karma2 熱視線
無機物同士がかち合い鳴らす音。それが連続的不規則性を伴っていれば、会話に花を咲かせていた
そしてその正体が同じような
周りを彩るどんな青よりも強い。はっきりとした青に包まれた
西松清祐があの青の軍団の
すると、遠くから波打ち際を走る車が砂浜にタイヤ痕をつけていく。今時珍しいなかなかのエンジン音を響かせる車は、集団行動で歩く青い
大きな車が2台。見下ろす大きな岩の前で正面を突き合わせる。同じく車体の片側側面が、上から自動でゆっくり開いていく。開いていく側面内側が、車体内部の床と並行すると、車内側壁の左右両端から、細い鉄製の脚が下りて砂浜についた。
あけっぴろになった車体の中、2人掛けの座席が並ぶ間を通り抜け、壁から舞台に変わった場所へ躍り出る男。はちきれんばかりの肉体が青い花をモチーフにした軍服の上からでも主張しており、佇まいは格闘家の様相を呈している。おそらく20代から30代ではないだろうかと無意識に予想し、氷見野は驚きつつ男に注目を向ける。
童顔でありながら凛々しい真顔で立つ男は、ニタりと笑みを携えた。
「
飽津はウィスパーボイスを小さな拡声器で響かせ、自己紹介をする。
その頃、
細かい造形は異なるが、
白い肌と腫れぼったい目。
「こんな秘境にやってきて訓練か。どうせならバカンス期間くらい欲しいわ」
「愚痴ってもしょうがないでしょ。バカンスに行きたいなら、申請出せばいいじゃないですか」
隣にいる同じ青い
「彼女おらん奴がこんなビーチに来てもおもんないやろ。お前分かってて言うてないか?」
「男たちでわいわいやっても充分楽しいと思いますよ?」
「普通やんけ! 俺は女の子たちと楽しみたいんや!!」
「はいはい……」
優しい声色の男は軽くあしらいながら、シールドモニターに飛んだ唾を機械の手で拭う。
「隊員諸君! 先台の前に整列せよ!」
駆け足で並び出す隊員たち。機械の足に砂が巻き上げられていく。
2つの大きな車を境目にして、青と紫の
「高まるブリーチャーの危険性を解消すること! それが我々の第一の目的である。
隊員の列の中で指揮官の話を聞いていた琴海は、妙な違和感を覚える。周りに視線を投げてみると、琴海よりも後方で列に並ぶ
視線が交わった後も、なぜかじっと琴海を見続けている。ねっとりとした熱視線から逃げるように、視線を前に向けた。
早速訓練は開始される。クラゲを模した海底探査機『
一方、
指揮官の合図で銃を構え、2つ目の合図で発砲していく。
時折、海面から大きな飛沫が立ち昇る。何度か被弾した
本製品を作る前の模型として作られたのち、訓練に使用されるようになった。海の中の微生物により分解されるため、環境面に配慮した設計となっている。
海底探査機『
その間は同じ隊員の銃撃の所作を見て学ぶのがセオリーである。誰もが完璧ではない。いくらARヘルメットを装着する異端の人類とはいえ、放たれた弾道を制御することは困難を極めた。
ちょこざいに動き回る海月に、より少ない弾数でヒットさせる隊員は、大方銃の扱いに慣れている
太陽光を反射しているせいで、シールドモニターの奥は見えない。何度かあの青い
その隊員が銃口を海へ向ければ、指揮官の目の色もどこか違って見えた。氷見野は隊員の顔を一度拝んでみたいと思っていたが、さすがにジロジロと見るのは失礼にあたると身をわきまえている。しかし、立場が逆転をすれば、いとも簡単にこの構図は崩れるようだ。
同じくシールドモニターの奥は見えないが、見えなくともその目と自分の目が交わっていることが感じ取れている。
それを気のせいと言われてしまえばそれまでだが、一度視線の交差をはっきり確認しているだけに、そう思えても仕方ないだろう。実際、シールドモニターの中心が琴海に向いているのだから。
琴海はさすがに気味が悪いと思っていた。
知らない方が幸せという教訓を信じているわけではなかったが、いざ自分が変な人に、この真夏よりも熱い視線を向けられる嫌がらせを受けていると、迷信めいたものを信じてしまうのだ。
「なんなのよ、もう……」
琴海は気を紛らわせるべく、海風に小言を吐き捨てた。
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