53-8 生徒会長選挙

 

 とは言え、やはりやるからには勝ちたい、妹との放課後ティータイムの時間、俺の日常、ダブルベッドの回避、そして


「たまには兄として、妹に勝たなければ」


 いつも負けてばかりの俺だが……たまには勝たないと……

 でも俺が少しばかり会長に手を貸して勝てる相手じゃあない……


 でも……

「ここは一丁兄の威厳を見せつけてやるぜえ!」

  俺は気合いを入れて携帯を取り出した。




「美月~~~~♡」


『お兄ちゃま~~~~♡』


 生徒会室で電話した通り、夜に美月にかけ直す、え? プライド? そんなもんあのチート妹を相手にすると決めた時に捨てましたが何か?。




「で、何か勝てる秘策はあるのか?」

 美月と軽く世間話をした後に本題に入る。


『お兄ちゃまは何か考えてる?』


「えっと、とりあえず、会長だけじゃなく、メンバーの誰かも出馬させるとか?」

 会長と共に美智瑠を出馬させて二人で妹に対抗すれば行けるかも、美智瑠は主席入学っていう箔があるし、顔は多分うちの学校で一番可愛い、あの銀髪も何かこう凄く神聖な感じがするし、結構行けるんじゃないかなって



『お兄ちゃま、全然駄目だね』


「えーーーーーーーー」


『そんな事をしたら浮動票が二つに分散しちゃう』


「ふどうひょう?」


『うん、お姉ちゃまの友達組織票に対抗するには、お姉ちゃまの友達以外の浮動票を集めないと』


「ああ浮動票か、なるほど」


『お姉ちゃまの友達、特にクラスの女子や1年生の女子は殆どお姉ちゃまに入れると思うの、恐らく他の学年も半数近く票が入るんじゃないかな?』


「そうか……もうそれで3分の1位票が入っちゃうな……」

 そう考えると恐ろしい、恐らく2年にも友達は一杯いるだろうし……


『1年の男子、2年生の半数、3年生の8割位がが浮動票になると思うの』


「それを全部取れば勝てると、でも……どうすれば?」


『うーーん、正攻法ではお姉ちゃまに勝つのは絶対に無理ね』


「まあ、そうなんだよな」


『でもねお兄ちゃま、寧ろ選挙の正攻法なら行けるかも知れないよ』


「選挙の正攻法?」


『そう、公約を出して、学校改革をするの』


「改革うーーん、うちの学校って比較的校則甘いからな」

 制服だけど、着崩してもあまり怒られない、まあ極端な奴は言われるけど、少し位スカートが短くても、ズボンが細くても特に何も言われない。


『どんな学校にもヘイトって溜まってるから、まずそこを調べるのが良いかな?』


「ヘイトね」

 美月に言われた事をメモに取る。


『人気投票だと絶対にお姉ちゃまには勝てない、けど……現職生徒会長の強みってあると思うの、それに会長さんだってこの間の学園祭でもお姉ちゃまに次ぐ人気だったし、それにロイヤルファミリーの一員だしね』


「会長の人気も結構凄いんだよな、金髪美女の王女様だしな」


『学校の女王に対抗出来るのは王女だけって事だよ、だから他の人を候補に立てるのは駄目』


「まあ、そうなんだろうな」

 前の会長の方がどっちかと言うと女王様みたいだったけど、怖かったし……


『うん、まあどうせ改革って言って学校側と交渉しても、殆どは却下されるけどね』

 電話口でケラケラと笑う美月、相変わらず冷めてると言うか、学校を信用して居ないと言うか……


「おい~~」


『良いんだよお兄ちゃま、最終的には出来ませんでしたで』


「まあそういうもんなんだろうけど」

 大人の世界って感じで少し嫌だな。


『後は3年生の票をどう取るかが勝負だね』


「3年生?」


『うん、お兄ちゃまの学校の生徒会長選挙が事実上の人気投票になってるのは多分今の時期にやるからだよ』


「時期?」


『そう、学校改革も何も、3年生はもうすぐ卒業だからね』


「あ、そうか」


『1年生はお姉ちゃまが圧倒的に有利、2年生は同じ学年の会長さんが有利、そうなると3年生の票をどう取るかが勝負だね』


「なるほど!」


『でもお姉ちゃまの人気を考えると……美月もまだどうやれば3年生から票が取れるか分かんない』


「美月でもか……いや、ありがとう、ここまでヒントを貰えただけで十分、それは俺達で考えるよ」


『うん、選挙の勝ち方とかは方法はレポートにして後でファックスで送るね、3年生の票の取り方も何か思い付いたら電話するから』


「ああ、ありがとう」


『じゃあお兄ちゃまも頑張ってね、冬休み会えるのを楽しみにしてるから』


「うん、ありがとう美月、お休み」


『お休みお兄ちゃま』

 そう言って美月との電話を終えた、今回は美月はこっちに来ない、電話やファックスで指示をして貰う事にした。


 美月が言うには栞との勝負は、いかに人気投票から選挙としての戦いにシフトさせるかと、1年生男子、2年生、3年生の票を取るかに掛かって来るとの事。


「3年生……か」

 部活もやっていない俺に3年生との接点はない、しかも進学校では無いがほぼ全員が大学や専門学校に進学するうちの高校、夏休みが終わり最後の追い込み時期、今は生徒会長とかはっきり言ってどうでも良いと思ってる者が殆どだろう、もう半年も居ない学校で改革するから票を入れてくれと言ったところで、もう卒業だし関係ないって言われるのが落ちだ……


「まあとりあえず栞が動き出す前に、先に動いて票を確保しないとな~」

 俺達がいくらやった所で、妹がSNSで『よろ~~』って一発配信したら終了な気がする、まあそれをやるとは思えないが……


「一番の勝負所は、改革案でも無ければ、3年生の票集めでもない……栞のやる気なんだろうな」


 妹が本当に会長をやる気になったら、何をやっても勝てないだろう……


 俺は壁越しに隣の部屋に居る妹の事を考えながらベットに横になり、今日言っていた妹の言葉、そして美月の言葉を考えていた。


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