11nesxerika era zerosa.era sxo:la ta ne+sxala.(ネシェリカは女神よ。交易とne+sxalaの)

 nesxerika era zerosa.era sxo:la ta ne+sxala.(ネシェリカは女神よ。交易とne+sxalaの)


 ne+sxala?


 vo cuchav tsal.yujuv tsal na:fazo.vekato ci cu?(私たちは話し合う。考えを言い合う。わかる?)


 理解した、かもしれない。

 ne+sxalaというのは、おそらく意思疎通、のことだ。


 nesxerikama zertiga denis sxu:luzo yerce zerosefle.zereys tenas ci jod zertigazo.(ネシェリカの寺院は知識を遠い寺院へ伝える。僧侶はそのzertigaを使える)


 そこで、ようやくヴァルサの言っている意味の重要さに気づいた。

 つまり、ここはセルナーダの地における通信施設なのだ。

 どの程度まで遠くまでかはわからないが、ひょっとしたらネシェリカ寺院は、一瞬で情報を遠隔地に伝えることがきできるのかもしれない。

 もしそれがセルナーダ全土に広まっているとしたら、情報の伝達速度はとんでもないことになる。

 ある意味で、前近代社会と現代の最大の違いは、情報の伝達速度の差といってもいい。

 しかし、もしこうした神の力があるなら、その差はなくなる。


 nesxerika zersef ers yapc narkilsma so:rolle.(ネシェリカ寺院は戦争のとき安全なんだよ)


 それはそうだろう。

 この寺院を確保すれば、外部との通信ができる。

 軍隊にとっては最重要の戦略拠点かもしれない。

 だからネシェリカ寺院を敵にまわすような破壊行為や略奪は、たぶん厳禁だろう。

 いままでの常識というものが、どんどん頭のなかで壊されていく。

 この世界が非常識で無茶苦茶、というわけではない。

 ここにはかつての地球とまた別の常識が存在しているのだ。

 ネシェリカ女神を怒らせたら遠距離通信は不能になるだろう。

 率直に言って、怖くなってきた。

 この世界のことを理解すればするほど、いままでの常識が破壊され、自分の行動が正しいのかどうかわからなくなってくる。


 tom caf era za:ce.(顔色が悪いよ)


 mende era ned,(問題ない)


 モルグズは笑った。

 笑うしかなかった。

 ここがどんな世界であれ、必ずヴァルサを守る。

 そう誓ったのを、もう忘れたのか。

 しかし、実際に歩き回ってみると予想よりずっと小さな街だ。

 人口はさすがに千人は超えているだろうが、それから先はわからない。

 街道からも外れた地方都市、なのだろう。

 ソラリス寺院やアシャルティス寺院のまわりには、ヴァルサが行きたがらなかった。

 とにかく魔術師は僧侶のいる場所は苦手らしい。

 問題は、これからだった。

 本音をいえば、イシュリナスという面倒な神を信仰するこのイシュリナシアからは出ていきたい。

 とはいえ、グルディアに行くのもヴァルサの猛反対を受けそうだ。

 イオマンテも彼女は嫌っている。

 安息の地が、そう簡単な見つかるとは思えない。

 そんなモルグズをよそに、ヴァルサは彼女なりのこの小さな街を楽しんでいるようだった。

 彼女もたぶん、あまり都市部には慣れていないのだろう。

 いままでの過去から推測すれば、それくらいのことはわかる。

 それにしても、農村と都市部では、予想を超えた格差が存在した。

 農村での土にまみれた生活とここは異世界としか思えない。

 都市部の住民が農村の住人を馬鹿にする文化は地球でも存在している。

 街の住人からすれば、農民たちは土で汚れた、田舎者といった感じなのだろう。

 褐色の、奇妙なものがこちらに近づいて来たのはそのときだった。


 pxunus era!(pxunusだ!)


 半ば呆然として、モルグズはそれを見た。

 人間の子供よりも少し大きなくらいの、謎の獣が、それなりに勢いよく跳ねている。

 最初に連想したのはカンガルーだった。

 しかしより耳が大きく、太っており、なによりふてぶてしい面構えをしている。


 cod to:js kap fitos pxunuszo.(この街もpxunusを飼ってるのね)


 ヴァルサが愉しそうにつぶやいたが、意味がわからない。

 よく見ると、背後から何匹ものpxunusとやらが跳ねてきた。


 pxunus ers!


 子供たちは笑っているし、大人たちもやれやれといった顔をしている。

 地球の生き物でたとえれば兎、それも相当に大きなものだ。

 おそらく三エフテ(約九十センチ)ほどの大きさはあるのではないか。

 ひょっとすると、と思った。

 あれは「この街で飼われている」のかもしれない。

 中世ヨーロッパでも、豚が都市部で家畜として飼育されれていた。

 豚は雑食でたいていのものを食べる。

 たとえば野菜の皮などの人間の食べられない部分、また傷んだ肉や魚を食べても平然としている。

 つまりいわゆる生ゴミを餌として食わせていたのだ。

 もちろん、いざというときはこうした豚は食料になった。

 それと同じ理由で、pxunusというのは飼われているのかもしれない。

 だが、危なくはないのだろうか。

 結構な速度でpxunusたちは跳ね回っている。

 そのとき、pxunusと一緒に駆けていた一人の男の子が転んだ。

 まだ五、六歳程度に見える。


 ers jabce!(危ない!)


 誰かの叫び声を聞きながら、子供にむかって後続するpxunusが突っ込もうとするところが見えた。

 体が勝手に動いていた。


 pxunusにむかって低い姿勢のまま、体当たりをかける。

 激しい衝撃がきたが、それで向うが跳ね飛ばされた。

 そのまま、子供も庇うようにしてpxunusたちが去るのを待つ。

 男の子は、なにが起きているのかわからない、といった様子だった。


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