪れてきた女性をまったく警戒していなかったし、わざわざ彼女にも女神が私に告げたのはあなたか、と問い返している。

 しかし神託の内容はアースラの来訪だけだったのだろうか。

 すでにゼムナリアはモルグズをグルディアに行かせると決めていたのかもしれない。

 改めて、不快な気分になる。

 まるで神々の遊戯の駒の一つにでもされているかのような、不快感だ。

 旅支度を終え、明日はグルディアに行くという夜に、モルグズはアースラと交わった。

 この世界では、初めて女を抱いたことになるが、やはり女性も肉体の構造がいろいろと人類に似ている、ということを再確認できた。

 ただ、肉欲に負けたというわけではない。

 いまだにヴァルサのことが忘れられないのだ。

 ときおり、死を求めている自分がいる。

 ヴァルサがどこに行ったかは文字通り、神々のみぞ知るところだが、この世界はいまのモルグズにとっては味気ない、灰色の世界なのだ。

 アースラを抱けばなにかが変わるかとも思ったが、ますます「彼女はヴァルサではない」と実感させられるだけだった。

 彼女は様々な意味で巧みだったが、頭のなかでアースラを成長したヴァルサの姿と重ね合わせていた。

 狭い小屋だし、物音もしたはずだがゼムナリア信者たちは特に反応しなかった。

 寝ているのか、そのふりをしているのか。

 あるいはまったく興味が無いのか、そのどれかはわからない。


  eto go+depe.(あんた、すごぴね)


 くすくすと共犯者めいた笑い声をアースラが漏らした。


 eto rxo:bin dewdalguzo cu?(半アルグが怖くないのか?)


 erab mig rxo:bin reysuzo dewdalg sar.(人間のほうが半アルグよりもよっぽど怖いよ)


 アースラの黒褐色の瞳に、なにか暗いものが揺れた気がした。


 ba erab tabzay.(あだしはしゃうふだっだ)

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