8 nadum zerfayuv zersefle cu?(どうやって寺院に入信するんだ?)

 wob ers vim gardozeros cu?(俺の守護神はなんだ?)


 nomil tufa yato ned gardozeroszo.(たぶんあんたに守護神はいない)


 それはそうかもしれない。

 この世界にやってきて、まだ寺院などに足を踏み入れたこともないのだ。


 nadum zerfayuv zersefle cu?(どうやって寺院に入信するんだ?)


 tufa tavato re zerosefle zerfayuto fog.nato ci zerfayle vatito nxal.(あんたは入信したい寺院に試される。成功すればzerfayになれる)


 どうやらzerfayというのは入信者、信者、そのような意味らしい。


 gow tom tarmas ers ned cod judnikma tarmas.teg vekava ci ned zerfayuto ci.(でもあなたの魂はこの世界のものではない。なので私はあなたが入信できるかわからない)


 tegとは「なので」のように原因を意味する後置詞のようなものだったはずだ。

 二番目の文では、それがなんと語頭に来ている。

 前に省略している主語「私は」の後ろについた、という考え方もできるが、ひょっとすると後置詞らしきものの位置は意外とあちこちに動かせるのかもしれない。

 いまのはまるで接続詞のような使い方だ。

 そもそもSVO語順の言語に後置詞があまりないのは、それだと後置詞の位置が遠くなりすぎ、もとの意味がわかりにくくなるからなのだ。

 たとえば普通のセルナーダ語の語順では「俺は眠いので寝る」はsxiv erv sxu:pin teg.となる。

 「(俺は)寝る、(俺は)眠い、ので」というわけだ。

 だが後置詞の位置を変えられるとしたら、sxiv teg erv sxu:pin.つまりは「(俺は)寝る、ので(俺は)眠い」となり、日本語にすると珍妙な語順になるが、sxivという動詞の直後にその原因を意味するtegがきて、そこからerv sxu:pinという理由を説明するすっきりとした文章になる。

 何度か似たような後置詞の使い方を聞いた気がしたのが、こういうやり方もあるらしい。

 結構、いろいろと緩い、というと語弊があるが、文法的には自由度の高い言語に思える。

 たとえばセルナーダ語は基本的には、まず文の主節がきて、次に従属節がくる。

 主節はその文章の主要部、いまの例でいえば「(私は)寝る」だ。

 その後ろの従属節が「眠いので」となる。

 普通、たとえば印欧語族の言語などはこの主節、従節は時制を一致させたり、いろいろと面倒なとりきめがあることが多い。

 セルナーダ語はそのあたりが、わりと適当なのだ。

 いままでも主節と従節で時制が違ったりしたことは何度もあった。

 さらにいえば、ヴァルサの話を聞いていると、名詞の単数形と複数形の区別がかなり曖昧なこともある。

 なにしろすでに、数によって動詞が活用しなくなっているので、この言語からは単数と複数の概念をわける意味が消失しつつある、と考えるのが自然だった。

 あと数百年もすれば、単数、複数は日本語のように比較的、どうでもいい扱いになる可能性が高い。

 そのわりには一人称でも、火炎系一人称、つまり男のvisと大地形、女性のvaはしっかり区別し、活用まで変わる。

 こういう言語は地球での例をあまり知らなかったが、そういうこともあるのだろう、としか言いようがなかった。

 なぜこのような現象が起きたのかを考えるは言語学者の領分であり、いまはとにかく生き抜くことだけを考えなくてはならない。

 あの、おぞましいアーガロスの悪霊の姿を自然と思い出す。

 この街にまでついてきたのだから、地の果てまでも追いかけられるかもしれなかった。

 しかし悪霊にいまのところ陽光だけを味方につけるしかないのだ……。


 solaris zersef ers!(ソラリス寺院だ!)


 なぜこんな簡単なことを思いつかなかったのだろうとモルグズは思ったが、ふかふかの白パンを頬張っていたヴァルサが、眉根を寄せた。


 maghxu:dil jatiya ci tic ned solaris zesosefle.(悪霊はソラリス寺院に勝てないはずだ)


 それを聞いて、ヴァルサが目を白黒させた。


 vomova savu:r! solaris zerosef mogowa del yuridreszo!(待って! ソラリス寺院は魔術師を憎み続けているのっ!)


 そういえば特に魔術師はネルサティア系の神々から嫌われているという話があった。


 wam ers cu?(なんでだ)


 しばし沈黙していたヴァルサが、やがてため息をつくと言った。


 solarisma zereysi kozfis teg yuridres uld gis zerosima sindice tigazo.(ソラリスの僧侶たちは魔術師が昔、神々の秘密の力を盗んだと信じているから)


 まったくの初耳である。


 tegnum mogos voz.(だから彼らは私たちを憎むの)


 さすがに考え込んでしまった。

 ネルサティア系の神々と魔術師の対立は、予想以上に深刻らしい。


 solaris ers nersatiama zerosima mans zeros.(ソラリスはネルサティアの神々のmans zerosなの)


 mansは「中央、中心」というような名詞だったはずだ。

 日本語にするならたぶん「主神」だろう。


 zavasum cajos ned voz.jod ers solarisma zereysi.(奴らは私たちを絶対に助けない。それがソラリスの僧侶どもよ)

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