23-5 天国に一番近い海


 「きれいだねぇー」

「そうだねぇー」

「静かだねぇー」

「お腹すいたねぇー」


 麻紗美と、何故か妹と美智瑠にも平謝りし何とか許して貰った、って言うか、なぜ麻紗美の頭を触ってここまで怒られなければならないんだ?


 という事で、俺たちは少し浜辺でキャッキャウフフと定番の水のかけあいをした後に、海を見てボーっとしている。

 台詞がみんな麻紗美状態になっていて誰が誰だかわからない、まあ最後は多分美智瑠だと思うが……


「なんか、時間の流れがわからないんだが、今何時?」

 携帯を見る気にもならない、なんかずっと、ここにいたい気分になる。


「えっとねぇ、2時過ぎだねぇ」


「帰りの船って何時だっけ?」


「3時半だよぉ」


「じゃあ、あの雲があの辺にいったら帰らなきゃ行けないんだー、やだなー」


「そうだねぇ」


「お腹すいた……」


「名残惜しいけど、行くか、港に食べるところあったよね確か」


「ソーキそば食べたい!」


 うーん、美智瑠がどんどん残念になっていく……そういえば残念東出生きているのかな……まあ興味ないけど



 俺たちはまた歩いてフェリー、高速船乗り場に向かった。


「結局ここまで来て海しか見てなかったけど、十分だよなー」


「なんか星が綺麗らしいよ、次は二人で来ようねお兄ちゃん」


「ソーキそば大盛って出来るのかな?」


 フェリー、高速船乗り場に到着し、麻紗美はチケットを買いに行く

 まだ30分以上あるし、ごはん食べるのは良いけど、帰りもあの揺れを考えると美智瑠はやめた方がいいんじゃないかなと思いつつ麻紗美を待っていると、凄く気まずそうな顔をして戻って来た。



「あのねぇ、ごめんねぇ、帰れなくなっちゃったぁ」

 焦っているんだろうけど、全く焦りの無い口調で麻紗美がなにやら、わけのわからない事を言う。


「帰れない?」

 なんだ?チケット取れなかった?いや、そこまで人は居ないぞと思い、何故? と聞いてみる。


「えっとねぇ、波が高くて欠航だってぇ」


「欠航?!」


「うん、ごめんねぇ、さっき言われたんだけどぉ、この波照間島航路ってぇ、欠航率がぁ5割越えることもぉあるんだってぇ」


「5割!!」

 5割って半分だぞ、半分欠航てなんだそれ、ああ、だからあの揺れなんだ。


「まあ、平均だとぉ3割位だってぇ、だからぁ明日はぁ大丈夫かもってぇ」


「3割だって相当だけど、それより今日どうするんだ、なんか帰る方法ないのか?」


「前は飛行機飛んでたんだけどぉ、今は無いってぇ、フェリーもぉ今日はないからぁ泊まるしかないねぇ」


「とりあえずぅ、島の中心にぃ泊まれる所があるからぁそこに行こうかぁ」


 ちなみに気温も高く、波照間島はハブもいないので野宿しようと思えば出来るが、島内はバーベキューも野宿も禁止との事。


 しょうがない、今度は島内散策だな。

 そう言って行こうと思い3人を見ると、美智瑠がいない……

「あれ美智瑠は?」

 そう言うと、妹が指を指す。


「美智瑠……」


 我慢出来なかったらしい、一人ソーキそばをすすっている美智瑠がこっちを見て手を振っている。

 いや、本当なんかどんどんキャラ変わってないか?(ほんとすみません)



 それどころじゃ無かったが腹が減ってはなんとやらで、俺たちは美智瑠に付き合い遅めの昼食を取る。


 直接行くより電話すれば? と優等生らしい発言がようやく美智瑠から出た、凄いぞ美智瑠やれば出来る子だ……


 とりあえずスマホで調べ連絡するも、やはり欠航のせいで4人泊まれる所がなかなか無い

 別れて宿泊も仕方ないと思ったが、なぜだか美智瑠がやたら反対する。


 て言うか、お前がご飯食べなきゃ空いてたかもしれんのに!

 とは、思いつつも、俺も腹は減っていたしね、そして、別れて泊まるのは、ちょっと心配だ。


 何件か電話をした所、4人雑魚寝で良いなら空いてるよとの事

 4人部屋って不味いだろと俺は思ったが、何故か3人は別に平気だよと乗り気。

 まあ、妹の前で俺が2人に何か出来るはずもないが、男として見られていない感がちょっと傷つく……



 携帯のマップだと20分位で着くと出たので、島内散策をしながらのんびり歩く。

 ほんと、麻紗美にぴったりな時間の流れ、俺が麻紗美と話して落ち着くのはこの感覚なんだよなー


 歩いていると、サトウキビ畑が見える、そしてなんとヤギが放し飼い。


「きゃああーーやぎさんだ、めえええええ」

 妹がはしゃぎ、美智瑠は少しビビっている。


 島の中心に近づくと家が増えてくる。

 それでも町と言うほどなく村、それも本当に田舎の村のよう、まあ田舎の村なんだけど。


 ただ、小さな島でも、ちゃんと学校や郵便局もある、家は石垣で囲まれている家が多い、やはり台風とか来たら凄いんだろう。


 そして今日俺達が泊まる宿、【星の宿】に到着する。(この物語はフィクションです、実在する宿ではありません)


 宿の女将さんに、高校生4人で泊まり、なおかつ俺、男がいるのはと、怪訝な顔をされたが、学割の為に持ってきた生徒手帳を見せ兄妹をアピール、兄妹でいるからには、兄にはそんな不埒な事はさせません!!!と妹が断言、何でかメチャクチャ気合いを入れて言っていた。

 そんな危険人物か俺?……


「兄妹?妹さん可愛いねー、お兄さんに似なくて良かったねー」と、いつもの言葉頂き部屋に向かう。


 ていうか余計なお世話だ……



 部屋に入ると畳の部屋、昔ながらの旅館の様で、布団が2枚たたまれ置いてある、後で2枚持って行くからと、さっき女将に言われている。


「とりあえずぅ、お風呂に入らないとねぇ」

 砂浜で遊んだので結構砂まみれ、海水のせいで身体中が塩をふいている用な感じだ。


 風呂は一つしかなく基本交代で使うらしい、まだ時間が早いので使っていいよとの事で3人は風呂に向かった。


 3人を見送り、俺は1人残って部屋を見つめて、石垣島のホテルと比べ、一泊もったいないなーと、この時は心底思っていた。


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