karma8 底に群がる脅威の輪郭
御園は制止しようとするが、江夏はどんどん先に進んでしまう。
その間も妙な唸り声は立て続けに聞こえてくる。間違いなく、この先で鳴っている。
「まだ何があるかわからんねぇんだぞ!」
「ギャアアアアアー!!」
洞窟に反響する音は、よく聞いていた声だった。
そこで江夏はようやく立ち止まった。
「お、おい……今の」
「ああ……間違いない」
御園の視界がARヘルメットによる補助を受け、それを捉える。
ARヘルメットにより、赤く投影されたシルエットが洞窟の奥にいることを確認した。
「御園、この数を相手に、勝てると思うか?」
御園は引きつった笑顔を見せる。
「ここが洞窟じゃなかったら、勝てる望みもあったかもな……」
御園と江夏がいるところでは、まだ下り坂の1本道しか見えていない。
透過性視覚機能により、もう少し先まで見通せる。もし、もっと詳しい状況を知りたければ近づくしかない。
御園は小さく息を落とすと、意識的に胸を張った。
「さ、行こうか」
江夏は大きく目を見開いて御園を見据える。
「本気かっ!?」
「よく考えてみろよ。ここがどこであろうが、日本の地下にこれだけのブリーチャーたちがいるんだぞ? この意味を理解できないわけじゃないだろう?」
御園は両手を広げて辺りに注意を向ける。
「この地下が誰によって作られたのか。なんのために作ったのか。おのずと答えは出てくるだろ?」
悪寒が降りてくるように肌を覆い、
「……侵略の拠点!」
暗がりから誘うように、叫び声が呼びかけてくる。ザワリと2人のそばを抜けていくと、2人の体は無意識に委縮した。
「重要事項だろ?」
一度見たからには拒絶しようがない。ARヘルメット越しではあるが、おおよその数は推測できてしまった。数千という巨体の人食生物が、暗がりの洞窟で一斉に襲いかかってくる。
いくつもの死線を越えた
「位置情報、空間地形。それがわかったらさっさと離れる。オーケー?」
江夏は首肯する。
「よし、行こう」
御園と江夏はブーストランを切り、
なだらかな下り坂の奥から、不気味な唸り声や叫び声が続けざまに聞こえてくる。
「はっ、まるでお化け屋敷だな」
御園は強張った笑みで冗談を吐く。
「お化け屋敷にしちゃ
「スリリングだろ。うまくいけば、面倒なことにならずにここを抜け出せる」
「こんなはずじゃなかったのによ」
「ボヤいてどうにかなるもんでもねぇさ。後悔なら隊員になった自分の決断にしろよ」
江夏はいけ好かない言動に顔をしかめる。
「後悔ねぇ。後悔なら、ここでお前と一緒に地下を彷徨ってる不幸を後悔したいね」
長い長い道は、ようやく景色を変えることを示した。
暗視機能で視界を確保する2人は、末広がりになった道を確認し、足を遅めていく。
空間が切り替わる道の手前で2人はしゃがんだ。
息を細め、ゆっくり進んでいく。
ドーム状に開かれた大きな空間で、湧いて立つ声が反響している。
地面は道が切り替わるところで途絶えていた。
2人は屈みながら覗き込む。2人の足下で
下にも道があるらしく、ブリーチャーたちが出入りをしている様が
「間違いないな。ここはあいつらの巣だ」
「ちょっと待て。見たことないヤツまでいるぞ!」
「ああ……。新種だろう」
御園は自分の腕を掴み、震える手を押さえようとする。
「マップ情報に接続できない」
江夏は声を潜めながら眉をひそめる。
「空間は記録している。ARヘルメットで録画した映像を技術班に分析してもらえれば、位置を特定することはできるだろう。さっさとお
「そうだな。ん?」
「どうした?」
江夏の視線を辿って視線を落とす。
何かウネウネと動くものを捉えた。ミミズが足下の地面を這っている。
いや、正確にはミミズらしきもの。
御園と江夏は恐怖に顔を染める。
その瞬間、ミミズらしき生物はいきなりデカくなった。
2人はとっさに拳を振り切った。
一閃が弾けた途端、ソルピードは後方の穴へ投げ出された。
暗がりに舞うソルピードが地面へ落下すると、地下の
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