14-2 二人きりの夜



 ちょっと体を動かしたいなー、と言うことで、ボーリングにした。


 まだ肌寒い5月中旬の夕方なので、暖かい格好をしておいでと、妹を着替えさせ、自分も白いシャツにグレーのパーカーにデニムを履いて下に降りる。


 リビングで待ってると、妹が、オフショルダーのニットに、デニムのジャケットを羽織、赤と黒のチェックのミニスカートに黒のストッキングを履いて降りて来る。


「え?ミニスカート?」

 随分お洒落してるが、俺ボーリングって言ったよなあれ?


「ううんキュロットだよ」

 履いているスカートの裾を両手で広げる。

 黒いストッキングで覆われた太ももが、かなり際どい所まで見える。


「わかった広げるな広げるな」

 大事な事なんで2回言って家をでた。たくし上げとかやめて……


 ラウン……、ゲーム、カラオケ、ボーリング等ができる複合施設に向かう。

 家からは大分離れているが、夕方の散歩がてら歩いて行く事にした。


「ねえお兄ちゃん手繋いで良い?」


「近所だから止めようなー」

 最近すっかり物怖じしなくなった妹に体よく断るも、諦めずに今度はお願いと手を合わせながら


「じゃあ腕組むのは?」


「いやもっと駄目だろう」


「えーーー夜のデートなのにーー」


「いやまだ夕方」

 日も長くなっているのでまだうっすら明るいが、妹は既に深夜の気分になっているようだ。


「じゃあほれ、腕掴んでろ」


「まあいいか、わーーい」

 わーいじゃねえよ


 俺のこの普通な格好と、妹のおしゃれな格好で、腕を掴まれて歩く俺達を端から見てどう思うんだろうなー?介護とか、怪我人の付き添いとか?

 まあ、恋人どうしには見えないだろうから良いかな?


 そのまま30分程歩き到着


 1階のゲームセンターの横を通り過ぎ受付に行こうとした所、妹が立ち止まる。


「栞?」


 呼ぶとこちらを見てニッコリ笑って指を指す、プリクラの機械を……


「あーーまじか、ハイハイ撮るのね、でも俺プリクラって撮った事ないからなーどうやんの?」


「じゃあ私が教えてあげるから撮ろう!」


 へいへいとプリクラの中に入ろうとすると。


「お兄ちゃん待って背景どれにする?」


「背景?てか外で選ぶの?」


 妹は慣れた手付きで背景を選ぶ

「ハートがいいかなー?よし、入ろうお兄ちゃん」


 中に入るとカメラのボタン?が光っている


 妹がそのボタンを押すと、機械が写真を撮るよと秒を読み始める


 まったくわからない…

「おにいちゃん、早く早く、ポーズ撮って」

 いもうとと並びポーズを取る、よくわからんからピース

 321シャッターが切られる


「はー終わった終わった」

 出ようとすると妹から引き留められる。


「お兄ちゃんまだだよ次顔近づけてー早く早く」

 え? 何? 一枚じゃないの? 顔? 近づける? そういう物なのプリクラって?

 妹は俺のほっぺを自分のほっぺとくっつける、やーめーてーー

 再び321とシャッターが切られる


 やっと終わったと思うと次はさらに

「お兄ちゃん次はお姫様抱っこだよ!」


「はあ???」


「早くー写真撮られちゃうー!」


「え?やるの?やらなきゃいけないの?」

 321と秒読みされ、訳がわからず慌てて妹をお姫様抱っこ

 軽い妹を持ち上げると、妹は首に抱きつきカメラを見ると同時にシャッター音


「はあーーーお兄ちゃんにお姫様抱っこ、えへへへへへへ」


「いや早く手を離して下さい栞さん、ていうかお前騙したなーーー!」


 片目をつぶって舌だして、テヘペローじゃねえよ、なにやらせんだ!


「ああもうーーー、じゃあ行くぞ」


「お兄ちゃんまだまだ、これから落書き」


「なんだ落書きって?」


 撮った写真がディスプレイに表示され、妹がタッチペンを持ちこっちを見ている。

 あー何かアニメで見た事あるな、こうやって書くんだ。

「お兄ちゃんなんて書く?」


「もういいよ、好きに書いて」


「はーーーい」


 妹は、らぶらぶーーとかだいすきーーーとか言いながら、タッチペンを走らせている。

 そのあともろもろ操作してる妹

 何なのプリクラってこうなの? 証明写真しか撮ったこと無いんだよ俺……


「できたーー!」

 妹がそう言いやっとの思いで、フラフラになりながら一緒に外に出る


 暫く待つと受け取り口から、写真がストンと落ちて来た。


「はいお兄ちゃんの分ねーえへへへへへへ」

 妹がプリクラを見てうっとりしている。



「は?誰?、なんでこんなに目がデカイ?」

 特に妹はもともと目が大きい為、もう宇宙人である。


 なんか結構前のアニメで妹とのプリクラが親にばれるシーンがあったけど、今ならばれないんじゃねえの?


 プリクラには、ラブラブだの、大好きーだの相合い傘だのが書いてあって

 ますます誰かわからない状態。


「まあ、これなら抱っこしてても問題ないか?、さてと」


 妹を見ると

「えへへへへへへお姫様抱っこ」

 まだ自分の世界に入っている。


「おーーーい、そろそろ行くぞー」


 ようやくこっちの世界に戻ってきた妹。

 そのうち、この妹、異世界にでもいっちまうんじゃねーの?


 そういえば、全然迷わずにプリクラ操作してたな、

「慣れてるけど、栞ってプリクラとかってよく撮るの?」


「うん、友達にいつも撮ろうって誘われるー」

 はーそうですか、男同士で撮ること無いからなー。そもそも友達がちょっとしか居ない…ちょっとは居るんだ、居るんだよーーー


 気を取り直し

「んじゃ、行こうか」

 ようやくボーリングの受付に向かおうとすると、妹はもう1台のプリクラを指差し


「お兄ちゃん今度はこれでもう一回撮ろう」


 全身プリクラ……

 もう勘弁してください。


 ボーリング行かないのかよ?






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る