karma17 猛将牛機雷角、敢闘に服する

 木戸崎と勝谷でどうにか攻撃を仕掛けているものの、素早い剣技を前に無効化される。木戸崎は金棒バットで攻撃を仕掛けるも弾かれ、生体の一部が吹き飛んでもすぐに再生し、戦闘復帰を果たしてしまう。

 木戸崎の背中から飛び出る銃口が時折火を吹いて苛烈する。完全体の体が蜂の巣となる。更に光の剣が体に刺さり、生物の体が弾ける。生物が体を引き、両腕を分断された拍子に、双端剣デュアルヘッドソードが千切られた腕ごと飛んでいく。


 勝谷は残った生物の体に電撃を突き刺し、木戸崎が金棒バットの武器で双端剣デュアルヘッドソードを掴む手を潰した。その時、燃える戦闘機が飛んできていた。生物が全身を使い、投げた後だった。勝谷はとっさの判断で木戸崎の下へ急いだ。

 木戸崎も戦闘機の機体が飛んできていることに気づいた。機体や瓦礫などが飛んできている状況に気づいた時点で、それらを弾き飛ばすのは物理的に不可能であった。


「ライト4!」


 木戸崎のARヘルメットが勝谷の声を受け取る。

 すると、木戸崎は振り返って左側から来る戦闘機の機体だけを金棒バットで弾き落とした。

 右側から来る瓦礫は勝谷の拳が電気を纏いながら粉砕し、宙でバラバラになる。

 間髪入れずに生物たちの手が爪の弾丸を放つ。2人はすぐさまその場から移動し、狙いを定めた生物たちを狩りに行く。


 腐敗の地に育まれた大木の生物たち。地球由来の生を吸い尽くす、悪しき源となっている。人々、大きなくくりで言うならば、生命にとってこれも悪しき元凶と成りうるが、今や悪しき生命体を滅する光となっていた。

 雷。木槌を打つかのように粛清の審判が下る。自然由来の雷と対となる人工由来である。

 生物に襲いかかる雷撃を分析し、規則性を見出すのは至難のわざだ。反射的にかわすくらいウォーリアの動きについていける完全体の生物ならできそうなものだが、神がかり的な蘇生能力を持つ生物には、無駄な労力になるのかもしれない。

 呆気なく破壊されていく生物たちは肉をもぎ取られ、ごみのように体の一部を捨てられる。落雷を受けた大木は火を纏い、火の粉が宙に舞う花びらのように落ちていく。


 4人の猛将の奮起により、戦況は拮抗するにまで至っている。再生不能の細胞が地で黒くなって、小雨の手向たむけを飲み込む。休む暇もない戦禍で、4人はこの地を掌握するべく全細胞を研ぎ澄ませ、生物たちの体に光の刃と砲撃で黄泉へ葬る。

 いずれ明けゆく夜を待ち望むかのように、光は花となりて咲き乱れる。それを阻止せまいと、潜む敵意が三日月の刃を両頭に備える武器を手にしようと迫っていた。


 勝谷は目ざとく潜む敵意を見つける。勝谷は近くの生物たちをほうって、突発的に駆け出す。完全体の生物にあの武器を持たせるのは危険過ぎると判断した。

 勝谷の動きは生物たちの目を引いた。完全体の生物よりも素早く動ける細胞片は、コウモリのように群れとなって飛行する。先回りした細胞片は、勝谷の両サイドから迫りゆく。


 勝谷は両手を左右に向けた。両手に携えた電磁銃剣が輝きを増し、黒い群集へ光の刃を投じる。左右に3つずつ、光の刃が放たれ、黒い塊を砕く。しかし、細胞片の群集の一部しか仕留められず、コウモリが集まったような塊はたわんで再び勝谷へ襲いかかろうとする。

 他にも、勝谷の行く手を阻む生物の欠片。地べたで瀕死の細胞片が、最期の気力を振り絞って飛びかかろうとしたり、爪の弾丸を飛ばして動きを止めようとする。


 勝谷も狙われることはわかっていた。だとしても、突っ切る覚悟だった。その意志を汲み取るように、散光が激しくまたたく。宙で爪を飛ばしていた生物の手は、更に細かく裂かれてしまう。

 勝谷は射撃者を一瞥いちべつする。移動しながらも銃撃を行う西松が勝谷の視線に気づき、視線が交わる。

 勝谷は生物たちに視線を引き戻し、捕捉してくる手や殴打しようとする足などを電磁銃剣で斬り刻むと、光の刃から漏れる稲光が弾き飛ばした。勝谷は細かな電気の筋を散らしながら直進していく。


 完全体の生物が双端剣デュアルヘッドソードを手にした瞬間、武器を振り回す。

 衝突。鈍い弦楽器の音が破裂した。断裂したような衝撃の光が散乱する。


 電磁銃剣は受け流されたが、勝谷は繰り返し剣を振るう。生物も双端剣デュアルヘッドソードを巧みに操り、勝谷の攻撃を防いでいく。

 勝谷も一辺倒に攻撃するだけでなく、背後へ回り込んでから攻撃したり、電撃を浴びせてみたり、機体スーツ内に隠した銃器で打ち込んだりと、目にも留まらぬ速さで攻防の応酬が展開される。


 難攻不落の生命体は衰えぬ気配を見せない。片や、攻め立てる勝谷の攻撃速度は少しずつ遅くなっていた。

 徐々に完全体の生物の動きが勝谷の攻撃速度を追い越していく。確かな手ごたえが武器を通して伝わる。一矢いっし、勝谷の腕を刺した。

 一太刀は勝谷の体をえぐる痛覚を与えた。勝谷の体軸は傾き、表情がゆがむ。機体スーツ内部が露出し、勝谷の脇や肩が空気にさらされた。


 振り切った三日月の刃は曲線を押しつけるように勝谷の正面に迫る。慟哭どうこくの雷鳴が轟き、勝谷の足下から急速に上昇した。青い電撃が勝谷に迫る刃を弾き上げる。


 雷を纏う金棒の打撃が完全体の生物の動きを止めた。生物の横腹がくの字に曲がり、飛ばされそうになるも、地面についた片足が地を踏みしめる。酷使する体をひねり、双端剣デュアルヘッドソードを振り切った。

 勝谷に伸びた刃はくうを切る。木戸崎は倒れそうになる勝谷を抱え、完全体の生物からブーストランで離れていく。


 仮想光物質歩兵部隊VLMCが掌握するエリアへ逃げ込んだ。木戸崎は勝谷を下ろし、仰向けに倒れた。勝谷はぐったりして動かない。木戸崎は起き上がろうとするが、背中に激痛が走り、歯を食いしばる。機体スーツの背中は小さな穴がいくつも空いていた。

 濡れた地を剥ぐように、一筋の斬戟ざんげきが走る。あらゆる障壁を切り砕き、標的へ急ぐ。木戸崎が振り返った時には、大きな斬戟ざんげきが目の前まで来ていた。

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