65-5 栞のバレンタイン
「また遊ばれてる……」
生徒会は一体なんなんだ? 完全に私物化してるじゃねえか……まあ前生徒会がそもそも市川瑞希の私物化だったんだから今に始まった話じゃねえ……てか市川瑞希……懐かしい。
半年も経っていないのに……そもそも入学して1年も経っていないのに……なんだかもう2年以上も前の気がする……。
ちなみに俺は今一人で帰宅中だ。栞はその他諸々の打ち合わせがあるらしく生徒会に残っている。どうやって生徒を決める等、不正は見逃さない! と俺に目で語っていた……。
「そう言えば……一人の時間って久しぶりだなあ……」
この間黙って茜の家(ホテル最上階)に行った罰なのか? ゆっくり一人で過ごせる時間が全くなくなった。
学校から家の往復は栞がべったり、家では栞と美月がべったり……それは休みの日も……俺の自由な時間は寝るまでの数時間だけ……買い物も一人で行かせて貰えない……ある意味軟禁状態が続いている……。
俺は確かに妹が好きだよ、そして……美月も大好きだ……その好きな人と一緒の生活を他人は羨ましく思うだろうけど……その相手は妹なんだ、小学生のいとこなんだよ!
手が出せる相手じゃないんだ……だから妹だけじゃなく、美月を呼んだのだけど……もう最近美月も可愛くて可愛くて……目に入れても絶対に痛く無い、それくらい二人が可愛くて……ああもう……。
もうね……本当……蛇の生殺し状態なんだよ……。
俺はまだ高校1年生なんだよ……○○したい盛りなんだよ……。○○は青春って入れておいてくれ……。
それにしての……美月も栞も可愛いんだよ……可愛すぎなんだよ……。
「うううう、俺だって発散したいんだああああ!」
「すれば良いじゃない」
「は?」
「すれば良いじゃない、妹とでも小学生とでも……生徒会長とでも」
「おおおお、お前!」
「はあい~~お久しぶり~~~」
「いいいい、市川瑞希!」
「あらフルネームでご紹介ありがとう」
俺の横に黒塗りの高級車を横付けして窓から市川瑞希がこっちを見て笑っている……。「忘れているだろうから言っておこう、市川瑞希が元生徒会副会長の時の生徒会長……現生徒会長でもある那珂川葵を洗脳した女!」
「あら失礼ね、洗脳とか、守っていただけよ私は」
「ああああ、突然の事で声が出ていた……って……よく言うわ!」
「ふふん……」
「お前……日本に帰って来たのか?」
「さあねえ、どうかしら」
「どうって……っていうか、また何か企んでるのか?!」
「別にいい」
「……会長には手を出すなよ」
「あら心外ねえ、心配しなくても、捨てたオモチャを拾う程落ちぶれてはいないわ」
「オモチャって……またそれか……じゃあ何しに来た」
「ふふん、前にも言ったでしょ? 貴方達の事は常に監視しているって……まあ少し気になってちょっと見に来たんだけどねえ……それにしても不思議なのよね……」
「不思議?」
「そう……何で貴方みたいなうだつの上がらない普通のどこにでも居そうな男に次々と女子が寄ってくるのか?」
「余計なお世話だ」
「すっかり生徒会が貴方のハーレムになってるじゃない」
「な、なな、なんでそれをって、いや、そんな物は存在しない!」
「どうだか……まさか次々とあんたに飲み込まれるとは思わなかったわね」
「飲み込まれる? は? どういう」
「まあ、こっちの事よ、じゃあ葵と……妹に宜しくね、出して」
「……妹? お、おい!」
妹って誰の事だと聞く間もなく神出鬼没の市川瑞希の乗った車はその場を後にする……妹に宜しく? 栞の事か? でも今の言い方は自分の妹に宜しくという感じだった。
市川瑞希の乗った車のテールランプが小さくなっていく……一体あいつは何を言いに来たのか? まさか栞を……。
「栞を……妹にする気か?」
自分で言ってて意味がわからなかった……どこかの妹狂いの作家じゃあるまいし、妹にするなんて出来るわけないし、栞がそれを認めるわけがない。
「とりあえず……聞かなかった事にしよう……」
あいつに関わるとろくな事が無い……とりあえず会長には黙っておかなければ……。
俺は3回頭を振って今の事を記憶から削除した。
「……本屋に行くか……」
久しぶりの単独行動……とりあえず欲求不満を解消しなければ……。
俺は今後始まる妙なバレンタイン競争も市川瑞希の事も今は忘れて駅前の本屋に向かう……久しぶりの俺の趣味の本を買いに……。
来たのだったんだけど……。
「お兄ちゃまあああ~~」
市川瑞希のせいで、そこそこ時間が過ぎていた為美月が帰って来てしまった。
しかもよりによって本屋のに入る所で見つかる。
あああ、また一人の時間が……俺の買い物が……。
「お兄ちゃま、一人で何の本を買いに来たの?」
「いや、えっと」
小学生には言えない本です!
「うーーん、成る程……ねえお兄ちゃま? 美月のお薦めはこれだよ?」
そう言って美月は漫画雑誌を一つ掴むと、俺にその雑誌を見せつける……や、やめてくれええ。
美月の持っている本のタイトルは……コミックL○……。
お、俺はロリコンじゃねええええええ!
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