45-7 葵の過去
それでも栞に引き続き副会長の事を調べてくれと言って電話を切った。
「お兄ちゃま、お姉ちゃまは何だって?」
「副会長と書記が学校を辞めたと連絡があった」
「ふ~~ん」
「それだけ?」
美月があまり驚かない……予想してたって事?
「遅かれ早かれ葵ちゃんの事はわかっちゃうからね、その前にって事かなって、でも……」
美月が何か言いかけたところで再びスマホが……ってラインの着信?
「えええええ!」
着信相手を見て、思いっきり声をあげてしまった……
「お兄ちゃま?」
美月がこちらを心配そうに見ているが、今は出ないと……切れたら二度と連絡が付かないかも……多分あいつだ!
「もしもし」
『は~い、ご機嫌いかが?』
「副会長か!」
『正解、いいえ不正解ね、元を付けないと駄目よ』
「やっぱり、会長のスマホはお前が……いやそうじゃない、それより、学校を辞めたってどういう事だ?」
『あら、学校に行っていないのに、お早い事、駄目よ、ずる休みは』
「なぜ、いや……俺達から、葵から逃げたのか?」
『あら失礼ね、私逃げる事なんてしていないわ、ついでに言うと貴方と違って友達いますので、妹さん程じゃないけど私も元副会長なので、貴方と葵が休んだって事は知ってるわ』
「俺だって少しはいるって……だから今はそんな事いってる場合じゃない!……お前が葵を洗脳したんじゃないのか!」
『あ~~ら怖い、洗脳ですって、あははははは、そんな事が出来るとでも?』
「現にお前が……」
『やっぱり勘違いなさっているようだから電話致しましたの、そんな恐ろしい事を私がするわけないでしょ、私はね、葵にそのままの事を伝えただけですわ、葵の置かれている状況を、そして私の事をお話しして上げただけ……』
「どういう事だ?」
『言う必要が? と思っていましたけど……そうね、私だけが悪者にされるって言うのもあまりいい気分はしないですわね、では教えて差し上げますわ…………そう6年前……、葵はご両親を亡くしたショックで今の様な状態になっていたの、私も色々あって、ね……そこで葵と出会った……葵は放心状態で、ほとんど今の様な子供に近い状態だった、唯一言っていた事はお兄さまが外国にいると、でも……お兄さまはいつまで経っても日本に戻って来なかったと』
「それは……あの時は色々あったし」
『あなた妹さんが海外で事故にあったらすぐに駆けつけないの?』
「そ、それは……」
『家族なんて……、兄妹なんて信用出来ない、そう言って上げたのよ、私の事を教えて上げてね』
「お前の事?」
『葵は当時から綺麗だった……そしてわかるでしょ、その時の葵は、今の葵と同様子供の様にピュアで、可愛らしい、金色の髪、美しい身体、愛くるしい顔……私は葵を自分の物にしたかった……自分が汚れてしまった代わりに、私の代わりとしてずっと美しい葵を側に置いて起きたかった』
「お前の……代わり?」
『そうよ、あのまま葵を放って置いたらどうなっていたか、施設にあんな可愛らしい葵が入ったら……それともどこかへ養子に?……』
「そんな事……でも……、お前がオモチャにしたら意味がないだろう」
『何が悪いの? そのオモチャをそのまま雨ざらしにしておいたらすぐに壊れてしまうでしょ? あなた知ってる? 野良猫の寿命って』
「野良猫の寿命?」
「3年から5年くらい……」
俺が言うと同時に美月が答える……そんなに短いの?
