8-2 妹の本気
「えーーーっと」
俺の返事を聞くまでも無く、空いてる席から椅子を持ち出し俺の前に座り
周りを気にせず、弁当箱を開け始める妹
「あのーーー栞さん一体これは…」
妹は俺の顔を見て、そのまま横を見る、俺も吊られて横を見ると
あんぐり口を開けている麻紗美がこっちを見ている。
「麻紗美ちゃんも一緒にどう?」
「ふわぁ」
変な返事を返した後に
「いいのおぉ、しおり…さん」
妹は満面な笑みを浮かべ
「いいよ麻紗美ちゃん、一緒にたべようよーーそれとさん付けなしね」
「しおりぃ、ちゃん?」
「うん麻紗美ちゃんもお弁当だよね一緒に食べよう」
ガタガタと机をくっ付けようとする麻紗美、俺は立ち上がり机を動かすのを手伝う。
「ありがとうぅ、ゆうぅ」
ニッコリ笑って麻紗美に言われた瞬間はっとなり妹を見ると
ニコニコしながらこちらを見ている。
うーーーん?前ならどす黒いオーライが見えたのに欠片も感じない
「さあ、たべようーーー、前から麻紗美ちゃんとお話ししたかったんだよねーー」
そう言いながら弁当箱を開ける
俺は席に着き周りを見回すと栞の友達(まあクラスの女子ほとんどが友達何だが)が遠巻きに見るもみんな???な顔をしている。
ただ雰囲気的にはまあこういう日もあるか?という感じでそれぞれが学食に向かったり、自分の席で食べたりし始める。
「栞いつも食べている友達は良いのか?」
「え?別にいつも一緒に食べている特定な人って居ないよ、学食組とか購買組とか、お弁当組とかその日に私と同じ人が周りに来るから一緒に食べてるだけ」
「今日は、お兄ちゃんと麻紗美ちゃんがお弁当組で私が一緒に食べたいと思ったから私から来ただけ、別に約束とかしてないし平気だよ」
さすがクラスの女子殆どと友達なだけあるけど、良いのかなー?
「麻紗美ちゃんのお弁当美味しそうーー自分で作ったの?」
「え、うんー、いつもおぉ、自分でぇ作ってるうぅ」
「本当凄いなー私とお兄ちゃんのは半分冷凍なんだよー」
「ゆうぅ、君の分もつくってるのおぉ?」
馴れ馴れしいかもと妹に気を使ったのか、いつもは呼び捨ての俺に君付けをして呼ぶが、その麻紗美に構わず。
「うん、今日からだけど毎日作るよー私も頑張って手作りしないとねー麻紗美ちゃん教えてね」
「うん、いいよおぉ」
麻紗美は顔を赤くして照れながら返事を返した。
しかし、今日の妹はおかしい何なんだ?と考え込む………
「…………ちゃん………いちゃん、お兄ちゃんてばあ~~」
「あ、ごめんごめん何?」
「もー聞いてる?なんか変だよお兄ちゃん?」
いや変なのはおまえじゃあああ、と言いたかったが
「ああ、ごめんごめん考え事してた、で何?」
「もうーーー今度麻紗美ちゃんの家に料理と、お菓子作りを教えて貰いに行くからお兄ちゃんも一緒にって話をしてたの!」
「え、ああ、うんああ、お邪魔するよ、うん、ていうか俺も作るの?」
「えーーーー、お兄ちゃんはいいよーお兄ちゃんは食べる係、ねー麻紗美ちゃん」
「うん」
嬉しそうに話す二人、あのボッチ気味の麻紗美とここまで打ち解けられる妹の特殊能力、【誰とでもすぐに仲良しなれる】に戦慄を覚えるが一体どうしたんだろうか?
そして放課後
帰りも来るかとドキドキしていたが、妹は友達に囲まれ歓談中
ほっと一息、さすがに帰りまではないかと教室を出るなり
「みんなごめんね、私帰るね」と声が聞こえるなり
「お兄ちゃん待ってよー置いてかないでーー」
ええええええええええええええ!!
妹は追い付くなり俺の袖を掴む
振り向くと妹と、その後ろには教室の扉から覗く怪訝な顔が数人
ヤバくねヤバくね?
