5 sxalto tom kads wob wons no:valdeale cu?(お前の父がノーヴァルデアになにをしたか知っているのか?)

 no:valdea vowa fa foy cajova vol dog.(ノーヴァルデアは俺たちを救うためにやってくるかもしれないぞ)


 しばしネス伯爵は沈黙していた。


 ers fa foy.gow reysi sxuls ned no:valdeama ya:zo.betnas fa saz bac zemrariares hxufas nxal voz.(かもしれない。だが人々はノーヴァルデアの存在を知らない。もしゼムナリア信者が我々を襲ってくるなら、彼らを倒す)


 すでにその対策も想定しているようだ。


 no:valdea yujuwa fa foy reysile era nes konrxucsma u:klama resa.(ノーヴァルデアは自分がネス伯爵の一族の人間だと人々に言うかもしれないぞ)


 wova fa ned.lakava kadsuzo.ijusova nes ma:sema vanmiszo dog.(しないよ。彼女は父を愛している。だからネス家の名誉を守る)


 vanmis?(名誉)


 さすがに苛ついた。


 sxalto tom kads wob wons no:valdeale cu?(お前の父がノーヴァルデアになにをしたか知っているのか?)


 いまはネス伯爵を敵に回してもなんの得にもならないというのに、自分でも驚くほどモルグズは怒っていた。


 ya:ya.ajafav ci.no:valdea zobgan aviga del colnxe.(ああ、推測は出来る。ノーヴァルデアはここで地獄のような暮らしを続けていたんだ)


 colnxe cu? cod ers se+pitnxe cu?(ここで? この部屋でか?)


 ネスは伯爵は暗い輝きを帯びた黒い目で部屋を見渡した。


 ers colnxe.gow ers mig sxa+guce reysi sxuls temsuzo.aldea kap sxala ned.kads zemges re zemnarisma zeresale.aln reysi kozfis jodle.now ers ned o:zura.(ここで、だ。だが真実を知るものはとても少ない。アルデアも知らない。父はゼムナリアの尼僧に殺された。そうみんな信じている。でも、嘘ではないな)


 自虐的な笑みをネスファーディスは浮かべた。

 この伯爵家は呪われているのだろうか、とすら思える。


 yuridresi chasogo dermozo.gow dermo erig ned.(魔術師たちがdermoを調べた。だがdermoではなかった)


 そこでようやくdermoの意味を理解した。

 「呪い、呪詛」といった言葉なのだろう。

 凶事が起きれば魔術、あるいは神々の力に原因を求めるのがこの世界の常識なのだ。

 さきほどネス伯家が呪われていると言ったのは、あくまで比喩である。


 vekav ned kads nafet li wobzo.erig van kads,erig van sxumreys.ku+sin lakes viz ta aldeazo.yuridresi losxugu dig bac hxades re nxal hosle.(父がなにを考えていたかはわからない。彼は良き父であり、良き領主だった。普通に私とアルデアを愛していた。もしホスに憑かれていたら魔術師たちが気づいたはずだ)


 ネス伯爵家の闇は、考えていた以上に深いようだ。

 しかもイシュリナス寺院にすでにこの秘密は知られているらしい。

 どんな手を使ったのかは知らないが、よくここまでイシュリナスの僧侶たち相手に、ネスファーディスが自分たちを守ってくれたものだと思う。

 結局、ノーヴァルデアがなぜあんな目にあったのかは、死んだ父親しか知らない、ということのようだ。

 だが、人々は「ゼムナリアの尼僧により先代領主が殺された」と信じている。

 いみじくもネスファーディスの言ったとおり、それは嘘ではないのだが、まさかその尼僧が領主の娘だとは人々は想像もできないだろうし、また信じるはずもない。

 人間は自分の信じたいものを信じる、というのはカエサルの言葉だったろうか。

 

 vekeva.cod cu+cha fowuwa.(わかった。この話は終わりだ)


 それを聞くと、なぜかネスファーディスは真剣な眼差しでヴァルサのほうを見た。

 なぜ自分に、と彼女が不思議そうな顔をする。


 un kul ya: ko:radzo cajos morguzuzo.varsa foresa,gachig sekito fog vam cu+chazo.(一つだけモルグズを救う方法がある。ヴァルサforesa、しっかり私の話を聞いて欲しい)


 foresaという言葉は初めて聞く。

 resaは女、女性だがその前にfo-がついているところからして、これは女性への尊称のようなものではないかと思った。

 fo-が語頭につく単語は良い意味が多く、du-と対になっている気がする。

 foresaは日本語で言うお嬢さん、英語のladyのようなものだろう。


 foresa....va era?(foresa……私が?)


 困惑と喜びが微妙にヴァルサの表情に混じっている。

 なぜか、酷く厭な予感がした。


 varsa foresa,sxulv lakato del fen morguzuzo.kul cajoto ci azuz.(ヴァルサforesa.あなたがモルグズを愛していることは知っている。あなただけが彼を救えるんだ)


 一体、ネスファーディスはなにを考えているのだろう。


 isxurinas zersef yas vanmiszo.tits sebos fen tse za:ce zemnariaresma asroyuriduszo.zemnariaresa ega: un.dewdalg ye: ned.hi+sa era a:mofe yatmi dog.(イシュリナス寺院には名誉がある。ゼムナリア信者の悪い火炎魔術師を処刑することで彼らは名誉を得る。ゼムナリア信者は一人だった。半アルグはいなかった。噂には間違いが多いからね)


 背筋が凍りつくような感覚がやってきた。

 ネスファーディスがなにを目論んでいるかは明らかだ。

 彼はヴァルサ一人を生贄に差し出し、モルグズの身柄は自分で預かるつもりなのだ。

 一時的にでもこの男に好感を抱いた自分が馬鹿だった。

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