50-9 学園祭
「アンちゃん……」
「しーちゃん」
「雫ちゃん」
俺と妹が同時に名前を呼ぶ、そう幼稚園の時一緒だった雫ちゃん、俺に妹と母親以外でバレンタインチョコをくれた唯一の女の子。
「えっと、この学校に居たんだ」
「うん……」
「言ってくれれば良かったのに」
「は、恥ずかしくて……」
「恥ずかしいって何が?」
そう言うと雫は胸を隠す、ああ……
「えっとぉ、知り合い?」
俺と妹、雫の様子を見て麻紗美が聞いてくる。
「ああ、幼稚園の時一緒だった雫ちゃん」
もう10年以上前だから今一実感ないが、やはりバレンタインのチョコを貰ったせいか今でも覚えている。
「えっとぉ今、はせがわってぇ言ってたけどぉ?」
「ああ、字が違うんだよ、初めての初に清瀬の瀬に川で初瀬川」
「ふーん、アンちゃんって言ってたからぁ、親戚かと思っちゃったぁ?」
「そうなんだよ、初瀬川 雫と長谷川 栞 名前が似てるだろ? 幼稚園だと名札がひらがなだから尚の事ね、それに栞と顔も似てたんだよ、当時は栞と双子か? って言われてた、俺達3人兄妹みたいだなって、だから栞がお兄ちゃんって俺を呼んで、雫がアンちゃんって俺を呼んでたんだ」
「へーー、あ、本当だぁ、栞ちゃんにぃ似てるぅ」
入り口近くに居た麻紗美が雫を下から覗く。
「ひいっ……」
俯いていた雫は麻紗美に下から覗かれ小さな悲鳴を上げる……
「あ、ごめん~、恥ずかしがりやさんなんだねぇ」
雫は更にうつ向き顔を隠す……幼稚園、子供だから似てると思ってたけど……そうか今でも似てるのか……
「それで雫は何をしに、ここに来たんだ?」
俺達に会いに来たんなら何もここに来なくても教室に来てくれば良かったのに……正直ここにはあまり来て欲しくなかった……って言うかさっき何か言っていたけど……
「えっとえっと、あの、アンちゃんの噂を聞いて…………見に来たんだけど……やっぱりここは……アンちゃんのハーレムなんですか? もしそうなら……わ、私も……入れてください!」
顔を上げ雫は小声ながら精一杯出している様に俺達に向かってとんでもないないことを再び言った。
「そんな物は存在しねええええええ!」
ハーレムって何だよマジで、俺は何にもしてないぞ!
「で、でも……今3人に抱きつかれてるし……女の子ばっかりだし……」
雫は至極正論を言う、ああ、そう言われると……
「いや、ちょっと待ってくれ、そもそも何で雫にそんな情報が、先週末ここに召集されてもう他のクラスに噂が流れたって事か?」
まさかもう学校中に知れわたったって事なの?
「ああ、それは僕が彼女に言ったからじゃないか? ……兄貴!」
突如美智瑠がそう言い出すってお前か!
「な、ななななな……何でそんな事を……」
何でわざわざそんな事を美智瑠自ら言うんだ?
「え? ここはハレムか? って彼女に聞かれたから、まあそうなのかなって、一人男子が、兄貴が居るけどって」
「ん? ハレム?」
「ああ、ハレムって女子の居室って意味だろ?」
ん? なんか意味が違うと言うか認識が違う、語源とかか?
「あのねぇ美智瑠ちゃんハレムじゃなくてぇハーレム、その意味はねぇ……」
ゴニョゴニョと麻紗美が隣に座る美智瑠に耳打ちする、ちょっと待てちゃんと教えるとそれはそれで……
「ななななななな、何だってええええ! 兄貴は! そんなハレンチな事を考えていたのかあああああ!」
「麻紗美! 美智瑠に何を言ったああああ!」
「えーーー? オットセイのぉ生態を」
俺はオットセイか! やめてくれえええ、マジで生々しいから……
「美智瑠、違うから! 考えてないから!」
「にいに~~~」
ああああああ、忘れてた! 会長はまだ幼児状態だったああ、ああ、ほっぺにちゅうとかやめて会長!
「お、お兄ちゃん! 私も!」
妹が俺にキスをしてくる、だからやめてくれええ
「おおお、美味しそうデス、お兄様を私も食べます!」
更にセシリーが俺を食おうとする……いやほんとマジでやめてくれええ。
「やっぱりそうじゃないか! 兄貴!!」
さっきから兄貴って何だよ美智瑠!
「ふええええ、アンちゃんやっぱり……」
ああ、雫……誤解だ違うんだあああ
そしてこんな時に俺のスマホが鳴る、だ、誰だ! 出れるかこんな時に!
あ、いや待てよ……ここにいる以外で俺に電話を掛けて来る何て、ああ! 母さん達に何かあったのか?
俺はこんな状態だが慌てて電話に出た。
『お兄ちゃま! 何で昨日電話してこなかったのおおおお!!』
「お兄ちゃまって、美月か! あーーーー美月に電話をするの忘れてたあああ」
「にいに~~」「お兄ちゃん!」「お兄様!」「アンちゃん……」「兄貴!!」『お兄ちゃま!』
い、妹が増殖していく……なんだこのカオス……
「えっとぉ、私は何て呼べば……おにい?」
麻紗美まで何か言い出した、もう好きにしてくれ……
するとこの状態をじーーっと見ていた先生が立ち上がる……ああ、そうだよ、居るじゃないか、忘れてたよ……先生……助けてくくれえええ
そう願って先生を見つめる、先生は俺を物凄く冷たい目で一瞥すると会長の席の横にあるホワイトボードに何やら書き込んで行く……え、何? 何してるの?
会長以外が一斉に先生の行動を見る……!!
先生がホワイトボードの前を退くと、そこに大きな文字で書かれていた。
俺と会長を覗く全員がその文字を見た瞬間こう言った。
「あーーーーー」
その呆れた様な、納得したような微妙な感じの声、そう先生は微妙な、でもいい加減にしろ見たいな、そして今一番やらなければ行けない事をそこに書いてた。
『学園祭 出し物 妹カフェ』
あーーーーーーー
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