10 eto go+depe! lokyiba go+zun reysuzo!(すごぴ! 私は強い男が好くぃよ!)

 do:baldea,tom mo:yepe cap peyiya re.(ドーバルデア。あなたの可愛ぴかぽが捨てられる)


 だんだん頭が痛くなってきた。

 かぽ、もとい顔が捨てられる、というのはたぶん「台無しだ」、といった表現だろうが、音の変化が凄まじすぎる。

 ただ、ガスティスとラクレィスはそれほど、グルディア訛りを気にしていないようだった。

 ある程度、慣れているのだろう。


 va sekiva fog tom cu+chazo.(私はあなたの話が聞きたい)


 堅苦しく感じていたノーヴァルデアの言葉も、こうしてみると心地よく思える。

 ふいに、赤毛の女が真顔になった。


 tom marda era a:sra.gurudiama qu:fa:resi yanbos pog zemdariarescho.bom na:fa sagla.(私のにゃまえはアースラ。グルディアのqu:fa:信者はゼムダリア信者ときゃうりょくしたい。わだしたちの考えは似ている)


 少しずつグルディア訛りにも慣れてきた。

 アクセントがない部分のfaは、pにならないので、qu:pa:にならずにもとのfa:が残っている。

 どうもこのqu:fa:という神も、ゼムナリアと同様に、死や破壊といったものを好むようだ。


 batiya zeb zig qod sa+gxan judniqzo.(この汚れたせがいを燃やし尽くさにぇばにゃらない)


 なるほど、qu:fa:という神の信者たちの思考がわかってきた。

 彼らは世界は穢れているので、聖なる神の炎で浄化しよう、といった信仰を持っているのだろう。

 当然ながら、この手の宗教は危険すぎるので、グルディアでもやはり取り締まりの対象になっているはずだ。

 ノーヴァルデアが言った。


 va kap yanbowa fog ku:fa:rescho.gow va nadum wonva cu?(私もクーファー信者と協力したい。だが、我々はどのようにすればいいのだ?)


 それから、相変わらずのグルディア訛りでアースラは説明を始めた。

 現在、グルディアではクーファー神はかなり弾圧されているという。

 ubodoという神の騎士たちがクーファー信者を探し出し、処刑しているのだそうだ。

 このままではクーファー信者の未来はないかもしれないと危機感をつのらせていたところ、ある日、神託が下った。

 アスヴィンの森に潜むゼムナリア信者たちのなかに、半アルグがいる。

 その半アルグをまず、グルディアに導かねばならないという。

 彼はいずれ死と破壊の王になるかもしれない、神々に選ばれた男だというのだ。


 zemno ta zaglima leks...(死と破壊の王……)


 そうつぶやきながら、ノーヴァルデアがこちらを見た。

 アースラの話に出てきた半アルグが誰か、考えるまでもない。

 この自分、モルグズだ。

 どうも神々の世界では、モルグズはすでにかなりの有名人になっているようだった。

 いまのところ、ゼムナリアとナルハインは直接的にかかわってきた。

 そして新たに、クーファーという物騒な神が、間接的に接触をはかっている。

 しかし、なぜグルディアに行かねばならないのか、理由がわからない。

 その点をノーヴァルデアが訊ねると、アースラはかぶりを振った。

 赤毛の髪が揺れる様が、妙になまめかしく思える。


 sxalba ned.qu:fa: zeros yujugu bal.(しりゃない。キューファー神がわだしに告げた)


 つまり、彼女が神託を受け取ったようだ。

 

 to un kul vete colsa cu?(あなたは一人だけでここに来たのか?)


 ya:ya.turxeva asbinma danwelzo.(そうよ。アスビンたい森林を通ってきた)


 さすがに、モルグズは絶句した。

 この魔獣が至るところに徘徊する森を、彼女はたった一人でやってきたというのだ。

 信じられない、と言いたいところだが、一見するとただのグルディア美女に見えるこの女性は、只者ではない。

 おそらく、クーファーという神の与える法力も、きわめて攻撃的なものなのだろう。

 それで魔獣を撃退しながら、この魔の森を通ってきたのだ。

 だが、グルディアには行きたくない、というのが正直なところだった。

 グルディアに行くということは、ヴァルサの死んだ土地から離れる、ということになる。

 あれから彼女の遺体がどうなったかは、わからない。

 ただ、イシュリナスの騎士たちのことだから、相当にひどい扱いをしているだろう。

 正義の神を名乗りながらあれだけ冷酷なことが出来る連中なのである。

 できれば、亡霊でもいいからヴァルサに会いたいと何度、念じたかわからない。

 だが、彼女の霊は残らなかったようだ。

 果たして彼女の魂はどこに行ったのだろう。

 生と死の秘密だけは教えられない、とゼムナリアは言っていた。

 この世界にも死後の世界があるかどうかは、実際には人々には誰にもわからないのだ。


 morguz.to alvot fog gurudiasa cu?(モルグズ。お前はグルディアへ行きたいか?)


 ノーヴァルデアの言葉にしばし考え込んだ。

 なるべくならヴァルサの死んだ地の近くにいたいというのが、やはり本音ではある。


 eto rxo:bin yuridgurpuzo qu?(あなた、まじょうが怖いの?)


 アースラの言葉に、かっとなった。


 eto ned! zemgev sud u:limbalwos.(違うっ! 俺は鱗熊を殺したこともある)


 dadum qu?(どぶやって?)


 tenev lenartis ta yuridustse.(長剣と魔術を使ってだ)


 明らかにアースラは驚いていた。


 eto go+depe! lokyiba go+zun reysuzo!(すごぴ! 私は強い男が好くぃよ!)

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