45話 そして勝利の女神はどちらに微笑む?

 リレーも終わり燃え尽きかかっている私ですが、運動会自体ももう終わりです。後は全校生徒が校庭に集まって点数開示して頂いて一喜一憂し、そして閉会の言葉がありはいさよーならーとな。


 うちの学校では後半の点数は表示されなくなるため、どちらがどれだけリードしているかというのはわからなくなってしまう。他の学校はどうかはわからないけれど、まぁうちの学校特有ではないだろうか。少なくとも近場の学校では聞いたことがないような気がする。


 あ、でも点数の更新がされなくなるっていうのはあったなぁ。どちらにしろ本来の点数はブラインドされているので一緒か。


 兎にも角にも、現状ではどちらが勝っているかは全くわからないのだ。私個人としては勿論勝って欲しいのです。負けるとか嫌じゃないですか。勝負事をするのであれば、やっぱり勝って万歳で終わりたいよね。

 ただ、現実的に行くと負けているが濃厚かな。結構な点数差が開いていたし、私たちの学年では白が圧勝したけれど、二学年と三学年では赤組に一位を取られてしまっている。流石に二位までもを取られてはいないがそれでも一位を獲得されてしまったのは大きい。


 更になんだけれどね。うちの学校のジンクスで、白組は永遠の準優勝と言われているんだよね。準優勝、つまりは赤組には勝てていないのです。創立10年を迎えてそれだよ。もう少し頑張れよ白組。何戦う前から燃え尽きて真っ白になってんだよ。


 私はあまりジンクスとか神様とかそーゆーのは信じない質なのだけれど、ここまでくるともうそーゆーもんなのかなって気がしてくるよね。


「いやぁ、今日の琴ちゃんかっこよかったなぁ。特にあのリレーはすごかったよぉ」

「うぇ?ま、まぁね!私だからね!みーちゃんもっと褒めて褒めて!」

「うんうん、いい子だねぇ〜」


 勝ちたい、その気持ちは変わってはいないよ。けれどね、私にできることはもうないんだ。で、あれば、後は結果を座して待つべしとな。


 なので私はみーちゃんと戯れることにしました。やっぱ褒めてもらいたいよね。私って承認欲求が人並み……いや人並み以上にあるので何か上手くいったらそら褒めてもらいたいし、認めてもらいたい。特にそれが仲の良い友人であればなおさらだ。

 みーちゃんのお手手が頭の上をわしゃわしゃ、気持ちいいですぅ。でも汗臭くないかな?結構汗かいたから髪もなんかしっとりしてるし……うー、変な臭いとかしてないよね?はらはら……。


「俺も見てたけどあれは熱かったな!」


 私が体臭とか気にしてはらはらしていると、今度は真もこっちに来た。どうやら向こう側での和気藹々は落ち着いたようだ。春藤君や北原君はまだ他の仲間に囲まれている。


「ふふーん。私だもんね!やっぱり普段の行いの良さよね!」

「お前のそうゆうとこ結構アホっぽいよな」

「アホじゃないもん!」


 全く真は失礼な奴だ。ぱーふぇくと美少女のこの私のどこがアホっぽいというのだろうか。ここぞというところで颯爽と勝利を掴む。つまりは勝利の女神よね。あ、リレーに限るけれど。


『全校生徒の皆さんはグラウンドに集まってください』


 いよいよ始まるは閉会式。これが終わりの始まり……ここだけみたらファンタジー感半端ないよね。私の存在が既にファンタジーか!はっはっはっ!……はぁ。


 私のやれることは全てやりきった。全力も出せたと思う。けれど運動会の結果としてはどうか。十中八九負けである。おそらく後半で何とかいいとこまで追いつけたとは思うがそこ止まりだろう。


 これから始まるのが白組処刑タイムと思うと……ぐぐっ!く、悔しいぃ!口惜しやぁ!皿が1枚足りなーい!


『――それでは結果発表となります』


 なんか教頭から色々とありがたーいお話があったと思うけれど、残念ながら私の脳内茶番にかき消されました。私の茶番には時間を早める効果があるからねぇ、多少はね?


 さぁ、点数発表だ。点数計算の方式がわからないので予想の立てようがない。無理やりするとしたら……そうねぇ、赤組が500点で白組が490点くらいかね?毎回400~599くらいの間で発表されていたのでこんなもんではなかろうか。


『それでは白組』


 そうアナウンスすると、校舎の窓に白組の点数が顕になっていく。気になるその点数は――。


『白組、515点』


 おほぉ!いいじゃんいいじゃん!私が予想した点数よりも上だったことにちょっとテンション上がっちゃうよ!


 でもさ、でもさ。私知ってるんだ。最初に点数を掲示されるということはつまりそーゆーことだってこと。


『続いて赤組』


 同様にアナウンスが入ってから点数がペタペタされていく。


 三桁目は5、二桁目は1……おぉ?おおぅ?これは私の予想がまたしても良い方に外れたパティーン?これ来たんじゃねぇすか?!


 そして一桁目は0!!


 これはまさかの琴音ちゃんマジで勝利の女神説なりました?私ってば、理想の姉になるどころか、一足飛びに女神なっちゃった?女神系お姉ちゃんとか新しいジャンルそうだよ?!ふふん♪どうよ真。私きちんと女神やったで?アホの娘卒業ですぅ。

 いやぁやっぱり日頃の行いですかね?良い人間には良い風が吹く、つまりは勝利も運ばれてくる、と!HAHAHA!!

 やはりジンクスはあくまでジンクス!そこにある努力!勝利!友情!これに勝るものはなかったってわけよ!!


 そんな風に私の心の中では拍手大喝采の勝利のパレードが開かれていたが――。





 ――ぺらっ。





 そんな擬音がなったのではないかという程鮮やかにそれは落ちていった。


 そして映る点数は……。


『赤組、520点!赤組の勝利です!』


 そして湧き上がる歓声。それと同時に意気消沈する白組。


 ……。


 ………。


 …………。


 はぁあああああああああ?!!!!!!!!


 なんだよあれ!ふざけんなよ!ぬか喜びさせるとか鬼畜かっ!?鬼畜なのかっ?!お前、子供の純粋な心を返せよ!!私自分のこと女神って言っちゃったじゃんよ!こんなのアホの娘だよ!免れなかった!!


「あははは、負けちゃったね女神ちゃん?」

「それはやめてっ!」


 みーちゃんは笑いながら私にそう言った。


 私はいたたまれなくなり顔を両手で覆ったよ。


 お願い!これ以上私の傷をえぐらないで!後生ですから!!


 それでもみーちゃんは私のことをしばらくは女神ちゃんと呼び続けた。ついでに真も悪乗りして言ってきた。更にそこから派生してクラスのみんなにしばらく女神ちゃんと呼ばれ続けた私でした。ちゃんちゃん。


 もぉぉおおおお!!!!!




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