65-6 栞のバレンタイン


 間違いない……。


 私は確信した。


 これは試されていると……。


 学校からの帰り道私は一人家路につく……お兄ちゃんは先に帰った……帰るように言った。


 長くなりそうだったから。


 私はお兄ちゃんを先に返した後、生徒会室で今回の経緯を聞いた……。


 

今の生徒会のメインの仕事は修学旅行先の選定、そもそも生徒会、生徒会長はそれがメインで生徒から選出されたと言っても過言ではない。


 個人個人の意見ではまとめられない、かといって学校側から押し付けるのは違う、と言うことで生徒の代表である生徒会長が行く先を決める、それがメインの、その為の生徒会長選挙だった。


 生徒会長の絶対なる権限、学生の高校生でのメインイベントである修学旅行。

 予算内での全ての権限は生徒会長にある。


 ある意味生徒会長は修学旅行を人質に取っている……それが生徒会長の権力となっている。

 

 そして前回の修学旅行先はイギリス……通常なら予算を遥かにオーバーしてのの修学旅行先……しかし去年は元副会長がいた、元副会長のコネやお金を使い格安での修学旅行、海外旅行となった。


 イギリス旅行なんてとんでもない費用がかかる、それをやってのけた元副会長……修学旅行は大成功に終わった。


 そしてその影響は今でも続いている……そう、いまだに3年生には副会長の影が見え隠れしている。あの人の人気は今でも根強い。

 

 元副会長と初めて対峙した時、生徒会での仕事を依頼された。会長を困らせようとしていたあのボランティアの一件。

 私は彼女の計画を簡単に崩した。あの時の彼女の目は今でも忘れられない。


 そしてあれから……私の事を試す様な事案が事ある毎に発生した。そして異常な迄にお兄ちゃんに近寄る女子……そのほぼ全てが生徒会に属している。


 まあお兄ちゃんは、格好いいしぃ~~魅力的だし~~女の子が集まるのは分かる……でもその殆んど総てが生徒会に集まった。

 偶然? それはさすがにおかしい気がする……。


 唯一生徒会に属していないのは茜さん。


 だから今回は関係無い……かと一瞬思った。

 

 しかしそれは違っていた、だって茜さんと私の朝の話から今回のコンペが立ち上がったのだから……。

 あの茜さんがわざわざそれを生徒会の誰かに言う筈がない。


 そして私は考えた、その総てを、今までの事を考慮した結果私は確信した。


 間違いない……生徒会には元副会長のスパイがいると……。


 誰なのか……それはまだわからない……容疑者は全員だ。


 そして茜さんと元副会長は何かしら繋がっている……敵か味方かわからないけど……。


 それにしても元副会長の目的がわからない…… 


 会長なのか? 茜さんなのか? お兄ちゃんなのか? 私なのか?


 私への復讐? だとしたらこんな手間のかかる事なんてしない筈……。

 もっと直接的に攻撃すればいい……。

 それこそ……今すぐにでも私とお兄ちゃんの関係を学校内に広めればいい。


 今なら対処しきれない……元副会長の影響が根強い3年生には、私の力は及びきれていない……この間の生徒会選挙で思わされた。


 その噂が広まり学校側を動かせば……私とお兄ちゃんは退学……迄いかなくても……停学もあり得る。

 そして親の呼び出し……私とお兄ちゃんは引き裂かれる……。


 元副会長なら可能だ……彼女なら出来る……私が一番恐れている事だ……。


 勿論それは私が何もしなかったら……と、言うのが前提だけど。


 その警戒は常にしている。

 彼女が元副会長が動けば私に伝わる。


 私の一番大切な物、お兄ちゃんとの生活を脅かす者は叩き潰す。


 私のあらゆる力を使って……排除する。


 元副会長との全面戦争も辞さない……。


 全面戦争になるには彼女が直接出て来なければ発生しない。

 彼女が直接手を出さなければ、私との全面戦争での勝利はない。

 

 そして彼女は自分の手を直接汚す様な事はしない……。


 それが唯一の救い……。


 今までの事も、今回の事も……様子見なんだろうか?


 裏で動いている事は、なんとなく伝わってくる。


 そして私の身近にそれを元副会長に伝えている人物が居る。


 それは一体誰なのか?


 そして茜さんと元副会長の関係は……。


 


「まあそんな事より……今回のご褒美……えへ、えへへへ、えへへへへへ」


 お兄ちゃんと旅行……二人きりでの……美月ちゃんにも邪魔されない……恋人同士になって初めての旅行。


 今回ばかりは感謝しよう……このコンペに感謝しよう……。


 お兄ちゃんとの……初夜……えへへへ、ファーストキスも捧げた、お兄ちゃんからキスもしてもらった、私の初めてを全部お兄ちゃんに捧げる、捧げられる……。


 私は確信している……このコンペの勝利を……お兄ちゃんは渡さない……どんな事をしてでも勝つ……お兄ちゃんとの旅行の為に、私の初めてを捧げる為に。

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