65-3 栞のバレンタイン
茜さん対策は今夜にでも美月ちゃんと話し合うとして、今はお兄ちゃんの欲しい物、バレンタインの贈り物の方が重要だ。
私は気を取り直し、お兄ちゃんに聞いた。
「あ、あのねお兄ちゃん……バレンタインなんだけどね……今年は……その特別な年だからね、何かお兄ちゃんの欲しい物をプレゼントしようと思ってるんだけど……何かある?」
私がそう言うとお兄ちゃんは箸を止めて私をじっと見る……そして……お兄ちゃんの顔がみるみる赤くなっていく……え? な、何? どうしたのお兄ちゃん?
「い、いや……欲しい物……い、今は……ないなあ」
そういってお兄ちゃんは私から目を外し、またご飯をパクパクと口に……運べてない……箸が空回りしている……。
な、何? お兄ちゃんの欲しい物って何? 何でそんなに真っ赤になるの?
ま、まさか……。
「ふふふふふ、プレゼントを聞くなんて……貴女ってたいした事ないのねえ~~」
茜さんが紅茶を飲みながら私を見てクスクスと小バカにするようにそう言う……だって仕方ないじゃない……。
「……ね、ねえお兄ちゃん……何もないの?」
「えっと……それは……」
お兄ちゃんが私の顔をじっと見つめる……その目……あるのね欲しい物が。
「ダーリンの欲しい物もわからないなんて身内失格ね、やっぱりダーリン身内は私だけね」
「茜さんはわかってるの? お兄ちゃまの欲しい物」
「決まってるじゃない、それは…………ふふふ、危ない危ない言わされる所だったわ」
茜さんはテーブルから立ち上がると私の方を向いて言った。
「栞さん、どちらがダーリンに相応しいか、ダーリンの欲しい物を気に入る物をプレゼント出来るか……そうね、バレンタインの翌日のデート権をかけて勝負よ!」
「お、おい!」
お兄ちゃんが茜さんを止めようと立ち上がろうとする……が、それを制する様に私が先に立ち上がった。
「受けて立ちます!」
お兄ちゃんをかけての戦いに私が負ける筈はない、どっちがお兄ちゃんに相応しいかどっちがお兄ちゃんを愛しているか見せて付けて上げなければいけない!
「おーーい……栞……」
「美月も乗った! お兄ちゃまとデートデート、茜さんには負けない……」
美月ちゃんがリベンジにと立ち上がる。
「おーーーい、美月いいい」
「ほほほほ、私に勝てると思うなんて、お二人はお子様ねえ、あ、お子様か」
「あ、茜さんも同じ年でしょ」
「おばさん……」
「な、なんですって!」
「お兄ちゃまはロリコンなんだから、二人は美月に勝てないよ」
「おーーい」
「お兄ちゃんは私が好きなの! 邪魔しないで!」
「全て私が上だと言う事を思い知らせてあげましてよ」
「ふううう、この悪役令嬢が!」
「いや、あの、俺の意見を聞いて……」
「お兄ちゃんは黙ってて」
「ダーリンは口出ししないで」
「お兄ちゃま黙って」
「はい……はあぁ……またか……」
お兄ちゃんへの一番のプレゼントは何か、バレンタインレースが開幕した……
お兄ちゃんの一番気に入る物は一体何か?!
負けない、絶対に勝つ、お兄ちゃんの気に入る物をプレゼントしてそして……お兄ちゃんとデートして……そこで私を、私の身体を、全てを、お兄ちゃんプレゼントする!
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