14 ta yuridusma maghxu:dil tena ci yuriduszo.(そして魔術師の悪霊は魔術を使える)

 mazefa:r! varsa!(起きろ、ヴァルサっ!)


 nmmm....


 a:garos yeg! a:garos ers!(アーガロスがいた! アーガロスだ!)


 a:garos....a:garos cu?


 途端に、一気に眠気が吹き飛んだのかヴァルサが起き上がった。


 morguz...jumite za ju:mzo cu?(モルグズ、あなた悪い夢でも見たの?)


 jumirは「夢見る」という意味の動詞だ。

 

 ju:m era ned! had a:garos erig!(夢じゃねえ。あれはアーガロスだった!)


 そのとき、ヴァルサがなにかに気づいたように、肩を小刻みに震わせた。

 明らかに、恐怖している。


 maghxu:dil era foy.(maghxu:dilかもしれない)


 mag-が語頭につく時点で、ろくでもないものであることだけは確かだ。

 意味はほぼ理解していた。

 悪霊、邪霊の類をさす単語だろう。

 そういえば、死の女神は妙なことを言っていなかったか。

 この世界では、強い感情をもって死んだ者の残滓が残るとか、そんな感じのことを。

 アーガロスは本人にとっては無念の死を遂げたと言ってもいい。

 生贄を集め死の女神に異界の知識を乞い願い、その挙句この肉体に宿ったモルグズに殺されてしまったのだから。


 mevte ci maghxu:dilzo cu?(あなたにはアーガロスが見えたの?)


 mevi ci.(見えた)


 なにやらヴァルサは考え込んでいた。


 yato foy yuridusma layfaszo.(あなたには魔術の才能があるかもしれない)


 さすがに唖然とした。


 kaksiv fog vel.(説明してくれ)


 maghxu:dil ya: yuridbemnxe.(悪霊はyuridbemにいるの)


 yuridbem wob era cu?(yuridbemってなんだ?)


 yuridがつくからには、なにか魔術に関係した言葉ということはわかる。


 yuridbem ers yuridusma judnik.junlis cod metsbemle(yuridbemは魔術の世界のことよ。このmetsbemに重なっている)


 metsbemの意味は訊かずともわかった。

 metsは物、物質などを意味する名詞なので、さしずめ物質の世界、あるいは「物質界」とでもいうようなものだろう。

 対してyuridbemは「魔術界」だ。

 そういえばbemは「面」のような意味だった気もする。

 物質面、魔術面、という表現も可能だ。

 

 ta mavs ci yuridbemzo reys yas yuridusma layfaszo wis.(そして魔術の才能がある者は魔術界を見られるの)


 gow maghxu:dil socum duftega.(でも悪霊はすぐに消えたぞ)


 kap sxafum vekeva ci ned.gow kozfiva morguzuzo.maghxu:dil ya: jalnova fog ned now.(私も詳しくはわからない。でもモルグズを信じる。認めたくないけど、悪霊はいる)


 そこで、ヴァルサがアーガロスを悪霊としか言っていないことに気づいた。

 彼女にとっては、その名を口にするのも厭なのだろう。

 まだ「悪霊」と呼んだほうがまし、ということだ。

 しかし、魔術師の悪霊相手に、自分たちになにができるのだろう。


 wob yas ko:rad cu?(なにか方法はないのか?)


 betnas ci voy ner yuridresma yuridyurfatse nxal.(偉大な魔術師の呪文でなら退治できるかもしれない).


 かもしれない、というときは普通ならfoyを使うが、nxal、つまり仮定の場合はvoyになる。


 sxalto li honef sxulreysuzo cu?(そんな知り合い、いるのか?)


 sxala ned.(いない)


 ヴァルサは疲れたように首を横に振った。


 maghxu:dil wob wona ci cu?(悪霊にはなにができる?)


 maghxu:dil wona ci a:mofe wognozo.ega metszo.ediya.hxada reysule....(悪霊はいろんなことができる。物を動かす。音をたてる。人にhxadaする……)


 hxadaという音はhxu:dilとかなり似ているが、意味はよくわからない。

 それを察したらしく、ヴァルサが説明した。


 hxadar yeniya...,,hxu:dil junliya fen reysucho.(hxadarは……霊が人と重なることを意味するの)


 つまりは、憑依されるということのようだ。

 だが、さらに恐ろしい言葉がヴァルサの口から発された。


 ta yuridusma maghxu:dil tena ci yuriduszo.(そして魔術師の悪霊は魔術を使える)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る