66-1 生徒会の旅
「一体どうなってるんだ?」
わけがわからない、雫が瑞希の……元副会長のスパイ?
「お兄ちゃん……落ち着いて」
俺の隣にいた栞が、そっと俺の手を握る……。
「裕君、そもそも生徒会って、別名長谷見ハーレムでしょ? 雫さんは貴方よりもお姉さんを初めから選んでいたでしょ?」
「そ、そんな物は存在しない! それを言ったらセシリーだって元々栞狙いだったでしょ?」
自分で言うなと突っ込みたい気持ちを押さえ、俺は生徒会長にそう言い返した。
「せ、せしり?」
「かいちょうううう……」
誰だっけ? って言う顔をしている会長に向かって、セシリーは大昔のアニメのキャラの様に両目から涙をぶら下げて、人差し指をツンツンとしながら会長に、抗議した。
「ハイハイ、とりあえず後でね」
会長は席から立ち上がると、セシリーに近付き、頭にはめて、アニメのキャラの様に泣けるおもちゃを引っ張って奪い取ると、セシリーの頭を軽くポンポンと2回叩き、再び席に戻って俺を見る。セシリーの扱いって……。
「まあ、前からおかしいとは思ってたんだけどねえ」
会長はしみじみとそう言った……。
「そ、それにしても……そうだ、今回どうやって知ったんです? 雫が何を持って来るのかとかも」
「ああ、それは栞さんが調べたのよ」
「栞が?」
今回の件、要するにこうだった。
栞はこのコンペで絶対に勝つ為に裏から手を回した。そこで元副会長が裏から手を回した人物と栞の友達とバッティングした。
以前なら絶対に口を割らなかっただろうが、辞めてから結構時間経った今、元副会長の力はそこまで及ばなく、あっさりと情報が栞の元へと入った。
それを知った栞は急遽会長と相談し、全員情報と同じチョコレート(見た目だけ違う)にして、このコンペでスパイを炙り出そうとなった。
ある程度雫ではないか? と見当はついていたが、今回それが決め手となったとの事。
雫が、これだけは勝たないとと焦った為にボロが出てしまった様だった。
「元副会長、市川瑞希と茜が兄妹だってのは?」
「半分偶然ね、スキー場で貴方と会ったのは勿論偶然よ、でもあんたらとあいつもが偶然同じ学校に通っていた。辞めてからもあいつがやたらとこの学校の事を気にしてるみたいだったから調べさせたの、そしたらあんたら兄妹との事が出てきて、まあそれで益々奪ってやろうって思ったのは確かだけどね~~」
茜は壁に寄りかかり腕組みをして、めんどくさそうにそう言う。
「じゃあ、俺への事は、瑞希への当て付けって事か?」
「あら、勿論好きよ、愛しているわよ? ダーリン」
そんなめんどくさそうに言われてもにわかには信じがたいって、いてえ! 栞! 俺の尻をつねるな!
「まあいい、雫とは後で一度俺からキチンと話してみる……それで、今回のコンペは中止って事でいいのか?」
「な、なに言ってるのお兄ちゃん! 私が2位なんだから繰り上げで私でしょ!」
「「ぶううううううううう」」
栞がそう言った瞬間ずっと黙っていた生徒会の面々がブーイングする。
「な、何でよ! 兄妹なんだから何も問題は」
「でも栞さん、裏から手を回したって聞いちゃったし、駄目かなあ?」
「会長、そんなあああああああ」
栞が床に座り込んだ……まあ、仕方ないよなあ。
「あら、呑気ね、他にもあいつの、瑞希の手の者がこの中にいるかも知れないのにねえ」
茜がケラケラと笑いながらそう言う……本当に性格が悪いというか……。
「わわわわ、私じゃなかですよ!」
茜に言われセシリーが突如慌てる……いや、確かにあやしいいけど……瑞希ってバカ嫌いな気がする……。
「そうね……じゃあ、一致団結するべく……皆で行きましょうか」
「皆で?」
「そう、実は去年の予算、元副会長が出したお金が結構余ってるのよねえ、何度か返金しようと学校側からも私からも瑞希の関係者に声をかけたんだけど、いらないって言われちゃって、だから今回の予算に計上しちゃった」
会長はテヘペロと可愛いらしくピンクの舌を出す。
「いや、それって……いいのか?」
「まあ迷惑料って事で」
「まあ会長がそうおっしゃるなら」
「えええええええ! 嫌! 私がお兄ちゃんと二人きりで子作……むぐう」
「しねえよ!」
俺は慌てて栞の口をふさぐ、次警告来たらヤバいんだから……。
「じゃあ、決まりね、茜さんも行くでしょ?」
「ふん、あいつのお金ではいかないわ、あとショボいホテルも嫌だから、まあ……勝手についていくわよ」
「行くには行くんだ……」
「なんか言った?!」
「いえなんにも……」
「それでえぇ、どこにぃ行くんですかぁ?」
さっきまでいつもの様に気絶していた麻紗美が復帰して会長にそう聞いた。
「私達が行くのは!…………長崎よ!」
「「長崎?」」
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