『飼い猫ってね20年くらい生きるのよ、それがたったの3年ほどで死んじゃうの野良猫って……私はね、葵を野良猫のように、薄汚くなるのを見ていられなかった、いいえ、葵はずっと美しままでいてほしかった、だから私の物にしたの』
「こ、今度はペット扱いか! いい加減にしろ!」
『ペット? 違うって言ってるでしょ、葵はお人形なの、私の代わりの綺麗な綺麗なお人形さん』
「同じだ」
『違うは、葵もそれを望んだ、私の代わりになってくれるってね』
「そんな……」
『さっき言ったでしょ、私の事……話して上げたのよ、そうしたら葵が私の物になってくれるって』
「お前の何を言ったんだ?」
『うふふふふふ、聞きたい? 葵が目覚めたその理由…………私がそれを言ったら葵は目を覚ました……』
「それって、何を……」
何だ! それを言えば今の状態から葵が戻るかも……俺は耳をすまし副会長の言葉を待った、そして聞いてはいけない事、副会長の過去……市川 瑞樹のトラウマを聞いてしまう。
『私ね、兄に……汚されたのよ』
「な!!!」
『葵に教えて上げたのよ、私の事をもっともっと詳しくね、そして言ってあげたのよ……兄妹なんて信用出来ないって……、ほら来ないでしょって……、そうしたら、葵……悲鳴を上げて私に抱きついたの、二人で泣いたわ、葵も憎いって、いつか兄を見つけ出して、殺してやるって、あはははははははははは』
「そ、そんな……」
『でも私、その兄のお陰で自由とお金を手に入れたわ、家族から離れて暮らす自由と、いくらでも自由に使えるお金を手に入れたのよ、そして葵の復讐の為にその費用を出すって言ったの、でも葵、復讐の事だけは自分で何とかしたいって、だからあの学校に行ったのよ留学制度があるから、私も一緒に入学して、そして葵を会長にならせた』
「じゃあ何で今こういう状態なんだ?」
『だから言ったでしょ、あなた達の……あなた達の兄妹のせいって』
「だからそれが」
『生徒会活動の時にあなた達兄妹の仲をたっぷり見せつけられたでしょ、葵、あなたに聞きたい事があったらしくてね、あの後から、尾行していたらしいの貴方のこと……、そうしたら、毎日の様に妹と一緒に帰る、デートしてる、腕は組む、こんな兄妹いるのかって、私が否定すると……今度は私が言ってたことを疑問に思い出したの、そして……』
「そして?」
『葵を隠している事がバレた、今あなた達のいるマンションの事がバレた……葵は私を叩いた、私の人形が私に手を出したの、壊れたのよ、だから……全部言って上げたのよ、嘘だったって全部嘘って、そうしたら葵泣き崩れてそれから……』
「それから?」
『私との事は全部忘れて元に戻っちゃった……』
「そん……な、でも……それって自業自得だろ、隠した事はおかしいだろ」
『そうね……私は怖かったんでしょうね、葵がいなくなるのを……葵を何とかしようと思った……でももう私の事は……私は落ち込んでいた、大事なお人形が壊れてしまったって、そうしたらね、そんな私に言ってくれたのよ、私のお世話をしてくれている子が、その子が、今度は私が代わりにって……私の新しいお人形になってくれるって、私の可愛い綺麗なお人形に……』
「あの書記か」
『彼女ねスイスに行きたいって、私とスイスで暮らしたいって、だから今から行くの、私の新しいお人形と、綺麗な美しい国で暮らすの…………じゃあそろそろいかないと飛行機が出ちゃう、ちょうど今、荷物を全部降ろしたから後で部屋に入れておいてね~~その部屋は葵名義だから自由にどうぞ、この荷物共々全部あげるわ、じゃあ元気で~~』
「今?」
俺は慌てて窓の外を見ると、黒塗りの外国車とトラックが走り去っていく所だった……外国車の窓から手を降りながら
下を見るとマンションの入り口に大量の段ボール箱が置いてある……多分葵の荷物なんだろう……
色々言われ混乱している、副会長の嘘とは、どこからどこまでが嘘だったのか……、いやそんな事を考えるより、とりあえず直ぐにやらなきゃ行けない事があるのは間違いない。
そう……あの大量の段ボール箱……あれをここまで運ぶのか……今3人いるけど運べるのって……俺一人だよな……
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