俺の視線に気付き妹も振り向くと
「みんなお先にまた明日ねー」
笑顔で手を振る
怪訝な顔をしてた友達も途端に笑顔になり手を振り返す。
「さ、帰ろお兄ちゃん」
俺の袖をつかんだまま歩き出す。
何?いじめ?いじめなのか?一緒に行くか職員室か教育委員会かPTAか知らんが
「えーっと栞さん」
帰り道で妹と二人並んで歩いている、妹は楽しそうに喋っているが俺は今日1日の事が気になって仕方がない。
まあ、きっかけはあの事何だろうけど
「あ、お兄ちゃん今日お母さん夜勤だから家に居るね」
「ああ、じゃあお茶会は無し、というか続けるのか」
「うん?なんで?」
周りを気にしながら小声で
「だって、あれは家デートって位置付け……」と言った瞬間、突然後ろから例の如く友達が話しかけて来た。
「しおちゃん今帰りーー、えっとお、にいさん?」
「そうだよーお兄ちゃんと帰る所ー」
「そうなんだーじゃあお邪魔しちゃいけないねーばいばーい」
若干からかう様な言い方に気にもせず
「うん、ばいばーい」
「で、お兄ちゃんデートがどうしたって?」
手を振りながら話す妹、とりあえず妹の友達にいつ遭遇するかもしれないし迂闊な事は言えないので
「いやなんでもない」とごまかした。
家に着くと、カレーの匂いが充満していた。
「今日カレーだー」
妹は一発で分かる本日の夕飯にクスクス笑いながらキッチンに向かう
「お兄ちゃん今日お母さん、早めに出るってさー」
俺もキッチンに向かうとテーブルの上に母の書き置きが置いてあった。
……メール使えよ母ちゃん…
「じゃあ私着替えてくるねー」
パタパタとスリッパを鳴らし、妹が2階に上がる。
「俺も着替えるか」
同じく2階に上がり着替え、今日の事は一体なんなんだと聞かないと……
妹との放課後ティータイムをしにリビングに入ると
……パジャマ姿の妹が、お茶の用意をしていた。
「えーーーっと栞さんその格好は?」
「え、これ?可愛いでしょーー」
妹はくるりと回りヒラヒラの付いたピンクのパジャマを見せびらかす。
おそらくノーブラであろう胸が揺れる……
いや、一緒に住んでるんだから、夜トイレやキッチンでばったりパジャマ姿の妹に会う時もあるし、見た事ない訳では無いが、夕方とはいえ、まだ明るいうちに妹がパジャマ姿とか小学校の低学年以来じゃねえか?
もう今朝から一体なにがなんだか………
ソファーに腰を下ろすと、お茶を用意して隣に座る妹
俺はいつも通りのコーヒーを、一口飲みふーーーーーーっと息を吐くとようやく落ち着いて聞いた。
「で、今日のは何なんだ?」
「え、何って?」
……と、とぼけやがった
「いやだからー、一緒に学校行ったり、一緒に昼とか、帰りとか、ついでにそのパジャマとか」
「えーーーー可愛くないー?」
「いや、可愛いけど」
「でしょえへへへへ」
「いや、えへへじゃなくて!」
「どういう事なんだっ!」
「お兄ちゃんちょっと怖いよー」
「いや、俺はお前がこわいよ……」
妹はニコニコしているが一向に理由を言わない
頭が痛くなってきた。
「んーーーそんな変な事してる?」
妹は口の下に指を当て首を傾げながら言う
「え?変だろ」
「そうかなーーー?」と、さらに首を傾げる
妹は一体なにが言いたいんだ?
「だって一緒に学校行って、一緒にご飯食べて、一緒に帰っただけでしょう?」
「ああ、でも」
「でも?」
でも…、言われて見ればそうかもしれない、いやでもちょっと仲良すぎないか?そんな兄妹いるか?
「いや、ちょっと仲良すぎないか」
そのまま疑問をぶつけるが
「良いと駄目なの?」
「いや駄目じゃないけど」
「だったら良いじゃない」
あれ、俺、論破されてる?
「じゃあ終わりねーー、ねえねえみてここ、このリボンがー…」
妹が雑談し始めいつものお茶タイムに突入していく
あれ?、あれ?、これって明日も同じ事になるって事?
まじか……
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