karma6 振る舞われた宿
斬新なブルーグリーンの廊下でジャマイカ軍関係者と出くわすたび、敬礼される。藤林たちは会釈し、廊下を進んでいく。
ぞろぞろと行進する人々は目について当然。待ちかねた援軍の勇者たちに敬意と感謝を示し、親しみの念が誰の表情にも
「わが軍のウォーリア部隊、ヘブンエミッサリは何度も攻撃に遭い、どの部隊も満身創痍です。巡回は一部沿岸警備隊に任せている状況です。少しでもヘブンエミッサリの体力を温存させなければ、万が一の事態にも耐えられません」
司令官の男は厳しい顔で現状を報告する。
「派遣登録する国の数も減っているようで……。救援要請をしても、実施されるまでに日数を要しているのが実情です。他国の事情は充分承知しておりますが、せっかく作られた組織なのにうまく機能していません。これでは、いずれ限界を迎える国も出てくるでしょうに。なんとも歯がゆい」
悔しさを滲ませる司令官の思いは、苦々しい司令官の声色を聞いていれば如実に感じ取れた。
「っ、失礼しました。少々、愚痴っぽかったですね」
藤林隊長は苦笑いを浮かべる。
「いえ、どこも苦労しています。お気持ちはわかります」
司令官の唇がむっと力が入り、バツの悪そうに帽子のつばを掴み、
「ともあれ、ようやく望んだ形で救援が叶い、正直少し安堵しているところです」
すべてが赤茶色の木々と葉のように形を成す。建物と建物をつなぐ円柱型の渡り廊下を通り、円心状に
世にも珍しい球体のエレベーターは、螺旋の昇降路を下りていく。銅の昇降路は穢れなく、その輝きを保っている。
「ずいぶん金がかかってるな」
東郷は口をあんぐりさせて呟く。
「それはもう、国の防衛を誇る施設ですから」
司令官は得意げに胸を張る。
「装飾にまでお金をかけなくてもいいのに」
「こらこら~、いずなちゃーん。あんまり失礼なこと言わないの」
藤林隊長は余計なことを言う隣に座るいずなに対し、潜めた声で注意する。
「もちろん、見た目も気合いを入れてますが、決してお飾りじゃないですよ」
「どういうことですか?」
丹羽は興味深そうに問う。
「電磁誘導で移動するエレベーター。地震にとても強い構造で設計されています。万が一には非常に役に立つ箱になります」
「なるほど。最悪の事態を想定した簡易シェルターってわけか」
藤林隊長は神妙な表情でエレベーターの壁を軽く叩いた。
司令官の男とエレベーターを降り、数分ほど歩いて大きなドアの前にやってきた。
「少々お待ちください」
司令官の男は氷見野たちにそう告げ、クリームイエローのドアに手のひらを当てる。
「管理者ゲールより。照合を申請」
『申請を許可。照合を開始』
綺麗な男性の声が流れ、四海は小さく感嘆する。
『管理者ゲールの名の下、シャル・ベネフィットの声紋と像を確認。ドアを開きます』
両扉がカチっと音を鳴らし、押し出される。胸躍る表情が
品高い家具の数々。悠々とした広間。どこかの海外の家族が住んでそうな家を連想させた。
「おう~すげえ」
東郷は子供のように鮮やかな内装を見渡す。
「素敵な部屋ですね」
丹羽に褒められ、司令官の男は満足げに微笑む。
「もったいないお言葉、ありがとうございます」
「でも、こんなに高そうな品々があると、なんというか落ち着かなそうな気が」
四海は苦笑しながら戸惑いを見せる。
「それは当然です! ここは普段要人のための宿泊部屋。ヴィーゴのレーザーにも耐え得る部屋になっておりますので、ご安心ください」
背もたれの上部が山なりになった深緑のソファーに腰かけるいずな。ソファーの座面を押して弾力を確かめる。触り心地もすこぶるよかった。
「今夜の夕食は国防大臣を招いて迎賓の間にてご用意いたしますので、時間が来ましたらお呼びいたします。では、ごゆっくりおくつろぎください」
「あ、シャル司令官」
藤林隊長が声をかけて引き留める。
「はい、何かご
「ここを出る時はどうすれば? 見るかぎり、厳重なセキュリティが敷かれているようなので」
シャル司令官は「ああ」と緩んだ微笑みで返す。
「ここに入った時に登録は済ませてあります」
「登録?」
氷見野は首をかしげる。
「カメラに映った
「へぇ。カギ
丹羽もいずなと同じ長いソファに座る。
「はい。他に何かありますか?」
「いえ。ありがとうございます」
「では、失礼いたします」
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