65-1 栞のバレンタイン
「きゃああああああああああああああああああああああああ!」
朝、いつものように目を覚まし、壁にかかっているカレンダーをふと見つめると気が付いた。
既に2月に入っているのにカレンダーがまだ1月のままだった。
ベッドから立ち上がりカレンダーの元へ歩み寄り、ゆっくりと捲った瞬間私は叫んでしまった。
そう……私はここの所色々あったせいで、大変な事を見落としていた。
「まずい……そうだった……ああ、もう……2週間を切ってるって……いやああああああああああああ!」
部屋のカレンダーを2月に捲り忘れていたせいなのか? 私は大変な事を失念していた。
だって1月のお兄ちゃん格好良すぎて……つい……。
部屋に飾ってあるカレンダーは勿論私の手作り、過去のお兄ちゃんの写真を1年かけて選び抜き、その厳選した写真をスキャナーで取り込み、更にフォトショップで加工し、それを印刷所に持ち込んで作った私による私だけのお兄ちゃんオリジナルカレンダー。
12ヶ月全部厳選した写真なんだけど、特に4月のお兄ちゃん聖誕祭と1月、新年最初のお兄ちゃんがかなりお気に入りなので、この月は捲るのを躊躇ってしまっていた。
毎年お兄ちゃんのベスト12ショットを選ぶ大変な作業、今年も既に取り組んでいる。
いや、ううん、そうじゃない……それは私自身の為なんだからそれはいい、今は、そんな事はどうでもいい……そんな事よりこっちよこっち……私はそう言いながらカレンダーの花丸印を指差した。
お兄ちゃんとの大事なイベントにはこの花丸印が印刷されている。
〖2月14日バレンタインデー〗
大手を振って愛の告白を出来る女の子の一大イベント!
好きな人には勿論だけど、この日は妹がお兄ちゃんに、お母さんが息子に、愛を込めてチョコレートを贈っても良い日なのだ!
そして……去年までは……妹として色々と自重してきた。
ちなみに去年は最高級カカオを直接輸入し、お兄ちゃんの為だけにチョコレートを作り、さらに私の○を入れた……ただそれだけのなんの変哲も無いチョコレート……○の中は未成年の人は愛って入れて読んでね。
でも……今年は! 今年は違うの……今年……私とお兄ちゃんは付き合い、そしてこの度相思相愛になったのだ!
「つまりこれって、何でもして良いって事よね?!」
既に付き合っている、しかもこの間完全無欠の相思相愛になった。
さらにはキスも済ませた……その彼氏に私の彼氏に愛する彼氏に……彼氏……きゃあああああああああ…………
は! いけないいけない……久しぶりに異世界に……その彼氏に贈る初めてのバレンタインデーなの!
「とりあえず私を私自身を贈るのは決定として、何か形に残る物を贈りたい……」
裸にリボンを身体に巻いてお兄ちゃんにダイブは既に決定事項だからそれは置いておく……やっぱり今年は私とお兄ちゃんの愛の始まった元年、何で元号が〖兄愛〗じゃ無いのか?
そんな大事な記念の年だし、何か形に残る物をお兄ちゃんに贈らないと……。
一生の思い出に残るバレンタインデーをお兄ちゃんに贈らないといけない年なのに、なのになのに……。
そんな重大な事を忘れていたなんて……。
「私のバカあああああああああああああ!」
ああ、なんてバカなんだ私は……お兄ちゃんへのバレンタインデーの贈り物をたったの2週間弱で考えないといけないなんて……。
本来なら半年前から、ううん、4月から……いえ、去年から考えないといけないのに……。
「ごめんなさい……お兄ちゃん」
私は正座をしてノートを取り出すと『お兄ちゃん大好き』と書き始めた。
私はお兄ちゃんの事を少しでもないがしろにしたと思った時は罰としてノートに『お兄ちゃん大好き』と書き込む事にしている……今回は最悪なケースだから1万文字くらい書かなければ……。
『お兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好きお兄ちゃん大好き』
ああ、駄目……ダメダメ、駄目よ、こんな事してる場合じゃなかった……。
自分を責めるのは後にしなければ……。
「罰として書くのは後だ……今はそれどころじゃない」
後で罰として100万文字くらい書けばいい、大丈夫ヘボ妹作家が1年かけて書ける文字数だ。お兄ちゃんを愛してる私なら一瞬よ!
「時間が無い……今回は仕方ない」
こういう事って秘密裏に調べて驚かすのがセオリーだけど例えばお兄ちゃんが私の○を入れたセーターが欲しいとか言ったら時間がかかるし……未成年の人は○の中は愛よ愛! そう変換して読んでね!
「仕方ない……今回はそれとなく聞こう……ああ、時間が……まず朝ご飯作らないと……」
私は色々と考えながら朝食を作りにキッチンに向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます